北京在住日本人俳優 黒木真二

原点はジャッキーチェン

高校、大学でのニックネームは「ジャッキー」。なぜならジャッキーチェンが好きだからです。

友人の間でもジャッキーチェンファンで通っていた僕が、まさか本当に役者をするとは、当時の僕は思いませんでした。しかも中国で。

映画『劇外人生』より

芸事とは全く接点も興味もない家庭で育ち、鹿児島の普通の中学に通っていた頃に、ジャッキーチェン主演の映画を見て、本格的なアクションをこなせるジャッキーチェンの演技に驚くと共に、大ファンになりました。その時に「香港でアクション俳優になる」という夢を抱きました。まだ中学生の僕には海外で俳優になるために何をすべきかも分からず、「香港で」という部分のみを漠然と追いかけました。そして、外国語大学の中国語学科に進学し、中国語を学びながらも、やはり僕が役者なんてできるはずがないという気持ちが大きく、普通の大学生活を送っていました。しかし、語学留学した北京で、中国で映画業界を目指す友人たちと出会い、目標に向かってひたむきに活動する友人たちを見た時に、今やらないときっと後悔すると思い、本気で役者を目指すことに決めました。

役をもらえるうれしさ

2度目の北京留学では、中央戯劇学院の監督科に入りました。在学中から少しずつ映像の仕事をもらえるようになり、2年の留学期間を終えて、ついに学生ではなく役者としての人生が始まりました。しかし、現実はほとんどの時間をアルバイトに費やし、役者として前進している実感が無く不安な日々を過ごしていました。そんな時、先輩の紹介で舞台の話が飛び込んできました。給料なんてありませんが、本格的な役者の訓練を受けていない僕にとっては、とてもありがたいお話でした。その後も友人たちと舞台をつくったり、ボランティア活動として老人ホームでコントをしたりと、好きな仕事ができるうれしさで、夢中で役者にのめり込みました。経済的には相変わらずですが、やっていて楽しく、見る人にも楽しんでもらえるだけで、役者をする意義を全うできたと感じることができました。

中国で俳優を続ける決心

そして、徐々に映像の仕事も増えてきました。しかし日本人に演じられる役にも限りがあり、現在も、「仕事で休みもないほど……」というわけではありません。仕事が入らない時には不安になり、そしてその度に何をすべきかわからなくなります。そういう時に思い出すのがジャッキーチェンです。世界中の人を楽しませる彼は、自分にとても厳しい努力家だと聞きます。ジャッキーチェンは、誰もが知るスターであり、すでにベテラン俳優ですが、俳優として日ごろの努力は惜しまないそうです。そこで僕は「空いた時間には役者のための努力をするべきだ」と思い直します。

舞台『倩女幽魂』より

中国で役者をすることをハンデではなくメリットととしてとらえ、これからも、たゆみない努力と共に前進していきます。それがきっと役者をやる意義につながっていくと信じて。

 

 

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