心を通わせる人とロボット
1950年生まれ。1975年、東京外国語大学卒業、日本貿易振興会(ジェトロ)に入る。香港大学研修、日中経済協会、ジェトロ・バンコクセンター駐在などを経て、1993年、ジェトロ大連事務所を設立、初代所長に就任。1998年、大連市旅順名誉市民を授与される。ジェトロ海外調査部中国・北アジアチームリーダー。2001年11月から、ジェトロ北京センター所長を務めた。 |
この間、日本館には141万6004人の入館者がありました。2ヵ月の総入場者数の16人に一人の割合で入館いただいたことになり、予想通りの入りでした。ありがたいことに、日本館は、人気館の一つとなっています。
日本館への感想
ウェブサイトのブログや掲示板から、日本館参観後の感想を聞いてみましょう。例えば、
○逛完后,觉得很和谐,很美好,日本注重添加中国化的东西,又不失自己的风格。很强调人与自然的和谐和环保,很高科技‼(参観を終えて感じたのは、日本館はうまく調和がとれていてよかった。日本は中国的なものを取り入れてきたが、自己のスタイルを失っていない。人と自然の調和、環境保護が強調されており、超ハイテクだ)
○虽然不喜欢日本人,但他们的科技还是很高。(日本人は好きじゃないけど、ハイテクはさすがにすごい)
○人的确是超级多,哎,不过值了‼(人はたしかに超多いが、見る価値はある)など。
また、アテンドさんには、「卡哇伊(注1)くて漫画チック、空呢吉娃(注2)などと、一生懸命挨拶してくれる」という好意的評価など、行ってみたくなるような日本館情報がより多く発信されています。その結果、「我暑假去世博一定去日本的馆,体验高科技(夏休みに万博に行って日本館のハイテクを見るぞ)」という期待が高まっているようです。
|
観客に手を振るロボット(写真・江原規由) |
手を振るロボット
ウェブサイトで見る限り、日本の先進技術に対する関心が高いことがわかります。日本館のテーマは、「心の和、技の和」で、人と技術の調和を重視しています。筆者は館内でこのテーマの意味を深く感じる場面に毎日接しています。
プレショーで、バイオリンを弾くロボットが出てきます。曲目は、中国でよく知られている『茉莉花(ジャスミン)』です。数分の演奏時間ですが、引き終わると、ロボットが手を大きく左右に振って、「さようなら」のジェスチャーをします。その時、会場にいる参観者の多くが手を振ってロボットに応えています。その瞬間を傍らで見ていると、演奏者であるロボットが高性能な機械であることを忘れて参観者が、カーテンコールをおくっている、そんな感じにさせられます。
ロボットは最先端技術の粋といってよいでしょう。ロボットにかかわらず、先端技術(特に、環境保護、省エネ関連機器・技術など)は、今後、さらに身近な存在となり、人々との関わりを増し、地球環境問題を克服し、人々の生活を豊かにする上で、大いに貢献してくれるでしょう。先端技術が普及していく過程で、人と技術が調和することの意義、重要性を、カーテンコールをみて、いつも感じます。
「はやぶさ」の置き土産
さて、今後、技術が大いに発揮される舞台として宇宙があると思います。日本館では、宇宙太陽光発電(注3)が紹介されています。まだ構想の段階ですが、これが実現すれば、地上の約10倍の効率があるとされる宇宙発電をほぼ24時間365日にわたって利用できることになります。
中国には、月面着陸や宇宙ステーション建設計画など壮大な宇宙計画がありますが、来年には、火星探査機「蛍火(ホタル)1号」の打ち上げが予定されています。
宇宙には、日本館のテーマでもある地球上の環境問題、省エネ問題を解くカギがあるなど、人類のよりよい未来のために大きな可能性が秘められています。「蛍火1号」には、人類の福音となるような大きなお土産を宇宙から持って帰ってほしいと思います。
宇宙からのお土産と言えば、日本の小惑星探査機「はやぶさ」(注4)が小惑星「イトカワ」で採取したであろうサンプルのカプセルのことが思い起こされます。サンプルがあれば、人類にとって大きな福音となるでしょう。
「はやぶさ」は数々のトラブルに見舞われ、何回も再起不能の状況になりながら、科学者の懸命な忍耐と救助策により、所期の目的を達成しています。「はやぶさ」が大気圏突入で燃え尽きる寸前、科学者が最後にひと目地球を見させたいと、必死の努力で「はやぶさ」を地球の方向に向けています。7年余り「はやぶさ」と付き合ってきた科学者には、超先進技術を搭載した「はやぶさ」に、わが子に一脈を通じる何かがあったのであろうと、ロボットに手を振る日本館参観者を見ながら感じました。突入の瞬間、ひん死の「はやぶさ」は半分の地球が写った映像を地球にプレゼントしています。
注1、注2 | 発音による当て漢字 |
注3 | 宇宙空間の衛星軌道上に設置した施設で太陽光発電を行い、その電力をレーザー光などに変換して地上の受信局に送り、地上で再び電力に変換するというもの。実現すれば、ほぼ24時間365日にわたって太陽光発電を利用できる。 |
注4 | 今年6月に8年余(60億キロ)宇宙に滞在し、地球の大気圏に突入後燃え尽きた。小惑星からのサンプルリターンは国際的にも例がない。 |
人民中国インターネット版 2010年9月16日