二 二〇一二年度中央・地方予算案
(一)当面のわが国の経済・財政情勢
二〇一二年のわが国の経済発展を取り巻く情勢はいっそう複雑で、財政収支の問題がかなり目につく。歳入では、経済の安定した成長の維持により、財政収入の増加を支える基盤が強固になると考えられる。しかし、国内外の経済情勢にかなりの不確実性が存在し、企業収益の伸び率のスローダウンが見込まれるうえ、構造的減税のさらなる推進や、個人所得税の基礎控除額引き上げと税率構造調整のキャリーオーバー効果、また、営業税から付加価値税への試験的切り替えの展開、石油特別収益金の課税最低限引き上げ、薄利小企業に対する企業所得税優遇策の継続と適用範囲の拡大、付加価値税と営業税の課税最低限引き上げなどにより、収入が減少し、財政収入の伸びに影響が出ることが予想される。歳出では、国家財政による教育経費投入の増加、新しいタイプの農村社会養老保険・都市部住民社会養老保険制度の全面的普及の実現、企業定年退職者の基本養老年金基準および新しいタイプの農村合作医療・都市部住民基本医療保険に対する財政補助基準の引き上げ、保障タイプ住居プロジェクトに対する資金投下の強化など、すべての取り組みへの財政投入をかなり増やす必要があるため、財政支出の圧力が比較的大きい。
(二)財政予算編成と財政活動の全般的要請
中央の取り決めた政策や活動計画に基づき、二〇一二年度の財政予算編成と財政活動は下記の通り展開していく。すなわち、党の第十七回大会と、十七期三中総、四中総、五中総、六中総、中央経済工作会議の趣旨を全面的に貫き、鄧小平理論と「三つの代表」重要思想を指針とし、科学的発展観をあくまで徹底し、科学的発展というテーマと経済発展パターン転換の加速という主軸をしっかり踏まえ、安定を保ちながら発展を求めるという活動全体の基調をしっかりと把握し、積極的な財政政策を実施し、財政・租税制度の改革を深化させ、構造的減税政策を充実させ、国民所得の分配構造の調整を推し進め、財政支出構造のさらなる適正化を図り、「三農」や教育、医療衛生、社会保障・雇用、文化、保障タイプ住居プロジェクト、省エネ・環境保護、未発達地区への支援を強化し、一般的支出を厳しく抑え、民生の保障と改善に着実に取り組み、「法律に基づく財務管理」と「統一的計画と各方面への配慮」、そして「収入増加・支出節減」という方針を堅持し、財政の科学的管理を強化し、財政資金運用の効果を高め、経済構造の調整と地域の調和の取れた発展を推し進め、経済の安定した比較的速い発展と物価総水準の基本的安定を促し、社会の調和と安定を維持していく。経済・社会発展のすぐれた成果をあげて、勝利のうちに党の第十八回全国代表大会の開催を迎えようではないか。
積極的な財政政策の実施にあたっては、以下のいくつかの方面を中心に取り組みを進めていく。
1 構造的減税政策を充実させ、企業と個人の負担を軽減する。新たな個人所得税法を施行する。付加価値税と営業税の課税最低限の引き上げなど、小企業・零細企業の税・費用負担軽減につながる政策をしっかりと実施する。薄利小企業に対して企業所得税半減優遇政策を実施する。営業税から付加価値税への試験的切り替えをスムーズにスタートさせるとともに、その試行範囲を着実に拡大して、現代サービス業を中心にサービス業の発展を促進する。一部の輸入品に対する関税を引き下げて、エネルギー資源関連製品や、先進的設備、重要度の高い部品の輸入を増やす。物流企業を対象とした営業税差額(売上から仕入額を差し引いた額)課税の試行範囲を拡大し、大口商品貯蔵施設の都市土地使用税に関する政策を充実させ、野菜の卸売・小売に対する付加価値税を免除して、物流企業と農産物生産流通過程の税負担を軽減する。その他の租税減免政策を法律に基づいて確実に実施する。企業向け行政管理サービス関連の費用・料金徴収を部分的に整理・廃止する。
2 都市・農村住民の所得を増やして、消費能力の向上に努める。さらに積極的な雇用政策を実施して、最低賃金制度の実施に取り組む。財政補助の規模を拡大し、中低所得層を中心に都市・農村住民の収入を引き上げ、大衆の教育・医療・住宅などに関する負担を軽減して、都市・農村住民の消費能力を向上させる。商品流通体系の整備をサポートして、都市・農村住民のために望ましい消費環境を築く。
3 支出構造をさらに適正化して、民生の保障と改善に力を入れる。引き続き多めの財政支出を行い、民生への投入を増やして、末端や農村、辺境地域、生活困窮層を重点的に支援するとともに、教育、医療衛生、社会保障・雇用、保障タイプ住居プロジェクト、公共文化といった社会公益事業の発展を加速させる。投資構造を改善し、経済・社会発展の弱い部分を強化する。新規プロジェクトを厳格に統制して、重複建設を防ぐ。行政経費などの一般的支出を厳しく制限して、行政コストを着実に削減する。
4 経済構造の調整と地域の調和のとれた発展を促し、経済発展パターンの転換を加速する。構造調整における財政・租税政策の重要な役割を十分に発揮させ、財政投入を増やし続け、経済発展パターンの転換に資する財政・租税の体制や仕組みを整える。科学技術への投入を増やし、科学技術への支出の構造を最適化して、自主的イノベーションと産業のコアコンピタンスの向上を大いにサポートする。省エネ・排出削減を積極的に推し進め、新エネルギーや再生可能エネルギー、クリーンエネルギーの開発を速める。汚染物質排出権の有償使用・取引に関する政策体系づくりに取り組み、それを健全化する。草原生態系保護の補助・奨励政策の実施を国の指定した畜産専業県と畜産兼業県にくまなく行き渡らせる。中小企業に対する資金面の支援に力を入れ、租税・費用減免政策を実施して、中小企業の安定した経営と持続的な成長をバックアップする。戦略的新興産業・ハイテク産業の発展を大いにサポートする一方で、在来産業の合理化・高度化を図り、さらに、現代サービス業のいっそうの発展を促す。重要文化産業プロジェクトによる牽引戦略を実施する。地域の調和のとれた発展を促す諸般の財政・租税政策を実行することで、困窮地域の政策実施能力を高めて、民生関連諸政策を確実に実行させる。重点グリーン小都市の試験的取り組みを広げ、都市化を積極的かつ穏当に推し進めていく。
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