国際協力銀行北京駐在員事務所首席代表 菊池洋
 

中国に最も早く事務所を開設した金融機関

国際協力銀行(JBIC 当時は日本輸出入銀行)は1980年4月、北京駐在員事務所を開設しました。これは世界で最も早く中国に駐在員事務所を設立した金融機関の一つです。

当時の中国には国内資源の開発のための資金がなく、国際協力銀行は1979年から92年にかけて、凡そ1兆7000億円に上る資源ローンを供与。教科書にも名前の出てくる黒龍江省や山東省の油田、山西省の炭鉱の開発を支援し、そこで採掘された資源の一部は日本へ輸出されてきました。

また、当時は中国国内のインフラも大幅に不足しており、各地の空港や発電所の建設資金についても、中国政府の要請に応えて融資を行い、両国の経済活動の発展に貢献してきました。これには、上海の外環状線道路や広州の白雲空港など、日本人が多く居住する地区のインフラ整備が含まれています。

時代と共に変遷した中国向け業務

その後、中国は経済発展を遂げましたが、同時に環境問題が深刻となっています。現在、国際協力銀行は、日本の技術が活きる環境・省エネ分野を中心に、中国との間で協力関係の構築に努めています。最近では、2009年に重慶市のモノレール建設の融資に調印しましたが、同市のモノレールには日本の技術が導入されています。同市で深刻となっていた自動車による大気汚染の改善が可能となると共に、従来型の軌道交通に比べて騒音が少なく、身近な交通手段として地元住民に愛用されています。

また、本年7月には、中国輸出入銀行、㈱みずほコーポレート銀行や日揮㈱等日中の7社・機関との間で「日中省エネ環境ファンド」設立に合意しました。これは中国国内で行われる省エネ・環境事業に対して、日本企業が関与するプロジェクトを中心に、同ファンドからの出資による支援を行うもので、日本企業の中国国内での事業展開と中国の環境改善への効果が期待できます。

このように、過去の中国の経済発展への協力から、環境分野や財務・金融面での協力を柱とする両国互恵型の関係構築に業務がシフトしており、この傾向は今後も続いていくものと見られます。

今後の日本企業の中国ビジネス支援

国際協力銀行は毎年「日本の製造企業の海外事業展開」に関するアンケート調査を行っていますが、過去10年間、一貫して日系企業にとって最も有望な海外事業展開先は中国となっています。足元の生産拠点数でも、中国は他国に比べて突出する形で第1位の地位を確立しており、中国は日本企業の最も重要な海外ビジネスの拠点となっています。

また、近年では中国企業による海外進出が年々加速しております。日本は1980年代以降、欧米やアジアを中心に、企業の海外展開が増加しましたが、現在の中国は同じ位置にあるといえます。海外事業展開に関して日本がこれまでに蓄積した経験は、中国にとって得難いものであり、そうしたノウハウを元に、お互いの利点を活かした協力関係が構築されるケースも増えています。

日中関係の変遷に伴い、日本と中国の企業が様々な形でのWin-Win関係を模索する事例が増えており、国際協力銀行としても、様々な資金ツールを通じて両国企業の関係構築支援を継続していきたいと考えています。

 

 

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