人間と象が織りなす世界
文・写真=李暁山
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2007年12月、タイのバンコクで国王の誕生日を祝うために閲兵儀式に参加する白象(新華社) |
瀾滄江―メコン川流域は、人間と象の関係が世界で一番親密な場所である。この地では今日にいたるまでの長い間ずっと、人間は象と親しんできた。
この地の象は数千年前に原始林から出て人間の日常生活の中に入り込み、彼らの神様、友人、家族となった。
タイのスリン県に「象の村」がある。この村には、もっとも優秀な象使いを輩出するスワイ族が暮らしている。これまでの300年あまりにわたって、彼らはジャングルで象を捕獲し続け、国王の戦象にするために飼いならしてきた。このため、スワイ族は国王から特別に許され、納税の義務を免れている。
現在、飼いならされているタイの象は、ほとんどがスリン県産の象である。「象の村」では多くの人が象を昔ながらに家の庭で育てている。
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タイの伝統的な結婚式に出席する象隊(新華社) |
ロンミアオさんがジャングルに入るようになったのは16歳からである。生涯に数十頭の野生の象を捕獲、百頭以上を飼いならしたという。
象の背中に乗り、象狩り隊を率いて林の奥まで野生の象を追いかける生活は、ロンミアオさんにとってすでに遠い記憶、永遠に過ぎ去った時間となった。タイの国王が象捕獲禁止令を発令したため、象狩りができなくなってしまったからだ。
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衣装をまとい、角笛を吹くロンミアオさん |
しかし、象たちに対するロンミアオさんの確固たる威厳は、依然として変わらない。村のすべての象が、彼に会えば必ず礼をする。彼の姿を眼にすると、子象も直ちに地面に伏して従順と畏敬を示す。ロンミアオさんは象の神様なのである。
子象は3歳になると母象と別れ、独立して生活する。象の生涯でもっとも大切な瞬間である。そのため人々は、「分象(子象を母象から引き離す)」という千年にわたって伝えられてきた儀式を執り行う。
「ノーリン」(地元の言葉で「かわいい子」という意)と名付けられた象のための「分象」の儀式に立ち会えることになった。
地元の伝統では、「分象」の儀式は必ずロンミアオさんと彼の仲間たちが主催することになっている。みな野生の象を捕獲した経験のある最後の象使いたちで、いずれも70歳以上と高齢である。
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「象の村」ではすべての家庭が家族同様に象を育てる |
タイでは、象使いは特別なコロニーであり、いくつかの等級に分けられている。象使い大師は最高の等級で、金の輪と革の紐でつなげられた象牙のネックレスを身につける。現在タイでこの金色の印をつけることができるのは、タイで唯一の象使い大師であるロンミアオさんだけである。
象使いが神樹の下に豚の頭や丸鶏、ご飯、果物、花などの供物を並べ、線香を点し、象神を祀る。続いて、ノーリンの主人がノーリンとその母親を神樹の隣にある囲いの中に引っ張りこむ。ロンミアオさんは木の葉で包んだもち米のご飯や果物、花を手にして前に進み出て、ノーリンの頭をなでながら古い歌謡を謡う。歌の内容は、家を離れて独立しようとする子に父親が語る言葉と同じようなものだ。つまり、母に育ててもらった恩をいつまでも忘れることなく、その生涯が幸せかつ平安で、将来は人類の役に立つ象になってほしいという願いがこめられている。
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若者に象使いの技を指導するロンミアオさん |
これで「分象」の儀式は終わりである。ロンミアオさんと神樹から離れた母象は左へ、子象のノーリンは右へと去っていく。ノーリンにとって、これは母親との永遠の別れである。観光客にさまざまな演技を披露して自分の食い扶持を稼げるようになるまで、ノーリンは象使いの学校で各種のトレーニングを受けることになる。
高貴と吉祥のシンボル
大メコン川流域は、多様な地理的環境及び複雑な気候であるため、世界でももっとも生物の種の豊富な地域の一つである。
かつては70%以上の土地が森林に覆われており、果てしない広大なジャングルが野生動物の家となった。ここの生活に慣れたこの地域の動物は、あまり遠いところへは移動しない。上流のシーサンパンナの森林には、哺乳類が102種、鳥類が427種、両生類が38種、爬虫類が60種、魚類が百種ほど生息するという。
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タイの遊園地で観光客にマッサージをする象 |
今日、野生のアジアゾウは世界的に絶滅の危機に瀕している。百年前、大メコン川流域には約百万頭の野生のアジアゾウがいたが、統計によると、現在はわずか一万頭ほどしかいない。1997年、アジアゾウは国際自然保護連盟(IUCN)によって絶滅危惧種に指定された。
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象祭りでサッカーをする象の選手(新華社) |
白象は高貴と吉祥のシンボルである。過去には国王のみが所有できた財産であり、白象を見つけたら必ず国王に献上しなくてはならなかった。
しかし現実において、全身白い象はめったに見られない。全身が灰色の象は皮膚の病気によって白っぽくなったのである。額、鼻、耳あるいは尻尾だけが白くなった象も、白象とみなされている。