日本の第46回衆議院選挙が終わった。安倍晋三氏率いる自民党が圧倒的な勝利を収め、政権を奪還した。3年にわたって政権を担当した与党・民主党は予想外の惨敗となり、わずか54議席を獲得したに過ぎなかった。このほか、日本維新の会をはじめとする右翼党派が議席を大幅に伸ばし、多くの現行憲法と中日友好を守ろうという政党や候補者が議席を減らし落選したことも、国際社会の注目を集めた。
安倍政権下での外交政策は、特に対中政策は現在各界の注目を集める一大焦点となっている。安倍氏は選挙に勝利した後の報道各社のインタビューに答え、「できる限り日中関係を改善したい」と述べたが、同時に釣魚島の領土主権問題について「絶対に変更しない」ことを宣言した。このような政治的背景のもとで、将来中日関係はどのように進むのだろうか? この問題について本誌記者は中国外交学院当代中国外交研究センターの張暦暦主任教授にインタビューした。
今の安倍氏はかつての安倍氏ではない
安倍晋三氏は2006年に首相就任後、小泉純一郎首相時代に悪化した中日関係を改善するため、まず最初に中国を訪問し、「砕氷の旅」と呼ばれた。しかし、最近の安倍氏は外交政策について述べる中で、最優先なのは日米関係の強化であり、首相就任後最初の訪問先は米国とすることを明らかにした。
同じように中日関係が悪化している中で、安倍氏のまったく別人のような態度は何を意味しているのだろうか? 彼が米国を最重視することで日本の対中政策にどのような影響をもたらすのだろうか?
この点について、張教授は次のように述べている。「現在の安倍氏は6年前と比べて、政治的態度が大きく変化しています。彼の選挙前後の多くの言論から、現在の安倍氏は当時よりかなり右傾化していることが見て取れます。つまり、現在の状況からみて、安倍氏首相就任後の中日関係が改善できるか、過度な期待はできないかもしれません。
米国が考えるのは自身がグローバルな利益やいかに覇権的地位を守るかです。また、アジアに一定の緊張が続くことをより望んでおり、そこから支配力を強める機会を得たいのです。本質的にみて、米国の内心は日本を支持していますが、具体的な時期や環境を見極めようともしています。米国が日本に味方する目的は中国の勃興を防ごうというものだとしても、もし日本の右翼が挑発によって中日関係を米国のグローバルな覇権の安定的段階を危うくするほど悪化させるなら、たいへん苦しい選択に直面することになります」
第三極は中日関係改善の障害物に
石原慎太郎氏と橋下徹氏の第三極勢力――日本維新の会は今回の衆議院選挙で議席を大幅に伸ばした。しかし、自民党が単独過半数の議席数を獲得したため、日本維新の会は自公両党が主導権を握るのを阻止する目的は達成できなかった。日本維新の会の橋下代表代行は「非常に満足ではなくとも、一定の成果を得た。(われわれは)必ず与党に対抗できる勢力を築かなくてはならない」と述べた。
ある世論によると、日本維新の会は衆議院の議席上で与党をけん制するという所期の目標を達成することはできなかったが、石原氏を党首とする日本維新の会は一部右翼的主張において安倍氏と比較的近く、彼らは将来何かの問題上で妥協が成立することがあり得ると指摘している。
第三極勢力の今後の日本の政界における地位と役割について、張教授は次のように認識している。「自公両党の連立は長く続いており、このため現在のところ第三極勢力が直接的に政権に参与する可能性は大きくはありません。日本維新の会は改憲を主張し、日本の軍事力拡大を主張し、核兵器保有さえ主張しており、その主な影響は日本の政界をより保守に向かわせ、さらに右傾化を進めるものです。対外関係上では、このような右翼政党が対外強硬姿勢を主張し、歴史問題を認めず侵略の歴史をくつがえそうとさえしています。このため、この勢力が中日関係改善の難度をさらに大きくし、中日関係上にさらに多くの妨害や不安定な破壊要素を加えるでしょう」
対中友好の声は弱まる可能性
今回の衆議院選挙の中でもうひとつ注目に値する現象は、日中友好協会会長の加藤紘一氏と中日両国が釣魚島問題を棚上げにすべきだと主張している田中真紀子氏ら、多くの対中友好のおなじみの政治家たちが予想外の落選をしたことだ。こうした結果を招いた原因は政治的風向きなのか? それとも日本の有権者の民意なのか?
張教授はこの点について次のように述べている。「候補者の当選・落選はまず選挙区内の影響力と支配力を見る必要があります。これらの政治家は基礎がしっかりしていても、影響力が衰えると有権者は投票しません。
政治的情勢からみると、現在日本国内では右傾化を主張し、軍事力拡大を主張し、改憲を主張する勢力が強まっています。対外関係上、周辺国家に強硬であるよう主張し、日米同盟を強化せよという声が優勢を占めています。このため、日本の政界の右傾化は彼らを落選させた一大要素でもあります。
このほか、これらの候補者の主張する外交政策が有権者の賛同を得られなかったのもひとつの原因かもしれません。共同通信社によれば、今回有権者が最も関心を持った問題は、経済、外交、社会改革の順でした。対外関係が選挙に及ぼす影響が以前に比べ高まっていることが見て取れます。いずれにせよ、このような結果は最終的に日本の政界の対中友好の声を弱めることになりました。当選しなかった候補者は国会上で発言する機会を失い、政治活動家あるいは社会的著名人士として、影響力はかなり弱まることになります」。
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安倍政権誕生へ、中国側は両国の今後に強い関心
人民中国インターネット版 2012年12月19日
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