手工芸がもたらすやすらぎの世界
安らぎをもたらす自然の世界
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ミャンマーの伝統的な糸つむぎ | 昔ながらの伝統的な方法で糸を染める工程 |
大メコン川流域では、手工芸品の原料はみな大地のめぐみである。ベトナムは地形が細長く海に臨んでいるため、職人たちは海から取った貝殻を、切る、つなぎ合わせる、磨く、はめ込むなどしてさまざまにデザインし、広く知られる螺鈿芸術を創り出した。また、ベトナムの漆絵もよく知られている。ベトナムの画家は常に生漆と松脂で透明の精製漆を調合する。ベトナム語の直訳では「ゴキブリの羽色漆」という。精製した生漆を用いることで、新鮮でいきいきと美しく、優雅で上品なベトナムテイストの漆絵をつくることができるのである。
ラオスでは、都市と農村のいたるところで、天然の紙でつくられた製品を見ることができる。その品質は、ラオスの人々のごとく、素朴で、軽やかで、しなやかである。
人々はまた、地元のさまざまな植物繊維で器具や生地をつくる。紡績は人類最古の手工芸であり、大メコン川流域の各国にそれぞれ特色ある織物があり、女性たちの知恵が反映されている。
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長い間受け継がれてきた布を織る技術 |
ミャンマーには、湖に育つハスからつくられる非常に貴重な手作りの織物がある。地元の人はハスから糸を抽出し、揉んだり、捻ったり、紡だりすることで、布を織ってゆく。最後に、完成した布を染め、袈裟にしてもらうために高僧に献上する。世界でここだけの貴重な織物であるこの袈裟は、ざらついて重たそうに見えるが、実際は、軽くて柔らかく、とても涼しく着心地がいいという。
メコン川流域において、人々の手工芸の世界とは神々にささげるものであり、宗教生活と密接に結びついている。人々は心血と知恵を神仏に奉納することを望んでいる。神のためのものづくりの過程は、自身の修業の過程でもある。寺院も神殿も、手工芸の伝承にとって何より重要な場所なのである。
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漆鉢をかかえる沙弥たち |
調和のとれた手工芸の世界は、居心地がいい。
夕方になり、鄭さんの孫が学校から帰ってきた。孫とその遊び仲間たちはつくりかけの唐傘を取り囲み、いかにして竹のバネを傘に仕掛けるかという鄭さんの説明を聞いている。鄭さんは微笑みながら語りかける。
「しっかりと、ゆっくりと覚えなさい。大きくなったら覚えた通りにやってみればいい。これは古くからの伝統なのだから、しっかりと学びなさい。この技術を失うようなことがないように」 (文・写真=李暁山)
人民中国インターネット版 2009年4月29日