文・写真=井上俊彦
「今、中国映画が絶好調です。2008年には43億人民元だった年間興行収入は、10年には101億と急上昇、公開本数も増え内容も多彩になっています。そんな中国映画の最新作を実際に映画館に行って鑑賞し、作品だけでなく周辺事情なども含めてご紹介します」
3500席! 中国最大のシネコン
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耀莱成龍国際影城は北京市西部の住宅街にある巨大ショッピング・モール内に立地している |
この週末の注目は、なんといっても『辛亥革命』です。今年10月で辛亥革命百周年を迎える中国で、今大きな話題になっている作品です。ジャッキー・チェンが、主演だけでなく総監督として制作から深く関わっていることにも注目したいところです。
公開2日目となった土曜日、この作品を見るのに最もふさわしいだろうと考え、北京市の西部・五棵松にある耀莱成龍国際影城に出かけました。ジャッキーが耀莱集団と共同出資で昨年オープンさせたもので、目下中国最大のシネコンです。太平洋デパートの5階に入っていますが、その大きいこと、17ホールを持ち、最大のホールは600人収容、全ホール合計では3500席という超巨大シネコンです。ジャッキーにとっても出演100作目だというだけあって、この日は随所に『辛亥革命』のディスプレーが見られました。
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とにかく広いロビーだが、巨大シネコンなのでいつも観客で大にぎわい |
ここで、失敗談をひとつ。チケット売り場では『辛亥革命』専用窓口も設けられていたのですが、どうしたはずみか間違えてチケットを買ってしまい、しかも作品の上映が始まってから気がつく始末。こんなミスは初めてであわててしまいましたが、窓口に戻って事情を説明すると、係員はいやな顔ひとつせずにてきぱきとチケットを交換してくれました。おかげで上映にもぎりぎり間に合い、図らずも同シネコンの優れたスタッフ教育を確認することになったのでした……。
豪華俳優陣だけの映画ではない
聞くところによると、同作品は今年の東京国際映画祭で上映されることになったそうです。それでは、ここでストーリーについて詳しく説明するのはあまり適切ではないかなと感じますので、配役を中心に作品を紹介したいと思います。
物語では、孫文はもちろんジャッキーが演じる黄興に大きなポイントを置いており、物語に立体感と深みを出しています。そのジャッキーですが、いつものアクションをほとんど封印した中で、情熱と苦悩を抱える革命家の深い人間像を見事に演じきっています。その妻役のリー・ビンビン(李冰冰)の演技にも素晴らしいものがあります。こうした歴史作品では、伏線や説明的なカットの積み重ねがないまま感動の場面に進むことが多いのですが、そんな中でも見ている人をしっかり感動させる演技を見せてくれます。これはたやすいことではないと思います。
そして、ほかのキャストも豪華ですが、単にスターを並べただけの作品とは違い、それぞれの役をきちんとこなしています。孫文には、アン・リー(李安)監督の『ウェディング・バンケット』などで知られるウィンストン・チャオ、実はこの10年ほど中国大陸部で何度も孫文を演じ高い評価を得ています。この作品でも半分は英語の台詞という難しい条件の中で、堂々と孫文の人となりを表現しています。また、林覚民にはアイドルドラマで活躍のフー・ゴー(胡歌)、隆裕太皇には『ラストエンペラー』のジョアン・チェン(陳沖)、秋瑾には『太陽の少年』のニン・チン(寧静)ら日本でもおなじみの名優がそろっていますが、日本ではあまり知られていない俳優にも注目していただきたいと思います。
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あちこちに『辛亥革命』のディスプレーが見られた |
まず、作品の中で抜群の存在感を見せる袁世凱はスン・チュン(孫淳)が演じています。彼は、中国では映画やドラマで幅広く活躍する有名俳優です。また、唐曼柔を演じたワン・ツーウェン(王子文)も印象的ですが、彼女は今注目の若手女優で、この機会におぼえておいて損はないと思います。
ところで、日本を舞台にした場面はありませんが、日本とのかかわりを垣間見ることもできます。台詞の中で宮崎滔天の名前が出たり、陳天華の『警世鐘』の表紙がチラッと見えるなどします。このあたりのことが予備知識として分かっていると物語をより深く読み解くことができるのではないでしょうか。
というわけで、東京国際映画祭でご覧になる予定の方は、是非『人民中国』10月号の特集「辛亥革命百周年」を先にお読みになることをお勧めいたします(思い切り宣伝しました*^__^*)。
辛亥革命 |
総監督・主演:ジャッキー・チェン(成龍) 監督:張黎 |
キャスト: ウィンストン・チャオ(趙文瑄)、リー・ビンビン(李冰冰)、フー・ゴー(胡歌)、孫淳(スン・チュン) |
時間・ジャンル 120分/歴史 |
公開日 2011年9月23日 |
耀莱成龍国際影城 |
所在地:北京市海淀区復興路69号華煕楽茂5階 |
電話:010-68188877 |
アクセス:地下鉄1号線五棵松駅B出口から北へ徒歩15分 |
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プロフィール |
1956年生まれ。法政大学社会学部卒業。テレビ情報誌勤務を経てフリーライターに。1990年代前半から中国語圏の映画やサブカルチャーへの関心を強め、2009年より中国在住。現在は人民中国雑誌社の日本人専門家。 |
人民中国インターネット版 2011年9月26日
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