王漢平・王浩=文
貴州省には中国最大の瀑布、中国最長の鍾乳洞、中 国最大の「水上森林」、中国最大の「水上石林」、世界最長の「天生橋」など多くの美しい景観が集中している。
なぜなのだろう。それは、貴州が世界最大のカルスト地形の中心に位置しているからにほかならない。この「カルスト王国」には氷河カルスト地形を除くおよそすべての種類のカルスト地形が存在するのだ。
二つの世界自然遺産
貴州は「山国」の呼称で呼ばれるが、全省の平均海抜は1100メートルで、山地と丘陵が総面積の92・5%を占め、中国で唯一平原のない一級行政区だ。全省の17万平方キロメートル余の土地の13万平方キロメートル余をカルスト地形が覆い、カルスト地形が世界で最も発達した、典型的なカルスト地形地区の一つとして知られる。カルスト上に刻まれたさまざまな地形は貴州を世界でもまれな地質景観の一大集中地にした。鍾乳洞、石林、石峰、天生橋、洞窟、天坑、地縫、地下河、水上森林などなど、大自然が数億年をかけて造り出した奇観が、貴州を人々が賛嘆してやまない世界レベルの大観光地にしたのだ。
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荔波の水上森林 |
貴州省内には二つの世界自然遺産が存在する。一つは、黔南プイ(布依)族・ミャオ族自治州の荔波で、「中国南方カルスト地形」を構成する三地区の一つで、貴州省の最南部に位置する。典型的な亜熱帯カルスト森林区で、「地球の帯上に飾られたエメラルド」の美称で呼ばれている。露出した石灰岩上にはコケや潅木が生えているだけでなく、うっそうとした原始林が茂り、一筋の割れ目からは天を衝く大樹がそそり立っている。荔波の「小七孔風景区」には独特の景観の水上森林があり、山、水、洞、林、石が渾然一体となっているだけでなく、点在する少数民族の村々とあいまって、息を呑む素晴らしい景観を繰り広げる。
貴州省には中国で最も美しい丹霞地形も存在する。もう一つの世界自然遺産がその丹霞地形で、「中国丹霞」の重要な構成部分だ。赤水の丹霞と呼ばれるこの景観は、貴州省の最北部、遵義市の管轄内に位置し、早期の丹霞地形を代表する。面積は1200平方メートル余。赤い岩の峰がそそり立ち、巨大な洞穴と美しい峡谷、緑の森と瀑布が互いに照り映えて、壮麗な景観をつくり出しており、観光価値がきわめて高い。
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ユネスコの世界自然遺産に登録された赤水丹霞(洪開第) |
数え切れないほどの景観
貴州は古来「千の瀑布の省」とも呼ばれてきた。最も有名な瀑布が、安順市にあるアジア最大の黄果樹大瀑布だ。黄果樹風景区は瀑布と鍾乳洞を主要な特色としており、9段18の瀑布と水上石林、高山渓流など数えきれないほどの美しい景色に満ち満ちている。黄果樹瀑布の奥に続くカルスト洞穴――「水簾洞」は一度に100人が入ることができるほど広く、世界でただ一つ、背後から大瀑布を観賞できる洞窟として名高い。また遵義市赤水の大瀑布も中国の著名な瀑布の一つとして知られている。
貴州は「千洞の省」とも呼ばれている。多くの鍾乳洞が「地下の観光ルート」をつくり出し、多くの観光客を引き付けている。遵義市の綏陽双河洞は、現在、85・3キロまで調査が進められ、中国で最も長い鍾乳洞とされる。安順市にある紫雲格凸河には世界第二の広さを誇る洞庁――「ミャオ庁」があり、その広さは11・6万平方メートルにも及ぶ。
最も有名な鍾乳洞は畢節地区の織金洞と安順市の龍宮だ。織金洞は洞内に水のない鍾乳洞で、総面積は70平方メートル余、奥行きは12キロにも及ぶ。11の「大ホール」内はさまざまな形状の鍾乳石で覆われ、「中国で最も美しい洞穴」と呼ばれる。龍宮は長いトンネル状の洞穴が続き、船でこのトンネルを進むと半分は空中を行き、半分は水中を行くような不思議な感覚を楽しむことができる。
貴州省はまた「千湖の省」の美名を持つ。大小の天然・人工の湖は2300余にも及び、湖面の総面積は有名な杭州の西湖の10倍以上もある。その名のとおりの美しい湖は、たとえば百花湖、紅楓湖、鴛鴦湖、杜鵑湖などなど。緑海子、草海の名を持つ湖もある。中でも遵義市綏陽の寛闊水はその幽玄な美しさが多くの人々から「貴州一の湖」とたたえられている。
貴州省には取り上げなければならない独特の優れた自然が数限りなくある。
黔西南プイ族ミャオ族自治州の興義には千もの峰が連綿と続き「中国で最も美しい峰林」とたたえられる万峰林があり、遠く見晴るかすと緑の峰々はさながら大海の波ようにも見える。興義には数百の深い谷が大地をうがち「地球の最も美しい傷」の美称で呼ばれている馬嶺河大峡谷もある。
銅仁地区には中国五大仏教名山の一つで「弥勒仏道場」として名高い梵浄山があり、その天を衝く峰には時として仏光が出現する。
稀少生物種が生育・生存
貴州省の山水は多くの生物をはぐくみ、省内の動植物の種類と数の多さは全ヨーロッパに相当するとまで言われている。中国の国家級保護リストに登録された珍しい植物は70種、動物は83種を数え、中国の8種の第1類保護貴重種の樹木のうちの半分は貴州省内に存在する。
その中の一種、「生きている古生物化石」と呼ばれる桫欏(ヘゴの一種)が4万株も生育する赤水桫欏自然保護区は 、稀少植物とその生態環境を保護する目的で設立された国家レベルの自然保護区で、「桫欏王国」とたたえられている。保護区内の生物資源は豊富多彩で、植物はよく保存され、原始の生態が残されている。地形的に周囲から隔絶されてきたこともあり、南アジア亜熱帯の特殊な生態環境の特色が濃厚で、「南アジアの飛び地」とも呼ばれている。
銅仁地区の梵浄山自然保護区は中国に六つある国連の「人と生物圏」世界自然保護区の一つだ。原始林の中にはハンカチノキや鐘萼木(伯楽樹とも。1科1種の落葉高木)、鉄杉(ツガ属の常緑高木)、鵝掌楸(モクレン科の落葉高木)など10種以上に及ぶ国家重点保護植物が生育しており、貴州キンシコウ、シーロー(スマトラカモシカ)、ベニジュケイ(キジ科の珍鳥)など国家重点保護動物が生息している。
畢節地区の威寧草海自然保護区はオグロヅルの最大の越冬地として有名で、「バードウォッチャーの楽園」と呼ばれている。
現在、貴州省には、安順市の黄果樹大瀑布、畢節地区の織金洞など18の国家クラス風景名勝区、銅仁地区の梵浄山、黔東南の雷公山、麻陽河など9の国家クラス自然保護区、畢節地区の百里杜鵑、赤水の竹海など21の国家クラス森林公園、関嶺古生物化石群、興義「貴州龍」(恐龍の一種)動物群化石など8の国家クラス地質公園と57の省クラス風景名勝区がある。
太古には海洋生物の楽園
ここは地球上で最も古い「地質博物館」であり、数十億年前、まだ少年期の地球では、海洋と大陸が激しく衝突し、前後合わせて13回もの大地殻変動が起こった。地球全体で13回にわたって起こったこの大陸が海になり、海が大陸に変わる大地殻変動によっても、今日の貴州の地を覆っていた「大貴州灘」は変わらなかった。
ここは地球上で最も完全に残されている「古生命現象の博物館」でもある。かつて一面の大海原だった貴州は、地球の大地殻変動期の最後に隆起して高原になり、はるか太古の古生物たちは山々の頂に、今日、無言の岩山となって存在するのだ。そして、研究者たちが生命の起源の謎を解くその日を待ち続けている。
5億3000万年前のカンブリア紀から2億5000年前の三畳紀までの間に、多くの生命が次々と誕生したが、この長い長い期間に生息した多くの生命が、いま化石となって貴州省内の各地で発見されている。貴州龍、海百合、魚龍、菊石……、こうした海洋古生物は、かつて「大貴州灘」を楽園として生息していたのだ。
ここはまた世界の主要な気候帯の交差地点であり、「大気流のバルブ」として、世界の気候に直接影響を与え、その変化に大きく関連している。貴州省は冬にも厳寒期がなく、夏にも酷暑期がない。省都の貴陽市は「中国を代表する避暑の都」と呼ばれ、貴州省全体が「大きな酸素バー」「大きなクーラー」「大きな自然公園」なのだ。
貴州を訪れたあなたは、地球の神秘を知って、きっと生命の謎に関心を持つことになるに違いない。 |