エレベーターに乗るとき、またはバスに乗り降りするとき、人が多くて混みあっていれば、多くの国では「レディファースト」である。欧米では、これが伝統的な習慣である。しかし中国で伝統的な習慣といえば、「お年寄りと子供には順序があり、お年寄り優先」である。では、同時に女性とお年寄りがいるときには、いったいどうすればよいのだろうか?
「レディファースト」と「お年寄り優先」は中国と欧米のマナーの違いであり、それぞれ異なる文化背景があり、それぞれに道理がある。「レディファースト」には、あらゆる社交の場において、成年男性はみな女性を大切にするという義務を自覚すべきであるという意味がこめられている。女性を守るということは、必ずしも女性を弱者と見なしているわけではなく、女性に対する尊重である。中国の伝統文化に基づく「お年寄り優先」は、すなわち年長者に対する尊重と心遣いである。
もしも女性とお年寄りの両方がいるときには、比較的好ましい方法としては、まずお年寄りを優先し、同時に女性にも配慮することである。しかし、日本ではたとえお年寄りがいない場合でも、もはや亭主関白は流行ってはいないにもかかわらず、女性はいつでも遠慮がちで、往々にして自ら身を引くものである。
1960年代に、こんなことがあった。人柄も教養も立派であるが、人付き合いの苦手なエンジニアの同僚がいた。人に紹介してもらって、ようやくガールフレンドができた。初めての二人きりのデートで、郊外の公園に出かけることになった。そのころバスに乗るには、必死になって人を押しのけなければどうにも乗り込めなかった。現在でも、人々が順番に並んでバスを待つ習慣がない歴史的な原因は、そこにあるのであろう。彼はバスがやってきたのを見ると、全力で人を押しのけてバスに乗り込んだ。その瞬間、扉が閉まり、バスは走り出した。可哀想な彼は、こうしてそのガールフレンドをたちまち失ってしまったという。
趙啓正
1963年、中国科学技術大学核物理学科卒業。高級工程師などを経て1984年から中国共産党上海市委常務委員、副市長などを歴任。
1998年から国務院新聞辦公室・党中央対外宣伝辦公室主任。
2005年より全国政協外事委主任、中国人民大学新聞学院院長。 |
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