貴州について 観光スポット グルメ・特産 少数民族 現地発トピックス PR ビデオ リンク
 
人文生態の宝庫

 

険しい山々と深い峡谷に閉ざされた貴州の地は、長く外部との接触が途絶えていた。山と谷が、ちょうど保護壁のように貴州の極めて貴重な自然生態を守ってきたのと同様、ここに暮らす民族の長い歴史を持つ文化をも守ってきたのだ。それは、ふたつながら人類のきわめて貴重な遺産として今日に残されている。

20万年前の旧石器文化

「漢の版図はわが国よりも広いのか」

ミャオ族の服飾(唐福祥)

2100年前、漢の使者に対して古夜郎国の国王がこう尋ねたことを、司馬遷は『史記』の中に記している。ここから「夜郎自大」という成語が生まれたが、漢代に中国の西南部を治めていた少数民族の地方政権「古夜郎国」は今の貴州省と雲南省・四川省の隣接部分をその版図にしていた。

不思議なのは、10万の精兵を擁していたこの国が、300年を経ずして突然歴史から姿を消してしまったことだ。この謎は、今日なお、解かれていない。

しかし、古夜郎国が貴州の文明史の始まりであると早合点してはならない。貴州は古人類の揺籃の一つでもあるのだ。

20万年前の旧石器時代に、この地には北京の周口店に暮らした北京原人の文化とも肩を並べることのできる「観音洞文化」を創造した古人類が西部地区に暮らしていたのだ。旧石器時代晩期に創造された「普定穿洞文化」は「アジア文明の灯」とたたえられているが、遺跡からは大量の精美な石器と骨器が出土している。

古人類の足跡は貴州省内に貴重な洞穴文化遺跡として残されている。これまでに発見された100以上の古人類遺跡の八割以上が洞穴遺跡だ。

1999年の調査では、全省で約5000戸の人々が洞穴の中で暮らしていた。地方政府は彼らのために新しい住まいを建設して移住させてきたが、多くの住民が洞穴での生活に名残惜しい気持ちを抱いている。安順市紫雲自治県内にある中洞は幅115メートル、奥行き200メートル、高さは50メートルある大洞穴で、近年まで、ここには18戸73人の人々が住み、16の住まいと一つの小学校が設けられていて、「中国最後の穴居集落」と呼ばれていた。

洞穴は人々の住まいであったばかりでなく、死者の霊魂を祀るところでもあった。貴州省内に住むミャオ族などの少数民族には、断崖にうがたれた洞穴内に死者を安置する習俗がある。伝説によれば、ミャオ族の祖先は北方の黄河流域から南の長江中下流域に移住し、さらに雲貴高原に移ったとされる。彼らは他郷に埋葬されることを嫌い、とりあえず棺を洞穴内に安置させ、いつの日か郷里に運ばれて、祖先の地に埋葬されることを望んだのだとされる。

数々の無形文化遺産

ミャオ族の錦鶏の服飾

「わたしたちが真似るセミの鳴き声を聞いてくださいな。そして皆さんもご唱和くださいね。わたしたちの声はセミには劣るかも知れないけれど、胸には生活の喜びがあふれています。さあ、わたしたちの青春の歌を高らかに歌いましょう。わたしたちの愛情の歌を高らかに歌いましょう」

1986年、貴州省から参加した9人のトン族の娘たちがパリの「秋の芸術祭」で歌った「トン族大歌」の『セミの歌』は会場を埋めた多くの人々の温かい拍手で迎えられた。この何の伴奏も指揮もない自然のままの歌声は、貴州の少数民族の原生態文化を代表するもので、現代都市に住む人々の心を洗う「天からの歌声」であったのかも知れない。

トン族は歌が大好きな民族で、彼らに言わせると「米は体の食物、歌は魂の食物」なのだ。トン族には独自の民族文字がなく、その歴史は歌を歌い継ぐことで代々伝えられてきた。「トン族大歌」はトン族の人々が一代また一代と伝えてきた合唱の数々からなり、歌手は4歳の幼児から80歳になる老人まで、年代を問わず自慢ののどを披露する。大合唱になると、参加者は千人にもなるという。それほどの大合唱になっても、指揮者はおらず、それでいて高音、中音、低音の多部合唱が見事に調和し、美しいハーモニーを響かせる。2009年、「トン族大歌」はユネスコの世界無形文化遺産に登録された。

国際協力で文化遺産を保護

「トン族大歌」だけが貴州省を代表する文化遺産なのではない。高い山と深い谷によって隔てられてきたため、貴州省の村々は「五里隔てれば風習を異にし、十里隔てれば風俗が異なる」と言われるほど各地に原生態のままの神話、伝説、歌舞、習俗、服装、祭り、礼儀など数限りない伝承文化が伝えられてきた。物質文化財と非物質(無形)文化財とを問わず文字通り豊富多彩な民族文化が各地で妍を競っている。

現在、貴州省内には、ユネスコに登録された世界無形文化遺産が1項目、中国国家クラスの無形文化遺産が62項目101カ所、国家クラスの無形遺産伝承者が46人、省クラスの無形文化遺産が440項目、省クラスの無形遺産伝承者が198人、市クラスの無形文化遺産が822項目、県クラスの無形文化遺産が3438項目ある。

全国重点保護文物は39カ所、省重点保護文物は342カ所、県重点保護文物は2100カ所あり、遵義と鎮遠の両市は中国歴史文化都市に指定されている。

貴州省では、文化生態保護区と生態博物館の設立を積極的に進めており、「芸術の里」「民族村」「歴史文化都市」を指定して伝統民族文化を守る活動を全省で繰り広げている。

2003年、黔東南自治州に「黎平肇興トン族文化生態保護区」が正式に設立された。ここでは、肇興の自然生態と農耕、住まいなどの文化生態ならびにトン族の伝統文化を全体として保存する努力が続けられている。またこのほど、貴州省とノルウェー政府との協力で、六磐水市の六枝梭嘎にミャオ族の、貴陽市の花渓鎮にプイ族の、黔東南自治州の錦屏隆里では古い町並みが、また黔東南自治州の黎平堂安にトン族の、それぞれ4カ所の人文生態博物館が誕生した。貴州省内に国際的な人文生態博物館が開設されたことで、無形文化遺産の保護がいっそう力強く進められることになる。

ユネスコの世界無形文化遺産に登録された「トン族大歌」(李林)

 

人民中国インターネット版

 
人民中国インタ-ネット版に掲載された記事・写真の無断転載を禁じます。
本社:中国北京西城区百万荘大街24号  TEL: (010) 8837-3057(日本語) 6831-3990(中国語) FAX: (010)6831-3850