古元氏の版画に魅せられて
北京に暮らし13年が経ちました。版画家を志した理由は、日本にある中国雑貨店で売られていた『年画』に惹かれたことがきっかけです。『年画』とは、中国で部屋の中に室内装飾品として貼る版画のことで、新年に張り替えるため『年画』といいます。
その後、中国の友人から、「中国版画を勉強するなら、ぜひ知っておくように」と版画集をいただいたのがきっかけで、20世紀の木版画家を代表する古元氏(1919-1996)を知りました。古元氏の作品は、濃厚な郷土の息吹と民族や地域文化の独特な風情を表現しています。以来、古元氏に弟子入りしたいという思いが募り、留学に向けて準備を始めましたが、その頃には古元氏は既に亡く、古元氏の弟子である譚権書教授に師事するため、中央美術学院の碩士(修士)研究生の試験を受けて入学、留学生となりました。
中国の子供たちに版画を教える
中央美術学院を卒業後、版画家として北京を中心に活動しています。中国の芸術家と交流展覧会を開いて「芸術交流」を行ったり、美大受験予備校で美術概論を美大受験生に指導したりしています。 また、小中学生対象の美術教室でも版画を教えています。日本の小学校では、工作時間に版画の授業がありますが、中国の小学校では一般に版画の授業はありません。彫刻刀を握ったこともない子供たちが、堅い木版板を彫り怪我をするといけないので、まずはやわらかい消しゴムを使い、彫る練習も兼ねて、消しゴムスタンプを作成してもらいます。そして、中国の版画も同じ技法でつくられていることを教え、さらに、様々な世界の美術作品を紹介、解説しています。
日中美術の架け橋になりたい
今後の抱負ですが、東アジア美術に興味を持つ、欧米や、アフリカなど他地域の方々に、日中それぞれの美術についてご紹介できればと思います。私が学んできた専門知識を活かして日中美術の架け橋となり、ひいては両国の美術はじめ、文化としての美術の楽しさを、伝えていくことが目標です。 また、なかなか公式記録には残らないような、現代中国の庶民生活の様子をモチーフとして作品に残したいと思っています。「100年前の中国庶民生活が分かる資料」として、将来役に立っていたら、画家冥利に尽きることでしょう。
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