公共の場所ではどこでも、注意を促す標示板を見かけるが、うまくデザインされた言葉や図案は、一目瞭然でわかるだけでなく、温かさも感じさせる。観光地では注意書きの看板が多いが、もっと心を込めてデザインしなければならない。各国から来る観光客に便利なように、国際的に通用している標示を使うのがもっともよい。
注意を促す用語は必ず礼儀を重んじ、見る人を尊重するものでなければならない。例えば「無用の者、入るべからず」というより、「立ち入りは関係者に限る」(Staff only)という方がよいし、「喫煙禁止」というより「タバコはお控え下さい」(No smoking)の方がよい、などである。「高圧ケーブル危険 感電死しても責任を負いかねる」というにいたっては、まったく論外である。
注意を促す用語は、中立的またはプラス志向の「説得方式」のものを選ぶべきで、「~を許さず」や「厳禁」「結果は自己責任」などの「訓戒方式」のものはできるだけ使わない方がよい。礼儀正しく、丁寧な言葉を多く使えば、効果もずっとあがる。
さらに、一部の標示板に描かれている絵は、あまりにも突飛すぎて、難解なことがよくある。例えば杭州で、芝生の上に置かれた標識の図案は、唇の上に赤い色で、丸と斜めの線(日本の駐車禁止の交通標識と同じ)が描かれていた。これは何を意味するのか、ずっと考えていたがわからない。
そこで働いている人に聞いてみると、これは「痰を吐くな」という意味だ、と教えてくれた。これをデザインした人は、ちょっとしたユーモアのつもりだったのだろうが……。
北京の一部のビルの壁にも、「火事は119番へ」とのメッキの標示板が掛けられているが、「9」の文字が影つきのデザイン文字なので、よく見なかったり、暗かったりすれば「111」と読み誤ってしまう。標示板は、明白に表現することがもっとも重要なのである。
また、標示板の中国語を英語に訳す場合も注意する必要がある。それぞれ標準的な訳し方があるのだ。「小心路滑」(スリップに注意)を「Don't slip」(倒れないで)と訳したり、「注意安全」の「安全」を「Safety」と訳さず、「Pay attention to safe」(セーフティーボックスに注意)と訳したりすることは、絶対に避けなければならない。
趙啓正
1963年、中国科学技術大学核物理学科卒業。高級工程師などを経て1984年から中国共産党上海市委常務委員、副市長などを歴任。
1998年から国務院新聞辦公室・党中央対外宣伝辦公室主任。
2005年より全国政協外事委主任、中国人民大学新聞学院院長。 |
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