東アジアの安保情勢と中日安保協力

 

東京のホテル・オークラで行われた安全保障分科会で、十数人の中日両国の安全保障・防衛分野の専門家が一堂に会し、「東アジアの安保情勢と中日安保協力」という議題をめぐり、本音での交流を行った。期間中に、双方は何度も争議となるトピックについて弁論を展開し、100人余りを収容できる会場は満席となった。

朝鮮半島核問題、中日はウインウインを探求すべき

現在の北東アジアの安保情勢について言うならば、朝鮮半島の核問題は避けて通れない問題であり、これはまた、今回の分科会の両国パネリストが共に注目する問題でもある。口火を切ったパネリスト、元自衛艦隊司令官の香田洋二氏は、「朝鮮半島の核兵器と弾道ミサイル開発は、中国と日本どちらにとっても脅威だ」と語った。

中国側のパネリストもこれに賛同したが、具体的な対策については、違う見方を持っていた。中国人民解放軍軍事科学院中米防務関係研究センター元主任の姚雲竹氏は、「中国が朝鮮半島の非核化を要求する立場は変わることがない。しかし、米日韓の「高高度防衛ミサイル」(THAAD)の配備という行為は、中国に危害を及ぼす」と語った。

日本側パネリストは、THAADの配備は決して中国に向けられたものではないと発言した。元陸上自衛隊陸将の磯部晃一氏は、「私は中国がすぐに日本に向けて弾道ミサイルを発射することはないと信じているが、朝鮮に関しては、予測不可能だ」と説明した。

中国側パネリストは、軍事対抗のエスカレートではなく、6カ国協議を復活させることにより平和的に朝鮮半島核問題危機を解決すべきだと主張した。中国空軍元副司令官の陳小工氏は、「今に至るまで6カ国協議は成功しておらず、それはチャンスを逃しているわけではない。中国側はとても大きな努力をしているが、多くのチャンスは最後に米国によって潰されている。思い返してみれば、朝鮮半島核問題が今日まで発展してきて、誰が最も利益を得るのか。米国が最も利益を得るのだ」と指摘した。

中国国際戦略研究基金会学術委員会主任の張沱生氏は、「中日の有識者は共に努力し、6カ国協議をなるべく早く復活させるようにすべきだ。半島で起こり得る突発的事件に対し、意思疎通を維持できれば、摩擦防止になる」と提案した。

南海問題は当事国が解決

数人の日本側パネリストは、南海紛争に対し憂慮を示し、日本側の航行権を保障する必要があると公言した。元自衛艦隊司令官の泉徹氏は、「日本の輸出入貨物の多くは南海を経由しているため、中国側が南海地区の秩序を変えようとするやり方に対してはとても不安に思える」と語った。

姚雲竹氏はそれに応えて、中国には南海の軍事化の意図はなく、中国は南海を友好協力の海にしようと希望していると語った。

中国側パネリストの中国社会科学院日本研究所研究員の呉懐中氏は、「南海と日本は何ら関係がないとは言えないが、より正確に言えば、日本は紛争の当事国ではない。もし日本と米国の軍艦が頻繁に敏感な水域を巡航するなら、中国側は不満に感じる」と補足した。

元防衛審議官の徳地秀士氏は、中国側は心配し過ぎであると考えており、日本は南海問題に関わっている余裕はなく、米国が求めなければ巡航に参加することはないと語った。

中国社会科学院海洋法と海洋事務研究センター主任の王翰靈教授はそれに応えて、「紛争は紛争当事国で決定すべきだ。今では米国はすでに南海問題については触れなくなっているし、ベトナムやフィリピンも中国と協力について話そうとしているのに、日本はいまだ南海問題について騒ぎ立てつづけている。日本が言葉や行いを慎み、再び南海問題を取り上げないことを希望する」と語った。

東海を協力の海に

意外なことに、2012年以後、ずっと中日問題を困難に陥れてきた東海問題について、双方のパネリストはみな楽観的な見方をし、協力の願望を示した。

姚雲竹氏は「現在の中日間の最大の問題はやはり釣魚島問題だが、この問題は最近、積極的な進展があり、中日が防衛事務部門間にホットラインを設置することができれば、釣魚島の情勢はしだいに緩和してくるものと私は信じている」と語った。

京都産業大学の東郷和彦教授は、「多くの人は釣魚島が中日の武力衝突を引き起こすと考えているが、私はそれには道理がないと考えている。安倍政府が多くの知恵をしぼり、われわれが頭を働かせれば、この問題は回避することができる」と語った。

張沱生氏は、中日はなるべく早く中日海空連絡メカニズムをスタートさせ、摩擦を防ぎ、積極的に防衛事務折衝を推進すべきだ。そしてなるべく早く、中日の重大な軍事活動に関する相互通報メカニズム樹立を日程にのせるべきだ」と提案した。

この提案は日本側パネリストの積極的な反応を引き起こした。元外務審議官の田中均氏は、「現在、中日両国は信頼を欠いているため、われわれは中日の共通の利益についてさらに一歩踏み込んだ討論を行うべきである。立場が違うのであれば、さらに共通の利益を探し求め、ウインウインの関係を樹立する必要がある」と語った。

期間中、双方のパネリストはさらに国際テロ対策協力や集団自衛権の行使解禁などの話題について深く切り込んだ交流を行い、何度も観衆からの喝采を浴びた。

 

 

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