アジアの平和と安定を共に守ろう

元中国人民解放軍軍事科学院中米国防事務関係研究センター主任 姚雲竹

  

 
 
  この数年、中日関係は改善に向かうプロセスを歩み始めたが、足取りは緩慢で複雑な要素の干渉をたびたび受けている。それでは、中日両国には安全保障と軍事分野でどのような意見の食い違いがあり、どうすれば食い違いを減らし、中日関係改善のプロセスを着実に推進できるのだろうか。

 

主要な食い違いと紛争

 

 中日両国関係は全体的には好転の兆しが表れているが、依然としてぜい弱で不安定だ。安全保障と軍事分野において、双方の利益衝突と対立は極めてし烈であり、改善は顕著ではない。最も突出しているのは以下の問題だ。

 

 第一に釣魚島主権紛争を中心とする東海の争議だ。2012年9月、日本政府の釣魚島「国有化」宣言以来、中日双方は一貫して鋭く対峙する情勢に置かれている。双方の軍艦、軍用機がいずれも釣魚島付近の海域、空域で活動を行い、艦船や航空機による異常接近事件もたびたび発生している。最終的には事故には至らなかったが、両国の法執行機関や軍事力が異常接近する確率は絶えず上昇しており、「銃が手入れ中に暴発する」(思わぬ事故になること)のリスクもそれにつれて高まっている。

 

 第二に、日本が近年南海問題で強気に干渉、関与する態度を取り、関係のない南海紛争に関して多くの無責任な発言をしていることだ。特に、7月12日にいわゆる「南海仲裁判決」の結果が明らかになると、日本は米国に追随して中国に圧力をかけ、岸田文雄外相は「判決」は最終結果で、当事国は必ず従わなければならないと述べた。彼は8月のフィリピン訪問中にも、「法の支配、海洋における安全保障を尊重するよう中国に促す」と述べ、国際ルールを順守していないと中国を名指しで非難した。

 

 第三に、地域の安全保障上で議論される問題に対する日本の態度も、双方の軍事・安全保障関係に影響を与えている。7月8日、韓国と米国の国防部門は共に高高度迎撃ミサイルシステムTHAAD(サード)の韓国への配備を発表し、中韓関係を後退させ、中米関係をいっそう複雑にした。続いて、あるメディアは日本政府もTHAADの配備を検討していると報道し、火に油を注いだ。このほか、台湾地区で民主進歩党が表舞台に上がると、日本の一部議員は米国の「台湾関係法」と類似の法律制定を扇動し、台湾海峡両岸事務にちょっかいを出した。こうしたことは、中国の日本に対する安全保障面での疑念をいっそう募らせた。

 

 第四に、米国が推進するアジア太平洋地域リバランス戦略の中で日本が演じる役割の変化だ。日本は日米同盟の中で保護される立場だったが、次第に米国がアジア太平洋地域防衛配置の中流の砥柱へと転換し、ますます中国に対抗姿勢を強めている。これも中国にとって受け入れ難いものだ。

 

 最後に、安倍内閣下での日本国内の政治環境も中国を懸念させている。例えば、国会で集団的自衛権行使を認める安保法案が可決され、軍事予算が増額された。今年7月に参議院選挙が行われ、平和憲法の改正を主張する勢力が3分の2の議席を獲得し、安倍内閣が憲法改正を行うための障害を取り除いた。こうした流れは、第2次世界大戦で侵略を受けた中国や他の国に懸念を抱かせる。

 

危機管理強化で衝突回避を

 

 安全保障面での紛争は突発性と爆発性があり、もし管理制御が不良で、予防措置が不十分なら、たやすく中日関係を正常な軌道から突然逸脱させてしまう。紛争が解決できない状況にあって、現在双方は紛争と意見の食い違いの制御に尽力すべきである。まず、中日双方は共に「銃が手入れ中に暴発する」危機を誘発する状態が両国の国益に合致せず、また両国の望むところではないことを明確にしなければならない。次に、有効な危機管理制御メカニズムを打ち立てることも極めて重要だ。

 

 2014年9月、中日高級事務レベル海洋協議は、改めて中日国防事務部門の海上連絡メカニズム協議をスタートさせた。その後、双方の国防事務部門は海上連絡メカニズムについて何度か協議を行ったが、このメカニズム適用範囲上に意見の食い違いが存在したため、最終的に合意には至らなかった。中国はこのメカニズム構築によって、両国指導者が合意した重要な共通認識を有効に実現し、連絡と意思疎通を強め、危機を管理制御し、誤解や誤った判断を回避し、不測の事態を未然に防ぐことができると考えており、何度も交渉再開に積極的な態度を示した。そして、日本ができる限り早期に交渉に関わる障害を取り除き、中国と向き合って進み、早期にこのメカニズムを構築し、運用することを望んでいる。このほか、中日はいずれも「洋上で不慮の遭遇をした場合の行動基準」の締約国であり、これは各国海軍艦船や航空機が偶然あるいは予期せぬ遭遇をした場合、不慮の事故を予防、回避するために取るべき原則と措置を明確にしている。これは平和な時期に各国が空海の軍事行為に対する誤解と誤った判断を減らすために重要な役割を果たすものだ。

 

長期的視野に立ち幅広く展望

 

 現在、両国の安全保障分野での意見の食い違いを減少させるのはたやすくない。しかし、われわれは絶対に紛争を増やしてはならないし、対立や衝突を引き続き激化させることはさらにあってはならない。例えば、南海問題はもともと中日間の係争点ではなかったが、日本が主動的に介入し、新たな食い違いにしてしまった。これはまったく不賢明なことだ。中日間の南海問題は第2次世界大戦終戦時に全て解決済みであり、日本は占領した島嶼を中国に返還した。現在、日本の貿易輸送量の85%が南海を経由しており、中国の南海を経由する貿易輸送量の比率は日本と肩を並べており、南海の自由航行権の擁護は、両国共通の利益であり、中国が南海の自由航行を損なうことなどあり得ない。事実上、南海を経由する日本の貿易輸送が妨害を受けたり阻害されたりしたことはこれまでなく、中国が南海の自由航行を尊重していないという主張には何ら根拠がない。日本は南海事務に関して中国を名指しで非難するのをやめるべきだ。両国が南海においていかに協力を進めるかを真剣に考えることこそが、より自由航行に、より南海の安定に、より南海紛争の平和的解決にプラスになる。また、目下THAADの配備をめぐって中国と米韓に対立が生じている時に、日本は言行を慎むべきで、無関係の紛争に勝手に立ち入ってかき乱してはならない。

 

 両国は健全な安全保障関係の発展を求めるには、さらに一歩進み、共に安全保障の利益を擁護し、新たな安全保障の協力点を探り、安全保障協力の新たな枠組みを構築する必要がある。安全保障分野で、両国には共に直面する課題が数多くある。例えば、災害時の救助・救済や人道主義援助の面で、両国の国防事務部門はすでに研究討論とシミュレーションを進めている。特に、海上の捜索・救援の面で協力できる機会は多い。8月11日、中国の漁船がギリシャ船籍の貨物船と衝突したが、日本の海上保安庁の巡視船が海に投げ出された漁民の救助を行った。中日は両国近海で連携して救援活動を行う海上パワーを有しているだけでなく、必要な時には海上での捜索・救助という公共財を地域のために提供することができる。このほか、貿易大国として、両国はシーレーンの安全を共に守るべきであり、条件が整えば、海賊退治、海上テロ攻撃対策、国際商船護送などは、いずれも考えられる協力内容だ。

 

 中日は共にアジアの大国であり、目下の困難を克服し、意見の食い違いを解決し、軍事的安全保障を含む良好な外交関係を樹立し、共にアジアひいては世界の安全と安定に積極的な力を果たしていくべきである。

 

 
 

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