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貴州の緑茶は天下に甲たり

 

于文=文

中国緑茶といえば多くの人が西湖龍井か碧螺春を連想すると思うが、これらの長江中・下流地域産の緑茶は日本でも高い人気を誇っている。茶の起源をどこに求めるかには諸説があるが、「茶のふるさとは中国であり、雲貴(雲南―貴州)高原に起源を発し、その後、四川へ伝わってから江蘇・浙江一帯にたどり着いた」とするのが当たらずとも遠からぬところだろう。中国西南部を茶の原産地ならびに喫茶文化の発祥の地する学説が優勢のようだ。

雲貴高原に位置する貴州省の地は昔から良質の茶の産地とされてきた。それでは、貴州へ茶の起源をたずね、「黔茶(貴州茶)」を味わう旅に出かけよう。

茶樹の原生地では

早朝にやわらかな茶の新芽を摘む

貴州省の地図を開いてみると、茶と関係のある地名が多くあることが分かる。

「大茶山」「大茶園」の地名から「茶樹」「茶林」さらには「煎茶」「焼茶」といった地名まであり、貴州と茶の「縁」の深さが見て取れる。

貴州省は中国西南部の雲貴高原にあり、平均海抜は約1100メートル、森林覆蓋率は40%以上。高い標高、日照時間の少なさ、気温、湿度、降雨量などどれも茶の育成に適している。貴州には茶を植えるのに適した土地が700万ムー(1ムーは666.7平方メートル)以上あり、2008年上半期末現在、省全体の茶畑の面積は約140万ムーにまで広がっている。どこまでも続く茶畑はまるで緑の海のようで、雲霧の中に見え隠れする光景はとても美しい。

唐代の陸羽の名著『茶経』には、「貴州の茶葉の産地は思州、播州、費州、夷州などで、一年中手に入れることができるが、非常に味が良い」という記述がある。これはつまり、1000年以上前にすでに貴州は茶の名産地であり、しかもその品質が高かったことを意味している。陸羽は「茶聖」と呼ばれ、その著『茶経』は中国だけでなく世界でも最も早く、そして最も完成された茶の専門書であり、陸羽と『茶経』の評価は今日なお最高のレベルにある。

1980年、3粒の茶の種の化石が貴州省晴隆県で発見された。100万年前のものとされ、現在までに発見された世界最古の茶の種である。貴州には高木の茶樹が多く自生しており、野生茶樹が中国でも最も多い省の一つである。今日までに確認された茶の品種は460種であるが、沿河県には樹齢1000年の野生茶樹3株と樹齢500年の人工栽培茶樹123株を擁する大規模な古代茶樹園が残されている。野生茶樹が多く、また茶の種の化石が発見されたことは、茶樹の原産地と喫茶文化の発祥地を中国西南部とする学説にとって非常に有力な根拠となっている。

毛沢東と都匀毛尖

1915年、米国のサンフランシスコ。美しい包装で飾られていたわけでもなく、宣伝プロモーションが展開されたわけでもない、ただその緑の葉に頼っただけの中国貴州南部産の緑茶が、茶を淹れた後も続くさわやかな香りと新鮮な甘みにより「パナマ・太平洋国際博覧会(サンフランシスコ万博)優質賞」を受賞した。これこそがのちに「都匀毛尖」と呼ばれることになる名茶である。その後、貴州には「北に仁懐の茅台酒、南に都匀の毛尖茶あり」ということばが生まれた。

都匀毛尖には500年以上の歴史がある。明代にはすでに皇帝への献上品とされ、崇禎帝はこれを深く愛した。魚釣りの鈎針に形が似ていることから、皇帝より「魚鈎茶」の名を賜ったほどである。

1956年、都匀団山村の村民が丹精込めて作った「魚鈎茶」が毛沢東主席に贈られた。毛主席は自ら筆を執ってお礼の返事を書いた。「送っていただいた茶を受け取りました。たいへん素晴らしい。これからは山にたくさんの茶樹を植え、茶の名は『毛尖茶』としたらいかがでしょう」――こうして「都匀毛尖」の名が付けられることになったのである。

日本の田中角栄首相は訪中時に、この都匀毛尖を飲み、周恩来総理に「ヘリコプター1機と25キロの都匀毛尖を交換しましょうか」と冗談を言ったほどだ。

都匀毛尖は上海万博とも縁を結び、「十大万博名茶」の認定を受け、「中国上海万博国連館指定名茶」にもなった。

貴州は名茶を育む地

茶葉を鉄鍋で炒る

都匀毛尖は代表的な貴州緑茶だが、貴州緑茶には他にも名品が少なくない。

良い茶は雲霧が広がる高山で生産されるが、貴州の地理と気候は茶樹が育つのに非常にすぐれた条件を提供している。茶の栽培地区は工場がなく、緑が多く、土と水の質が良好に保たれた地域で、そこではおのずから名茶が数多く育まれることになる。湄潭翠芽は省内で茶産業が最も発達している湄潭県の産で、この地は中国西部の「茶の海」と呼ばれている。このほかにも梵浄山翠峰茶、石阡苔茶、鳳岡鋅硒有機茶、貴定雲霧茶、雷山銀球茶、瀑布毛峰などが有名だ。

2008年、貴州緑茶は第5回北京国際茶葉博覧会で17の金賞中、10を受賞し、広州国際茶葉博覧会の緑茶部門では14の金賞全てを独占した。さらに2009年の第16回上海国際茶文化節中国優秀茶品評会でも、貴州緑茶は29の金賞を受賞、2010年の同品評会ではなんと46の金賞を受賞している。

貴州緑茶はまさに国際的な著名ブランドの仲間入りをしようとしているのである。

発展を続ける貴州茶産業

貴州绿茶のブランド効果は年々高まっており、茶葉ブランドの市場競争の中でも抜きん出ている。売り上げ額もうなぎ登りだ。有機エコ茶園の知名度はますます上がり、茶の里への観光旅行も盛り上がりを見せている。

貴州省は都市も村も山を控え水に臨む美しい風光の中にあり、都市でも村でも最も立派な建物には、必ずと言っていいほど、「茗楼」や「茶院」と呼ばれる伝統的な茶館が設けられている。美しい景色は持ち帰れないが、貴州の地を旅して、山水を眺めながら清らかな風に吹かれ、名月のもとで銘茶を喫するなら、お茶好きには何より心憩う時を過ごすことになるに違いない。貴州の「茶文化」を体験した者はいずれも、その忘れがたい思い出を懐かしそうに語っている。

貴州は今日、省外や国外の消費市場への対応を拡大させており、貴州茶葉の専門店・専門カウンター、販売エリア設置の方式で市場を開拓し、多様な営業ネットワークで市場のシェアを高めようとしている。情報ネットワークを駆使し、インターネット販売などにも力を入れ、茶葉に関連する情報を随時収集・配信している。貴州省では中国高品質緑茶の原料基地と加工センターの建設が計画されており、無農薬・有機自然栽培茶やその再加工品などの生産基地を目指し、さまざまな工夫が凝らされるようになっている。

 

【データ】 2010年貴州五大名茶

1 湄潭翠芽  湄潭県産

2 石阡苔茶  石阡県産

3 鳳岡鋅硒茶 鳳岡県産

4 梵净山翠峰茶  印江トウチャ族ミャオ族自治県産

4 貴定雲霧貢茶  貴定県産 (2種が同列)

5 瀑布毛峰  安順市産

 

 

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