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咲き誇る花が彩る暮らしとこころ

 

きらびやかに咲くバラのような生活を

バンコクから東北に1000キロほど離れた昆明市郊外の呈貢県斗南村では、花卉農家の華明生さんが、太陽の光あふれる、さわやかな香りに満ちたバラ園を経営している。そこに足を踏み入れるたびに、彼は満足感をかみしめる。20ヘクタールあまりの土地に咲くこのバラたちが、穀物や野菜のように豊かで幸福な生活をもたらしてくれるからだ。20年前、この土地で栽培されていたのは大根と白菜であった。

常春の雲南では、花を栽培・観賞する伝統が民間に受け継がれている。それぞれの民族の日常生活や信仰、詩歌、音楽、芸術はいずれも花とかかわりがあり、花はそれぞれの土地を美しく飾るだけではなく、それぞれの文明にインスピレーションを与え続けてきた。

雲南省曲靖市羅平県には、「菜の花祭り」という有名な祭りがある。春になると、広々とした大地は、まるで金色の絨毯が敷かれたようになる。昆明市で毎年「端午節」(旧暦5月5日)に行われる「花街」は、もっとも大切な民間の祭日である。花がテーマの縁日であり、花がその美しさを競い合うように咲き乱れる大会である。酔ってしまいそうな濃厚な花の香りが、町中に広がる。家々のベランダや家の前にも、多種多様な花が並ぶ。てんびん棒を担いだ花売りの姿も、街の通りのいたるところで見られる。街のあちこちに色とりどりの花があふれ、人々の笑顔を引き立てる。食べものの屋台とおもちゃの屋台の間を、子どもたちが駆けぬけてゆく。「文化大革命」時代には、草花の栽培はブルジョアジーのライフスタイルとして批判の対象となったため、昆明の「花街」は次々と消え、20年前まで閉ざされたままだった。

斗南村では、古くから花卉栽培、販売をする伝統があった。1983年、村の数軒の農家が、野菜畑を利用してバラなどの栽培を試みた。1985年、華明生さんは小さなバラの栽培棚を造った。花が咲くとそれを引き抜き、泥のついたまま自転車に載せて昆明に売りに行った。次第に花が高値で売れるようになり、野菜栽培よりも儲かることに気づいた。

それから20年あまりを経た今日では、10平方キロにも満たない斗南村の土地の90%で花卉栽培が行われている。斗南村は「通りを市に」していた「花街」から、いまや中国最大の切り花取引市場となった。販売額は中国国内の60%を占め、中国花卉市場の価格を左右するまでになった。毎日、延べ1万人がやってきて取引をする。市場で出た400万から600万本の切り花は、航路や鉄道、道路を通じて国内70以上の中都市や大都市、および40の国や地域に売られてゆく。

雲南省各地の多くの農民が花の栽培に従事するようになった。現在、昆明および雲南全土がおびただしい数の花の咲く巨大な花園となっている。バラの収穫が多いとき、昆明では数を数えるのではなく、重さを計って販売することさえあったという。

満開のバラは、華明生さんの人生をも花開かせた。彼のバラ園は、数百ムー(1ムーは6.667アール)にまで広げ、世界最新鋭の花卉栽培技術も導入した。欧州のバラ園と比べてもまったく見劣りしない。「金財」という華さんの幼名を冠して商標登録した「金財園芸」というブランドのバラは、現地の人気ブランドとなった。かつては無造作に道路や塀に並べたり、あるいは鉢植えにしていた花で儲けることができるなんて、思いもよらぬことであった。しかし、今では華さんは数千万元の資産を有するバラ園の経営者である。

頭に花を飾ったミャンマーの女性
雲南省では華さんのバラ園のような規模の花卉農家はめずらしくはない。しかし斗南村では、ほとんどの花卉農家はそう広いとはいえない花棚を営んでいるにすぎないが、1ムーの土地で花を栽培するだけでも、比較的余裕のある暮らしができるという。

花卉農家の仕事は多忙である。バラの美しさは、贈り物のバラを見つめる恋人たちの目の前でこそ花開くべきであるとして、蕾が開くのを遅らせるために、今にもほころびそうな蕾に袋をかぶせるのも、華さんのバラ園のスタッフにとって日々の大切な作業のひとつである。

一日中せわしく働く華さん一家は、日がくれるとようやくゆっくりできる。たそがれどきの家の中にも、バラ園の芳しい香りが満ちあふれている。多くの資金をバラ園に投じてきたため、華さん一家は今でも十数年前に建てた古い家に住んでいるが、近々新しい家が完成するため、引越しの日も近づいている。「まずは発展、楽しみはその後で」というのが、多くの中国農民の伝統である。

 

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