3ステップで経済関係改善を

 

中国国際経済交流センター副理事長、元商務部副部長 魏建国

 

  

 

  現在、中日の経済・貿易関係は鍵となる時期にある。両国の貿易額はすでに4年連続して減少しており、今年日本の対中投資と輸出総額は2桁の落ち込みになるかもしれない。これは非常に憂慮される。

 

相互信頼の低下が原因

 

 中日経済・貿易関係の低下は、世界経済のマクロ環境の影響をある程度受けてのものだ。世界銀行はすでに前代未聞の、2度にわたる世界経済成長予測の引き下げを行った。予測ではあるが、これは将来の世界経済がより悪くなるかもしれないことを十分に物語っている。私は、世界経済の最も悪い時期はまだ到来していないと考えている。現状から見て、米国経済は回復が緩慢であるだけでなく、大統領選挙や人口減少の影響も受けおり、米国の預金金利引き上げは一貫して行われていない。世界的な範囲での失業率上昇、貧富差の拡大、通貨価値の下落、企業の負債といった種々の要素がいずれも世界経済の回復を緩慢にしている。特に指摘するのは、現在日増しに強まっている保護主義であり、これも来年の世界の貿易が依然としてマイナス成長で推移する状況を引き起こす要因になるだろう。

 

 われわれはさらに、ここ数年来の中日相互信頼の低下が、中日の経済・貿易に影響をもたらす重要な要素になっていることを見て取るべきである。両国の相互信頼度の低下は企業の経済・貿易活動を行うモチベーションに大きく影響している。以前、日本の企業家は対中貿易で一貫して積極的、主動的で、彼らには中国に市場があることが見えていたが、現在の日本企業はすでに中国市場が見えなくなっている。政治関係および一部メディアの世論の影響を受けて、彼らは中国経済が間もなく崩壊するかもしれないと考え、これによって中国市場に対する自信を喪失している。これは中日経済・貿易が深く発展するのを阻害する重要な原因の一つだ。

 

 日本政府は今、必ず右傾化主義の台頭傾向を徹底的に改めなければならない。もし、日本が釣魚島問題、南海問題、THAAD(サード)問題で引き続き中国に挑戦的態度を取り続けるなら、日本企業の対中発展のチャンスは全て失われてしまう。この数年、欧州、米国など先進国はいずれも中国に対する投資や貿易をいっそう拡大しているが、中国の改革開放以来、率先して中国に進出してきた日本は、逆に西側各国の後塵を拝することになっている。これは悲しむべきことであり、日本は再考すべきであるが、今改めればまだ間に合うとも言うべきだろう。

 

着実に段階的に進める

 

 中日の経済・貿易関係の現状を改善したいなら、私は双方が以下の3ステップをしっかり歩むべきだと考える。

 

 第1歩は以下の点だ。中日両国の有識者は循環経済、グリーン経済、健康・シルバー産業、新素材、新加工技術、新技術産業の発展上で現在すでに多くの共通認識を構築している。中日両国はこれらの分野で優位性の相互補完という特徴を持っており、双方の協力はウインウインを実現できる。将来、より大きな市場になり、日増しに成長する中間層の間では、高品質な製品やサービスに対するニーズも日増しに高まっており、中国の資金、市場を十分に利用して日本企業の先進技術の応用をよりいっそう拡大するのは、日本企業が願ってやまないことだ。両国は両国企業による上記の分野でのいっそうの協力をさらに推進すべきである。

 

 第2歩は、中日の経済協力上で、とりわけ日本の企業家は中国の現在の社会・経済発展のマクロ戦略を深く研究、把握することだ。中国は第13次5カ年計画期間(2016~20年)に、例えば京津冀(北京・天津・河北)一体化や長江経済ベルト、自由貿易区建設、「一帯一路(シルクロード経済ベルトと21世紀海上シルクロード)」などの重要戦略を制定している。これらの計画や措置は中国の社会や経済発展の様相を深く変えるもので、世界経済の発展にも重要な影響をもたらす。これらの戦略の実施は、日本企業にとってもチャンスであり、日本企業は注目を向けるべきだ。

 

 第3歩は、中日は経済・貿易協力で積極的に第三国市場を切り開くことだ。近年来、中国は米国や欧州などの国や地域の多くと新たな協力事業を行っており、中日がそれぞれのアドバンテージを生かして第三国や地域で協力を展開することは、双方にとって非常に利益のあることだ。しかし残念なことに、日本の比較的保守的な思想により、中日による第三国市場での協力は現在のところ少ない。これについて、われわれは注目を向ける必要がある。

 

 中日関係において、われわれはアジアあるいはより大きな範囲に眼差しを向けて考えなければならない。現在、世界経済発展のエンジンと市場はいずれもアジアにあるが、より重要なのはアジアのイノベーションであり、新技術、新素材、新加工技術、新理念はいずれも、すでに世界経済の中で大きな活力を見せているというべきだ。これも米国やEUがいずれもアジアに大きな精力を向け、アジアが彼らの利益のありかだと考える根本的な理由の一つだ。中日はアジアの二つの最も重要な国家・経済体として、長期的視点を持ち、協力・ウインウインを目指すべきだ。

 

フォーラムの役割に期待

 

 間もなく開幕する第12回「東京-北京フォーラム」は、中日間の数少ない、ハイレベルの、民間の、かけがえのない対話プラットホームだ。われわれはこうしたフォーラムを守り、支持すべきであり、またしっかりとこれを活用すべきである。「東京-北京フォーラム」は過去11年にわたって良好な役割を果たしてきた。私は、「東京-北京フォーラム」は中日有識者たちの思想がぶつかり合い、知恵の火花が飛び散らせ、問題を解決する場だと考えている。フォーラム参加者は十分に双方の利益となるところを宣揚し、共に中日の対立を解決する道を探るべきだ。

 

 中日関係のマクロ環境から見て、「東京-北京フォーラム」は今まさに力を発揮すべき時にあり、フォーラムとフォーラムの参加者たちは積極的に中日関係および中日経済の発展に建言・献策を行い、そこから中日関係の積極的な発展により大きな役割を果たすべきだ。これも私が一貫して期待し固く信じていることだ。

 

 
 

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