二 二〇一二年度経済・社会発展の全般的要請と主要目標
二〇一二年度の経済・社会発展の諸般の活動は、以下の要請に基づいて進めていくこととする。すなわち、党の第十七回大会および十七期三、四、五、六中総の精神を全面的に貫徹し、鄧小平理論と「三つの代表」重要思想を指針とし、科学的発展観を深く貫き、引き続き積極的な財政政策と穏健な金融政策を実施し、マクロ経済政策の連続性と安定性を保ち、コントロールの的確性・柔軟性・先見性を高め、経済の安定した比較的速い発展の維持と経済構造の調整とインフレ期待の管理という三者の関係を適切に処理し、経済発展パターンの転換と経済構造調整を加速し、さらに、内需の拡大、自主イノベーションと省エネ・排出削減の強化、改革開放の深化、民生の保障・改善などにしっかり取り組み、経済の安定した比較的速い発展と物価総水準の基本的安定を保ち、社会の調和と安定を維持していくことで、経済・社会の発展で優れた業績をあげて成功裏に党の第十八回大会の開催を迎える。
上述の全般的要請に従って、必要性と可能性の両方に配慮し、また第十二次五ヵ年計画要綱との整合性を踏まえて、次のように二〇一二年度の経済・社会発展の主な所期目標を設定する。
――経済の安定した比較的速い成長を保つ。GDPの成長率を七・五%とし、前年度より〇・五ポイント下方修正する。これは主として次のようなことを考慮して定めたものである。第一に、国内外の経済の動きと成長率のトレンドを反映させる。現在、国際金融危機による深層部への影響がますます顕在化しつつあり、国内では成長の安定、物価のコントロール、経済発展パターンの転換などの任務がかなり重くなっている。こうした状況を踏まえ、所期の成長率を適度に下方修正することで、経済の動きをより正確に反映させることができる。一方、七・五%はやはり比較的速い成長率と考えられる。わが国GDPの総量がかなり大きく、外部環境が厳しくなるなか、この目標を達成するにはなお懸命の努力を続けることが求められる。第二に、第十二次五ヵ年計画の目標との整合性を目指し、各地方が活動の重点を経済構造の調整、発展パターンの転換、経済成長の質とパフォーマンスの向上にシフトするよう促していく。第三に、資源・環境の受容力に十分に配慮し、成長率の見通しを適度に下方修正することは、一層鮮明になってきた資源・環境による制約の圧力の軽減を図ることはもとより、経済運営における一部の際立った矛盾の緩和にも資する。
――経済構造の最適化・高度化を図る。①科学技術への投入をさらに増やし、GDPに占める研究開発経費支出の割合をいちだんと引き上げる。②農業の発展を安定させ、農産物の供給能力を高める。③戦略的新興産業を大いに発展させ、情報化と工業化の高度な融合を促進するとともに、在来産業の建て直し・高度化が新たな進展をとげるよう努める。④サービス業の発展を速め、サービス業の付加価値の対GDP比を引き上げる。⑤省エネ・排出削減に大いに取り組み、GDP当たりのエネルギー消費量を約三・五%削減し、二酸化炭素排出量原単位のよりいっそうの縮小を図り、化学的酸素要求量(COD)と二酸化硫黄排出量をいずれも二%削減し、アンモニア性窒素排出量を一・五%減らし、窒素酸化物(NOx)排出量の伸びをゼロとする。これらは主として次のようなことを考慮して設定したものである。国内外の経済情勢の動向や変化は、わが国の経済発展に多くの困難と試練をもたらしているが、裏をかえせば、経済構造の調整を促す「逆駆動の仕組み」ともなった。テーマ(科学的発展)と主軸(経済発展パターン転換の加速)の要請に照らして、科学技術イノベーションと体制刷新によって産業の高度化を推し進め、より高いレベルで、第一次、第二次、第三次産業をともに発展させ、省エネ・排出削減に対するインセンティブ・制約メカニズムを充実させ、経済構造の調整をさらに一歩進め、発展の均衡性・調和性・持続可能性を強める。
――物価総水準の基本的安定を保つ。消費者物価の上昇率を四%前後に抑え、二〇一一年度の実質上昇率を下回るようにする。これは主として次のようなことを考慮して定めたものである。一方では、①当面のわが国の総供給と総需要はほぼバランスを保っており、ほとんどの製品は供給が充足している。とくに食糧は八年連続の増産となり、物価総水準の基本的安定を保つ上での物的基盤を築き上げた。②価格急騰を誘発する短期的要素はいくらか弱まり、二〇一二年度の価格にもたらされる残存効果は約一・一ポイントで、前年度より低下する。他方では、①要素価格の上昇傾向が長期にわたって続くと見られ、コスト要因による物価押し上げ圧力が依然として存在している。②国際市場における流動性が過剰気味なので、輸入型のインフレ要因を軽視してはならない。③価格面の矛盾の解消と価格改革の推進にも一定の余地を残しておくべきである。
――人民の生活レベルをさらに向上させる。都市部新規就業者数を九〇〇万人以上とし、都市部登録失業率を四・六%以下に抑え、人口の自然増加率を六・五‰以下に抑え、経済成長と同じペースで、都市・農村住民の実質収入の増加を図り、新しいタイプの農村社会養老保険・都市部住民社会養老保険制度を全国でくまなく実行し、都市部の保障タイプ住居プロジェクト住宅の完工件数を基本的に五〇〇万戸、新規着工件数を七〇〇万戸以上とする。これは主として次のようなことを考慮して定めたものである。二〇一二年度は、経済成長が鈍化するおそれがあるため、雇用者数の拡大や、住民の所得増、保障システムの充実化を図る面において、多くの困難と試練への対応を迫られている。こうした状況の下、経済発展と民生改善の両立を図りながら、民生の保障・改善をいっそう際立った位置に据え、投入を増やし、制度設計を適切に行い、人民大衆の切実な利益にかかわる現実的問題の解決に大いに取り組んで、民生分野における諸般の所期目標をスムーズに達成すべきである。
――引き続き国際収支状況を改善する。対外貿易の輸出入総額の伸び率の所期目標を一〇%前後とし、貿易黒字をいっそう縮小させ、サービス貿易の発展を加速する。引き続き外資利用の構造を最適化し、対外投資を着実に拡大する。考慮すべき要点は以下のようなことである。二〇一二年度は、世界経済全般に明らかな回復が見込まれず、貿易・投資における保護主義がさらに強まり、外需不振が続くことから、わが国の輸出を取り巻く状況は厳しさを増していくと考えられる。とはいえ、わが国は労働力の質が絶えず向上し、技術革新のテンポも速まり、国際市場を開拓する能力がよりいっそう高まっており、全方位、多段階、多分野にわたって経済のグローバル化に参加する総合的優位性を有している。それ故、これまで以上に積極的な開放戦略を実施し、対外貿易の発展パターンの転換を速め、国際市場の変動に潜在している新たなチャンスを機敏にとらえ、伝統的な市場の足固めに力を入れ、新興市場をより一層開拓していくならば、長年の努力によって手に入れた国際市場でのシェアを安定させ、拡大することができ、対外貿易の安定した発展を維持することができる。
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