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気丈に勤勉に優雅にメコン川の女性たち

 

美しい風景にとけこむ女性たち

瀾滄江―メコン川の流れる土地を歩くと、思わず女性たちに目がいく。そこを離れたあとでも、彼女たちの美しい姿は脳裏に深く焼きついている。路頭でフルーツ・シャーベットを売っていても、舳先で櫂を漕いでいても、あるいは畑で刈り入れをしていても、王宮の前で踊っていても、女性たちはみな穏やかな優しい微笑みを浮かべている。おっとりとした口調で、身のこなしもしなやかに、すばらしい風景にとけこんでいる。彼女たちがいなかったら、この澄みわたった空もきらびやかな大地も、色あせてしまうことだろう。

田畑で働くベトナム女性

ここでは今なお古い習慣が残り、女性たちは依然としてその土地の古くから伝わる、優雅かつ独特な伝統を守り続けている。

顔に「タナカ」をつけたミャンマーの女性は、とても印象的である。「タナカ」とは現地産の月橘の樹皮をすりおろして作った粉で、日焼け止め効果があり、虫刺されを防ぎ、炎症を抑えることができる。「タナカ」をつけているミャンマーの女性からは、ほのかな香りが漂う。「タナカ」は彼女たちの日常の基礎化粧品で、粉になったものをどこでも購入できるが、樹皮を売っている店もあり、それを購入して自分で粉にすることもある。ミャンマー女性の風情をもっとも体現するのが、まるで彼女たち自身のトーテムであるかのように、顔にさまざまな模様を「タナカ」で描くことなのである。

瀾滄江―メコン川流域の女性は、姿態をとても大切に考えている。タイの女性が合掌して軽く頭を下げ、ささやいて挨拶する姿は、非常になまめかしい。タイでは女の子は伝統的な古典舞踏を学ぶことによって、礼儀正しい上品な身のこなしを身につける。この舞踏は古代インドにはじまったもので、千パターン以上もある手の動きで、さまざまな意味を表現する。

顔に「タナカ」をたっぷり塗ったミャンマーの女の子 船でタイの軽食を売る女性

この地域の女性はよく通る声で、しなやかで美しい姿で踊る。これらの音楽と踊りは彼女たちの生活をもとにして創作されたものもあれば、古代の伝説の女神に由来するものもある。

女神たちの姿はアンコール王朝の宮殿の石壁に刻まれ、いまなお光り輝いている。しなやかな姿に、たおやかな微笑みをたたえた女神たちの彫刻は、衣装までもが華やかで美しい。言い伝えによると、これらの有名な女神像は髪型だけで36パターンある。それをじっくりと眺めたあと、再び現実に目を向けると、石壁に刻まれた女神たちは、メコン川沿岸に暮らす地元の若い女性たちがモデルであるに違いないという気がした。

ネストーさんの物語

アンコールの石壁に刻まれた精巧な彫刻には、古代の生活と男女の美しさが描かれている。その技術は現在まで受け継がれている。ネストーさん(79歳)もその継承者の一人である。

彼女はカンボジアで広くその名を知られる銀器作りの大家である。12歳の時、両親に銀器作りを学んで以来、その生涯を銀器工房で過ごしてきた。ネストーさんの銀器作りの手法とそのスタイルは、古代クメール文明やアンコールの彫刻から受け継がれている。優れた技術で知られる彼女は、同じ銀職人である男性と結婚し、6人の子どもに恵まれ、銀職人一家として幸せに暮らしていた。

カンボジアの銀器作りの大家ネストーさん ネストーさんが作った銀の仏像

しかし、この幸せな生活は煙のように消えてしまった。30年前のポル・ポト政権時代、ネストーさんの夫と子どもたちは殺され、彼女だけが難を逃れて生き残った。その後プノンペン近くの村に流れ着き、ようやく落ち着くことができた。その悲惨な時代には、知識があること、カンボジアの文明を継承していること、はなはだしくは単に眼鏡をかけているというだけで、殺される理由になった。そのため、ネストーさんのようにカンボジアの古代文明の継承者は、その時期を境にほとんどいなくなってしまった。

ネストーさんには、古代クメールから伝わる技術を継承し、広めてゆきたいという思いがあった。彼女は、代々伝えられてきた技術を無償で村人たちに教え、すでに100人以上の銀職人を育てた。ここはかつてはなんの変哲もない村であったが、今ではカンボジアで「銀器の郷」として広く知られるようになった。彼女の家は大学のようになり、全国各地から学びたいという人たちがやって来る。

ネストーさんは、女性の弟子をとることをとりわけ喜ぶ。彼女は若い女性たちに常に言い聞かせる。我尽量挑挑,如果能差不多到100的话,我就今天拍

「あなたたちがいま学んでいる彫刻の技術は、とても役立つのよ。将来、結婚して子どもを生んだ後でも、家族を養っていくことができるのだから」

現在でも彼女は自ら銀器を作り、弟子たちに手本を示す。

手が空くと、彼女は暗い部屋の中の竹むしろに静かに腰を下ろし、夫と子どもたちの写真を繰り返し眺めては、まるで生身の彼らに触れているかのように、その写真を繰り返しそっとなでている。自分と国が経験した苦難を思い出しては、声をつまらせ、涙をこぼす。

道を急ぐミャンマーの女性 アンコールの女神の彫刻

しかし、部屋の外に出れば、彼女は人々の尊敬を集める銀器作りの大家であり、徳望高く、親切でやさしいネストーさんになる。彼女は人々の誇りである。

ネストーさんは敬虔な仏教徒であり、毎日手を合わせて平和を祈っている。また自分の手で作った多くの銀の芸術品を、村の近くにある寺に寄贈している。

瀾滄江―メコン川流域の女性は、手作りで心の感情を表すのを得意としている。数年前、ネストーさんは自らの生涯でもっとも重要な作品と位置づけられる――高さ1.6メートルの銀の仏像を寺に寄贈した。この仏像には彼女の平和と平穏への願いが託されている。私たちを案内しながら、彼女はその仏像に手を伸ばした。

「カンボジアには、このような仏像を造れる人はほかにはいないようです。・・・失礼します。ちょっとこの仏像を抱かせてください」

この土地に暮らす女性は一見するときゃしゃでか弱げではあるが、同時にきわめて気丈で強靭である。

 

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