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世界遺産登録を目指す 「中国南方カルスト」の奇観

自然に優しいハイテクで捲土重来

水の底に沈む木が見える澄みきった湖(茘波)


 雲南省の省都昆明から約80キロの所にある石林は、早くから観光地として国内外に知られている。

 昨年9月、石林風景名勝区内に阿詩瑪生態文化園がオープンした。「阿詩瑪」とは、この地域に生活する少数民族イ族の伝説の美女のこと。現在でも美しい女性を指して使われるイ族の言葉を冠して作られた園内にある石林旅客センターには、地質博物館が設置されている。カルスト地形がいかに形成されたかという過程から、そこに生きる植物、生物、生態系を解説する展示が並ぶ。石林のみならず茘波や武隆を含む南方カルスト全般に関する写真、影像、地図、中英二カ国語の説明で総合的に丁寧な紹介がされており、一見に値する。

人に優しく、自然に優しい「生態トイレ」(石林)


 また、ここで誰もが感嘆するのは「生態トイレ」だろう。微生物の力で排泄物を分解し、自然採光が生かされ清潔で明るく、子供用トイレやヘアドライヤーなども備えられた、人に優しく自然に優しいこのトイレは、風景名勝区内に数カ所設置されている。このトイレに代表されるように、一級から三級に分けられた保護区では観光客が入れるエリアを限定し、ハイテクのマネージメントシステムと400人以上のスタッフによるネットワークで環境管理と自然保護に全力を挙げる。80年代や90年代前半にこの地を観光で訪れた人がこの現状を見たら、あまりの変化に目を見張るに違いない。

中国人なら誰もが知っている悲恋の伝説「梁祝」の愛し合う二人になぞらえられる岩(石林)


 実は、石林は過去に単独で中国の「世界遺産暫定予備リスト」にリストアップされ、1991年に正式に世界自然遺産への登録を申請している。しかし、翌年IUCN(国際自然保護連合)の現地視察が行われた後、各方面の準備が不十分であることが問題視され、最終的に申請を撤回した経緯がある。石林風景名勝区管理局・観光局の李正平局長は振り返る。

 「都市に近く、自然の美しさと少数民族文化が注目され、早くから観光地として開発が進んでいたために、自然保護の点からは問題もありました。何より、世界自然遺産に関する国際交流経験も他国の研究もほぼ皆無だった状態では、無謀なものでした」

色鮮やかな「五色梅」などさまざまな美しい植物にも出会う(石林)


 その後、現地政府は観光開発以上に環境保護に重点を置き、ヨーロッパの国々やブラジルなど海外のカルスト地形も視察、研究し、過去の教訓を胸に再挑戦を図った。

 92年から14年間という歳月を経て、再び世界遺産登録に挑む雲南・石林の経験に基づく自信と意気込みが、南方カルストとしてともに挑む貴州、重慶を牽引する。

☆ ☆ ☆

硬い石の表面に走る横一線のラインは、かつての水面を示す(石林)



 「南方カルスト」と一口にいっても、重慶、貴州、雲南、それぞれが広大な面積を有し、異なる地形、気候の中に異なる民族、多彩な文化が生きている。そんな三つの地域とそこに生きる人々が心を一つにして、世界自然遺産登録を目指し、自然との共存の道を探ってきた。この軌跡が、この6月下旬、第31回世界遺産委員会の決定にまっすぐに続いていることを、誰もが固く信じている。

ガイドをしてくれる民族衣装を着たイ族の「阿詩瑪」(石林)


 「世界遺産登録に向けた努力の過程そのものが、私たち一人一人に自然保護の意識を植えつけ、浸透してゆく意義のある過程です」と語ったのは武隆県政府関係者。各地の人々に共通する思いだ。

 世界遺産の登録の可否の決定は6月末。しかし、決定如何に関わらず、その切なる願いに応えて与えられた大自然というご褒美は、その地に暮らす人々だけのものではなく、紛れもない人類の宝物だ。  (泉 京鹿=文 泉 京鹿 カク慧琴=写真)

メモ「中国南方カルスト」は、2006年中国政府が申請した唯一の世界自然遺産プロジェクトである。雲南石林の剣状、柱状、塔状カルスト、貴州茘波のカルスト原生林、重慶武隆の天 、地縫、天洞などを主とするカルストで構成されている。50万年から3億年の間に形成されたもので、長江三峡の形成過程などを知るうえで、貴重な地質学上の証拠となっている。


人民中国インタ-ネット版

 

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