私はミツバチである
私はミツバチである。広大なお花畑にやってきた。ここは本当にたくさんの色とりどりの花が咲いている。地平線までずっとお花畑なのだ。以前蜜を取っていたところは、山や丘陵が続く窮屈なところだった。ここは本当に広いし、蜜も多くおいしい。第二の人生を過ごす場所としては最高の環境だと思っている。
ここへ来てもう数年が経つ。たくさんの花たちに出会った。どの花も素直で純粋で一生懸命咲こうと努力している。以前の花たちのように言うことを聞かないことはない。だから、花たちと交流することはほんとうに楽しい。例えば花たちは言葉を覚えるのが好き。だから、私はときどき日本語を教えてあげる。日本語の詩を朗読したり、歌を歌ったりする。花たちはとても楽しそう。
でも困ることもある。それは不正である。授業の時、答えられないと周りが答を教える。
「それじゃだめなんだ。その場しのぎはちっとも自分のものにならないんだよ。」と私はいつも言う。
ときどき、日本語の試験をする。
「カンニングは0点になるよ。自分の力だけで問題を解くんだよ。」
少々点数が悪くてもかまわないのだ。毎日一生懸命咲いているのを私はいつも見せてもらっているのだから・・・。でもカンニングはなくならない。始めはその年の花だけかと思った。ところが毎年そうなのだ。花たちの顔ぶれが替わっても同じことが繰り返されるのだ。おそらく花の咲き始めでもそうに違いないと思える。
自分で苦しみながら答を必死に考える。以前の花たちはそうだったのだ。周りもじっと待っていたし、お互い尊重するとか、配慮するとかがあったのだ。試験も公正だった。
日本語がある程度話せるようになると、卒業論文を書かせる。これも毎年頭が痛い。なぜかと言うと、別人の論文コピーを提出するからだ。今はコンピュータが発達し、インターネットから簡単にできるのだ。証拠が見つかれば書き直させる。毎年いたちごっこだ。
この広大なお花畑では、毎年色とりどりの美しい花が咲く。私は彼らが大好き。これからも花々の間を飛び回って、できる限りたくさんの蜜を集めようと思っている。たかが一匹のミツバチ。お花畑の肥料のやり方や土作りの方法なんて一切私の関知しないことだから。
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