両国関係発展にプラスエネルギーを

 

中国人民大学新聞学院院長、南開大学濱海開発研究院院長 趙啓正

 

 

  2005年に第1回の「北京-東京フォーラム」が開催された時、私は中国側呼びかけ人の一人だった。当時、中日関係は低調な時期にあり、中日双方の有識者は中日関係改善の使命感から出発し、温かな環境を作り中日関係を維持するため、積極的に「北京-東京フォーラム」を計画した。現在、私はフォーラムが11回行われたこと、また間もなく第12回を迎えるのを見てうれしく感じている。これは皆さんが長年にわたり共に努力してきた成果だ。

 

 過去11年の間に、中日各界の有識者は中日関係の前向きな発展を推し進めるために、フォーラムをプラットホームとして、長期的観点に立脚し、大局に着目し、目下両国関係に出現している新たな変化に対して多くの積極的で有益な知恵とアドバイスを提供し、同時にフォーラムがますます影響力を備えるようにし、より多くの新しい血を注ぎ入れた。私は「東京-北京フォーラム」が中日関係の中でプラスエネルギーの源となれるよう心から希望する。

 

新たな情勢に直面する両国

 

 06年以降、中日関係には温かさを取り戻す兆候が出現した。その主なものは政府レベルに表れ、中日間では一連の相互訪問、協議、会談が行われた。同時期の民間交流もとても活発だった。しかし、12年に日本が釣魚島「購入」事件を起こし、両国関係は急転した。

 

 この一、二年来、中日関係にはいささか改善があったが、新たな問題にも直面している。昨年日本では新安保法案が成立した。今年の参議院選挙で、憲法改正を支持する勢力が議席の3分の2を占めるようになり、憲法改正案が国会を通過する可能性が生まれた。これは戦後70年来日本が堅持してきた専守防衛政策が徹底的に変えられようとしていることを意味する。日本自身が戦争に巻き込まれるかもしれないだけでなく、アジアひいては世界の平和と安定がおびやかされようとしている。

 

 新たな情勢に直面し、「東京-北京フォーラム」は中日両国関係改善の希望を、より両国民に託している。しかし現在両国の国民感情の状況は良好というわけではなく、互いが相手に持つ不満の程度はかなり高く、その原因の大きな部分は互いに相手国の真実の民意を理解していないことにある。私は、両国メディアが中日関係の中で逃れられない責任を担っていると考えており、また一部メディアの無責任な報道は民意にマイナスの影響を与えていると考えている。

 

メディアが積極的役割を

 

 中日が複雑に錯綜する関係にある現在、メディアが責任をしっかり果たすことは、両国関係をポジティブに推し進めるものだ。しっかり果たさなければ、逆に関係改善を阻害する力になるだろう。私が特に指摘するのは、現在の日本のメディアの中日関係に対する報道の多くが、消極的態度を取っており、ひいては事実ではない報道さえ出現し、両国の互いの誤解を引き起こしていることだ。日本のメディアは報道の自由を名目に、読者の目を引きつけることを目的とし、事実を顧みないで報道を行うべきではない。このような歪曲された報道や偏った分析が、中日関係に破壊的な影響をもたらしているのはたやすく見て取れる。

 

 「南海仲裁案」を例にすると、日本のメディアはこの問題について紙幅を大幅に割いて長々と追跡報道を行い、日本の民衆の中国に対するイメージを低下させた。しかし事実上、日本政府は南海の地域外の国家として、南海問題への深い干渉には少しの道理も存在しない。こうした干渉は日本にいかなる直接的メリットももたらさず、中国と他の地域内国家の反感を引き起こした。その上、いわゆる「南海仲裁案」は合法性と公正さに欠けており、その仲裁結果は自ずと法的効力を有しない。日本のメディアはこうした時期にあって、より客観的で、公正な立場を示すべきであり、民意を扇動して話題を作るのではなく、冷静で理性的な態度を見せるべきだ。私は、日本のメディアがありのままに中国の実際状況を報道し、中日関係改善の責任を担うよう希望する。

 

 中国について言えば、メディアが両国関係に積極的役割を果たすよう奨励すべきである。国内の日本語メディアはより積極的な態度を取り、中日間に実際に起きた物語を多く報道し、両国の民衆を感動させ、中日友好に力を尽くすことを希望する。

 

 中日両国間の良好な世論環境形成のためには、双方が共に努力する必要がある。まず、両国メディアにはいっそう交流を強める余地がある。とりわけ、政府の交流が困難な状況下では、メディアの交流の重要性がさらに顕著さを増す。私は、「東京-北京フォーラム」のメディア分科会の交流だけではまだまだ不足だと考えている。中日メディアはそれぞれ比較的固定した交流対象を選んでもいい。観点が一致しなければ友人になれないわけではなく、観点が不一致でも、双方は率直に交流し、共通の目標を探し出すよう努力することができる。例えば中日友好促進面で積極的な役割を果たすなどだ。次に、中日の記者も相互訪問を増やし、相手国の国民の心の声を直接聞き、伝えるべきだ。

 

 中国人は一貫して「遠くの親戚より近くの他人」と考えている。中日は近隣として時折摩擦があるが、われわれは依然として「国の交わりは民の相親しむにある」ことを信じている。「北京-東京フォーラム」が設立されてから今日に至るまでの目標の一つが、すなわち両国民間の国民感情を高めることであり、これについて強烈な使命感と責任感を双肩に担っている。フォーラムの全ての参加者は疲れ知らずに、中日両国の信頼醸成と疑念の払拭に取り組み、意思疎通を強めるよう努力を続け、中日関係が最も低調な時期であってもあきらめることがなかった。私は、第12回「東京-北京フォーラム」で、皆さんがよりいっそうコンセンサスを追求し、より有効な方法を提起し、中日関係発展の推進のためにより多くのプラスエネルギーを提供するよう希望する。

 

 
 

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