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ウルングル湖と湖畔の白い砂浜。この湖は北疆で冷水に棲む魚がよく獲れるところである |
天池から国道216号線を北上し、カナス湖へと向かった。その距離は900キロ近い。長旅だが、沿道の風景は美しく、旅人の目を楽しませてくれる。
途中、グルバンテュンギュト砂漠の奥に位置する火焼山を訪れた。この山は一本の草を生えていない。砕かれた石が露出していて、全山、赤褐色か赤い色をしている。厳しい日差しに照らされて、熱波が絶え間なく押し寄せ、深紅色の煙雲が立ち昇り、あたかもゴビのすべてが燃えているようだ。
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火焼山の赤い土と青い空、黒い道路が続く |
モンゴル国から天山南路にかけての一帯に広がる土と砂礫の大地であるゴビは、人はほとんど住んでいないが、動物は非常に多い。火焼山から北に少し行ったところに、カラマイリ有蹄類野生動物保護区がある。ここには野生ウマや野生ロバ、コウジョウセンガゼル、野生ヤギ、イノシシなどがいる。
中でももっとも貴重なのは、プシバルスキーウマ(モウコノウマ)である。これは頭が大きく、脚は短く、姿はアニメに出てくる野生のウマのようだ。新疆・ジュンガル盆地の原産で、厳しい砂漠やゴビの環境での生活に慣れており、国の一級保護動物である。現在は、野生のプシバルスキーウマはすでに絶滅した。このため外国の動物園から帰ってきたプシバルスキーウマがカラマイリに放され、それが繁殖して、現在四十数頭になっている。
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カザフ族のパオの内部 |
ブルルトカイ県に着き、一泊した。ここは北疆のアルタイ地区に属し、ウルングル湖のすぐ傍らにある。ここに住むカザフ族は、客をもてなすのが好きな人たちである。ここには「全魚宴」という新疆独特の料理があり、フルコースでは十数種類の料理が出る。魚はすべて現地でとれた冷たい水に棲む魚で、料理は見た目も美しく、美味しい。
カザフ族の人々は元は草原の遊牧民族であった。近年になって多くのカザフ族が定住を始め、牛や羊を飼育するようになったが、豪快で客好きな彼らの性格は少しも変わっていない。知り合いであるかどうかを問わず、彼らはできる限りの心のこもった接待をする。
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道端で遊ぶカザフ族の子どもたち |
カザフ族の風習では、客が家に来ると、主人はテーブルクロスを広げ、ミルク茶やナン(平焼きパン)、新疆チーズ、バターを出して客にすすめる。その後、多才多芸な主人は、伝統楽器のドンブラ(マンダリンに似た二弦の楽器)を弾き、民謡を歌い、笑い話や謎々をし、客と主人の感情を和ませてから正餐をとる。
カザフ族の人々は、羊や牛、馬の肉を好んで食べる。客が来ると、少なくとも一頭の羊を屠り、款待する。客には羊の頭と尻の肉やスペア・リブなどもっともおいしい肉を出し、尊敬を表す。肉を食べ終わり、肉のスープを飲み終えると、主人はさらにミルク茶とお菓子を出して接待する。このころには、お腹が丸く膨れてしまうが、それが主人に対する客の敬意を表すことなのである。
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