二〇一二年度の全国財政は「統一的計画と各方面への配慮」を踏まえ、財力を集中的に傾けて、以下に述べる民生の保障と改善に関わる大事業に取り組んでいく。①教育への投入を強化して、国家財政による教育経費支出をGDPの四%にするという目標を確実に達成する。②社会保障体系の整備を加速して、新しいタイプの農村社会養老保険・都市部住民社会養老保険制度が全国でくまなく実施されるようにする。③医薬・医療衛生体制の改革を深化させ、新しいタイプの農村合作医療・都市部住民基本医療保険の財政補助基準を引き上げ、公立病院の試験的改革を速めることで、医療難と医療費高騰の問題を緩和する。④保障タイプ住居プロジェクトを確実に推し進め、未完工事のものを完工させるとともに、新規着工件数を七○○万戸以上とすることで、都市部の低所得層や新規就職者、農民工の住宅難を緩和する。⑤文化の発展と繁栄を大いに促し、文化建設への公共財政支出の伸び率が財政の経常収入の伸び率を上回るようにして、人民大衆の精神的・文化的ニーズをよりよく満たす。⑥「強農・恵農・富農」(農業を強化し、農民に実益をもたらし、農民を豊かにする)政策をさらに充実させ、農地水利をはじめとする農村の生産・生活インフラの整備を大いに支援するとともに、農業科学技術のイノベーションに力を入れて、農業の生産増加と農民の収入増、そして農村の繁栄を促す。
(三)公共財政予算の収支計画について
中央経済工作会議で決定した二〇一二年度の経済・社会発展の所期目標と、経済・社会政策、予算編成の全般的要請に従って、二〇一二年度公共財政予算の主要指標を以下のように設定することとする。中央財政収入は五兆五九二〇億元で、二〇一一年度の執行額と比べて(以下同)九%増とする。中央予算安定化基金から二七〇〇億元を繰り入れるため、運用可能な歳入総額は計五兆八六二〇億元となる。中央の歳出総額は一三・七%増の六兆四一二〇億元とする。その内訳は、中央レベルの支出が一二・一%増の一兆八五一九億元、中央から地方への租税還付と移転支出が一三%増の四兆五一〇一億元、中央財政予備費が二〇一一年度予算と同じ五〇〇億元。歳入総額から歳出総額を差し引くと、中央財政の赤字額は五五〇〇億元となり、二〇一一年度の執行額より一〇〇〇億元減少する。また、中央財政の国債残高限度額は八兆二七〇八億三五〇〇万元とする。
地方の当初予算案に基づき、中央財政が編成を代行する地方レベルの収入を一〇%増の五兆七六八〇億元とする。これに中央からの租税還付と移転支出四兆五一〇一億元を加えるため、地方の歳入総額は一〇兆二七八一億元となる。中央が発行を代行する地方債は二五〇〇億元とする。地方の歳出は一三・九%増の一〇兆五二八一億元とする。地方債の発行額を前年度より五〇〇億元増やすのは主として、保障タイプ住居プロジェクトへのさらなる投資の必要性や、地方政府の資金調達受け皿会社の債務管理の規範化完了以降における、建設中の公益的プロジェクトへの継続資金の部分的投入の必要性などを考慮してのことである。地方の財政収支予算については、地方の各級人民政府が編成し、同級の人民代表大会に報告して、その承認を得るものとする。
中央と地方の財政予算案を総合すると、全国の財政収入は九・五%増の一一兆三六〇〇億元となる。これに中央予算安定化基金から二七〇〇億元を繰り入れるため、配分可能な歳入総額は一一兆六三〇〇億元となる。全国の歳出は一四・一%増の一二兆四三〇〇億元となる。収支差額は八〇〇〇億元(そのうち、中央財政赤字は五五〇〇億元)で、前年度より五〇〇億元減少し、GDPに占める割合が一・五%前後に低下する。
1 中央予算収支の主な内訳
⑴ 収入の主な内訳
国民経済・社会発展計画の関連所期目標に基づき、財政・租税政策の調整による収入増減要素を考慮して、各項目の収入について詳しく分析・試算した結果、二〇一二年度中央財政の主要収入項目の指標を下記のように設定することとした。国内付加価値税収入は二兆二五〇億元で、一〇・八%増とする。国内消費税収入は七七〇〇億元で、一一%増とする。関税収入と輸入品の付加価値税・消費税収入は一兆七五二八億元で、八・七%増とする。企業所得税収入は一兆一一二〇億元で、一一%増とする。個人所得税収入は三四〇〇億元で、六・四%減とする。輸出品の付加価値税・消費税還付は九九五〇億元で、八・一%増とする。税外収入は二八二六億元で、五・六%増とする。
⑵ 支出の主な内訳
財政支出の構造をさらに合理化して、中央財政の主要支出項目別の内訳を以下のように設定する。
教育支出は三七八一億三二〇〇万元で、一六・四%増とする。内訳は、中央レベルの支出一〇二八億八七〇〇万元、地方への移転支出二七五二億四五〇〇万元。就学前教育の発展を促す一連の政策措置を実施して、中・西部地区と東部困窮地域を重点的に支援するため、補助金として四八・一%増の一五〇億元を充てる。農村の義務教育経費保障体制を充実させ、義務教育が手薄な農村部学校の改善計画を推し進め、農村義務教育の教師職務特設計画と国家レベルの小中学校教師育成計画を実施して、義務教育のバランスのとれた発展を促すため、一〇五七億五四〇〇万元を割り当てる。生活困窮者が集中している特別困難な地域の義務教育段階の農村児童・生徒を対象に栄養改善計画を実施するため、奨励金・補助金として一六〇億元を振り当てる。都市部の義務教育段階の児童・生徒の学費・雑費を免除して、都市に移り住む農民工子女が平等に義務教育を受けられるようバックアップするため、八二億元を充てる。職業教育の基礎能力の整備強化を続け、中等職業教育の無料化制度を段階的に実施していくため、九一・七%増の二五六億八〇〇〇万元を振り当てる。経済的に困窮した家庭の児童・生徒・学生に対する国の援助政策体系を充実させるために、補助金として二〇六億九七〇〇万元を充てる。「九八五プロジェクト」や「二一一プロジェクト」などを推進し、地方の高等教育機関の発展を大いにサポートするため、二四%増の一三五二億五〇〇〇万元を割り当てる。
科学技術支出は二二八五億四六〇〇万元で、一二・四%増とする。内訳は、中央レベルの支出二二三四億四○〇〇万元、地方への移転支出五一億六〇〇万元。科学技術支出の構造をいっそう適正化し、重点分野への支援を最優先する。国家科学技術重要特別プロジェクトを確実に実施するために、四五六億元を充てる。国家自然科学基金への投入を増やして、国家重点実験室と基礎科学研究機関のレベルアップなどを促すため、三二四億五九〇〇万元を振り当てる。先端技術の研究や、社会公益研究、重要度の極めて高い汎用技術の研究開発などを大いに支援するため、一九・七%増の一一九三億九〇〇〇万元を割り当てる。産業のコア技術の研究開発と産業化や、企業のイノベーション能力の開発を強化するために、四一億二○○○万元を充てる。「国家科学技術成果転化誘導基金」をスタートさせて、科学技術の成果の実用化をバックアップする。地方の科学技術事業の発展を導いて、各地の特色ある地域創造革新体系づくりを推し進める。知的財産権の保護を強化するとともに、自主的知的財産権を増やしていく。
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