省の東南部は世界最大のミャオ族集住地域で、ミャオ族の文化の中心とも言われる。質朴で独特のミャオ族文化は「働いたあとには共に楽しく憩う」暮らしの典型とも言えよう。「稲作民族」のプイ族は水辺に暮らし、川や湖に臨んで高床式で屋根にはスレートを葺いた家を建てた。プイ族の村では、もちや「米花」(もち米を炒ったもの)、「五色飯」や「糯米酒」などのプイ族特有の食文化を堪能することができる。トン族の村では、鼓楼や風雨橋、吊脚楼などの巧みに造られた民族建築と素晴らしい「トン族大歌」を楽しむことができる。漢族の特殊な集団――「屯堡人」は、明代初期にこの地に駐屯した明軍の兵士の後裔で、衣服をはじめ習俗の多くが600年前の中国江南一帯の風俗をそのままに伝えてきた。
貴州は地理上、中国の西南部と東部を結ぶ東西のルートと、北部と南部を結ぶ南北のルートの「交差点」に位置する。有史以前から今日に至るまで、多くの文化がここ貴州の地で交わった。閉ざされた地でありながら、貴州は長い歴史の中で多くの外来文化を取り入れてもきたのだ。つまり独自の文化を保持しながら、外界との接触・融合がはかられてきた。
千数百年の間、漢族と少数民族の間で、また少数民族同士の間で、また人と自然の間で、調和した共存が保たれてきた。それは長い時間をかけて各民族がつくり出した調和が取れた統一体であり、きわめてバラエティーに富んだな文化の長廊であって、中国においてのみならず、世界的に見ても、民族の調和の手本だ。 |