上海在住ジャズ歌手・ボーカル講師 YUKO

 

修行、そして2度目の中国生活

ジャズ歌手を志す前にも一時期、上海に住んでいたことがあります。帰国後しばらくは別の仕事をしていましたが、「やはりどうしても歌いたい、ジャズをやりたい」と思い、修行を始めました。いずれまた上海に住む可能性があったので、それまでに何とか一通りのスキルを身に付けようと必死でした。昼夜のアルバイトの合間にカラオケボックスで、レッスンの録音を聴いて練習する毎日。2度目の中国生活をスタートしたのは2009年の夏です。音楽環境が整った東京に住み続けたい気持ちもありました。しかしこの先の生き方を考えると、上海でのほうが意味のあることをやれる気がしたのです。

私は運がよかったのでしょう。移住直後にジャズバーのセッションで歌ったら、その場ですぐに出演の話をもらえました。以降、レストランやバー、各種イベント、結婚式などで歌う機会をいただいています。歌の講師になりたいという夢もありました。暮ごろから準備を始め、翌春から少しづつ受講希望の連絡が来るようになりました。私のレッスンでは一定のカリキュラムやマニュアルを使っているわけではありません。経験と身体感覚を頼りに1人1人に合わせて教えています。そのため毎回が試行錯誤ですが、生徒さんが「楽に声が出るようになった」と喜んでくれたり、表現も豊かに歌いこなすのを聞くと本当に嬉しく、やりがいを感じます。

音楽で豊かに、音楽で手をつなぐ

初期の生徒さんに日本人の女子高校生がいました。会って間もないころ彼女は「お父さんの駐在が決まって、コーラス部のステージを諦めて上海に来た。辛かった」と打ち明けてくれました。そのとき私は自分の役割を悟った気がします。「歌の好きな人たちが中国で音楽を楽しむための手伝いをしよう。やれることはきっとある」。発声法に悩むバンドマン、カラオケのレパートリーを強化したい駐在員、お子さんに日本の童謡を教えたいご両親、ゴスペル歌唱のコツを知りたいサークルなど、様々な方から連絡をいただきます。みんなに「中国生活、面白いよ。こんなこともあんなこともやったよ」と、笑顔で中国を語ってほしい。先の高校生の女の子は万博の日本産業館のステージに出演しました。小学生の生徒さんたちに私のライブで歌ってもらったこともあります。「音楽で中国生活をもっと豊かに」とてもささやかですが、これが私にできる日本と中国への貢献なのです。

私はあまり中国語ができないため、今のところ中国人の生徒さんは日本語ができる方に限られています。もっと中国語を勉強し、歌好きの中国人の方々と広く交流していきたい。未来の中国ジャズを担う素晴らしい中国人ミュージシャンたちと、たくさん共演していきたいです。日本人、中国人、そして縁あって中国に集う様々な国の人々と、音楽で手をつなぐことができるのを心から幸せに感じています。

 

 

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