(五)科学・教育による祖国振興戦略、人材育成による国力増強戦略を本格的に実施すること
科学技術、教育事業を大いに発展させ、資質の高い人材集団を育成することは、国の隆盛と民族の復興を実現する上で避けては通れない道である。
教育の発展を優先させることを堅持する。中央財政は全国財政における教育経費支出の比率がGDPの四%という規定に基づいて予算を編成しているが、地方財政はこの目標値の達成に向けて、それに応じた資金額を計上しなければならない。教育経費は重点分野への配分を最優先すると同時に、ウィークポイントの強化にも気を配り、さらにその運用の効率と効果を高めるべきである。教育体制の改革をよりいっそう推進して、教師陣の整備を強化し、資質教育の実施に力を入れ、学生募集・入試や教育、教学などの面で浮き彫りになっている問題を逐次解決する。学校の民主的管理を推し進め、さらにそれを次第に制度化する。義務教育のバランスの取れた発展を促し、資源の配分を中・西部地区、農村、辺境地区、民族地区と都市における基盤が脆弱な学校にシフトする。引き続き大きな力を入れて、児童の越境入学や入園など人民大衆の注目を大きく集めている難問を和らげる。農村の小中学校の地域的配置においては、地元の状況に即して教育の質的向上と生徒の自宅から近い学校への通学の利便性との関係をうまく処理すべきである。農村の寄宿制学校の運営に取り組み、義務教育段階にある農村の生徒向け栄養改善計画をしっかり実施する。スクールバスの安全管理と学校の安全管理を強化して、児童・生徒の通学の安全を守る。就学前教育や継続教育、特殊教育を強化し、現代的職業教育システムを整備する。民族教育の発展にいっそう取り組む。高等教育は経済社会の発展および国家の戦略の必要と密接に結びつけ、教育の質とイノベーションの能力を向上させるべきである。国の学資援助制度を充実させ、中等職業教育の無償化政策を逐次すべての農村の学生に適用させていくとともに、普通高校における困窮家庭の生徒に対する学資援助の対象枠を拡大する。民間教育を大きく発展させ、民間資本が各段階、各種類の教育の分野へ流れるよう奨励、誘導する。教育は人民大衆の希望を負託するものであり、国の将来にも関わるからこそ、われわれはこの事業をよりよく進めていかなければならない。
力を入れて科学技術イノベーションを推し進める。国のイノベーションシステムの整備を強化する。科学技術体制の改革を深め、企業が技術革新の主体となるように促し、科学技術と経済の密接な結びつきを促進する。企業が研究・開発センターの整備強化に取り組み、国と地域の重要な科学技術プロジェクトを担当するのをバックアップする。また、研究機関や大学の研究者が企業の技術革新に協力するよう導いて、産・学・研究所の有機的な連携をよりよく実現し、科学技術成果の生産力への転化と産業化の水準を引き上げる。基礎研究と先端技術の研究を推し進め、オリジナルな創造力を高める。科学技術研究の評価・奨励制度を充実させる。そして、学術研究において信義誠実の原則を提唱し、独自の思考を奨励するとともに、学問の自由を保障し、科学的精神を高揚させる。国の知的財産権戦略を揺るぐことなく実施する。
人材育成の取り組みを全面的に強化する。人材育成体制の改革を深化させて、ハイレベルの革新・創業型人材、若手人材と緊急に必要とされる人材を多く育成し、ハイレベルの人材を導入する。また、人材の育成、登用、評価、インセンティブのメカニズムを充実させる。人材が輩出する適材適所の好ましい社会環境を作り出すよう努める。
(六)民生を確実に保障し、改善すること
最も広範な人民の根本的利益をよりよく実現し、守り、発展させることは人間本位という理念の具体的な現れである。それゆえ、民生の保障・改善を政府活動の重要課題に位置づけなければならない。
あらゆる方策を講じて雇用を創出する。雇用は国の発展と人民の福祉に関わる大きな事柄である。今年度も依然として雇用の圧力がかなり大きいが、これを前にして、各級政府はあくまで雇用優先の戦略を堅持し、よりいっそう積極的な雇用政策を実施し続けなければならない。就業者を大量に吸収するサービス業や革新型ハイテク企業、小企業・零細企業を重点としてサポートし、より多くの雇用機会を創出する。起業による雇用の拡大を奨励する。大卒者や農民工、都市部の就職困難者向けの就業支援にいっそう力を入れ、除隊・退役軍人を対象としたスキルアップ訓練と配置転換の取り組みを強化する。大卒者が農村や末端部、中・西部地区の建設に積極的に赴くよう奨励する。職業訓練プログラムと公共の就業サービスを強化する。統一的で、規範化した、柔軟性のある人的資源市場を早期に構築し、健全化させる。調和の取れた労使関係を積極的に確立する上で、労働者派遣事業に対し規範に基づいた管理を強化し、労使紛争の全面的な調査を行い、労働監察や紛争の調停・仲裁を強化し、労働者の合法的な権益を守る。
社会保障システムの整備を速める。今年の年末までに新しいタイプの農村社会養老保険制度と都市部住民養老保険制度を全国に行き渡らせる。諸般の社会保険のカバーエリアを拡大させる。企業定年退職者の基本養老年金を引き上げる。都市・農村の最低生活保障と社会的な救済措置を講ずる取り組みを強化し、社会福祉事業と慈善事業の発展を速める。諸般の社会保障制度の結びつきを強化する。さまざまなルートを通じて社会保障基金を増やすとともに、社会保険基金、社会保障基金の投資運用に対する監督・管理を強化し、その価値の保全と増殖を実現する。社会保障サービスの機能を整え、強化し、条件の備わった地方ではさまざまな社会保障取扱機構の合併・統合を行ってもよいし、一部のサービス業務を銀行や商業保険機構に委託してもよい。全国共通の社会保障カードの発行を速める。
医薬・医療衛生事業の改革と発展にさらなる力を入れる。全国民医療保険システムを早急に健全化し、基本医療保険のカバー率を定着させた上、それをいっそう引き上げ、基本医療保障の水準と管理・サービスのレベルを高める。都市部住民医療保険と新しいタイプの農村合作医療への財政補助金の基準額を年間一人当たり二四〇元に引き上げる。尿毒症など八種類の重病を対象とした保障を全面的に導入し、肺ガンなど十二種類の重い疾患を保障と救済の試行範囲に組み入れる。基本医薬品制度を定着させ、完全なものにし、末端部における医療衛生サービス体系の整備に取り組む。公立病院の改革を推し進め、診療部門と薬剤部門の分離、管掌権と経営権の分離を通して、高額な薬代によって病院運営を維持するような現行の体制を打破する。民間資本による医療機関の経営を奨励し、誘導し、対外的にも開放され多元化した医療機関運営の枠組みを早期に構築する。医療関係者の意欲を十分引き出すとともに、医師と患者の間で良好な信頼関係が結ばれるように努める。公衆衛生サービスを強化し、大衆の健康を甚しく脅かすひどい伝染病や慢性疾患、職業病を予防・抑制する。薬品の安全対策を強化する。中国伝統医薬事業と民族医薬事業の発展をサポートし、促進する。
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