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黄金とルビーとそして信仰

 

 

ヤンゴンのシュエダゴン・パゴダ

神から賜った宝物

大地の鉱物は古来より人類の富であった。人々は埋蔵されている石炭と石油でご飯を炊き、暖を取る。また、石に含まれる金属を製錬し、生活道具や武器をつくる。貴重な金属は貨幣や装飾物としても使われた。

地質学でいうヒマラヤ造山運動とは、インドプレートが北に押し寄せて激しく動いたことにより、青海―チベット高原が世界一高い高原となった過程である。この造山運動はアジアの地理環境に大きな影響を及ぼし、またそこにある複雑な構造の岩漿帯のおかげで、ヒマラヤ山脈の東南側に流れるメコン川流域に豊富な鉱物資源が生まれることになった。

大メコン川流域は、これまで230種類を超す鉱物資源、1100余種の鉱床が発見され、世界的にも有名な、錫、ニッケル、ルビー、サファイア、カリ岩塩、石油、天然ガスなど鉱物資源の集中している地帯である。ほかにクロム、チタン、鉄、銅、コバルト、タングステン、金、希土類金属、リン、石炭およびそのほかの非金属鉱産物の産出量も、アジアで重要な地位を占めている。

銅は人類が最初に使用した金属である。瀾滄江―メコン川流域に存続する古青銅文化は2300年前にさかのぼることができる。

1975年、雲南省楚雄イ(彝)族自治州の万家壩古墳群から四つの銅鼓が発見された。考証によると、古墳群は春秋時代(前770~同476年)の後期から戦国時代(前475~同221年)の初期に建造されたものであるという。そこから、雲南の人々が2000年あまりも前から青銅の製錬を始め、精緻で美しいさまざまな青銅器を作り上げていたことがわかる。

青銅の製錬と製造は文明の進歩を示した。人々は銅で農具や武器をつくり、食べ物を手に入れ、自分の身を護った。昆明の近くにある滇池平原は瀾滄江―メコン川流域の青銅文明が起こった地の一つである。精巧で美しい図案が描かれた古代雲南の国である古滇国の青銅器に、当時の人々の生活がリアルに記録されている。不思議なことに、そのうちの多くの生活風景が今なお流域周辺各国に見られる。

古滇国から出土した 「三騎士銅鼓」(新華社) 黄金で装飾されたカンボジアの王宮

銅鼓文化は中国雲南省、広西チワン族自治区、ベトナムの大部分の地域、及びラオスなどメコン川流域の広大な地域に分布している。銅鼓ははじめ、炊事道具であり、歌や踊りの伴奏をする楽器でもあった。のちに祭祀や祝典などの儀式に用いる器に昇格、さらに部落の首領が人々を集める際にも用いられた。中国の古い書籍にある「山林にて鼓を撃てば、群蛮ことごとく集まる」の記載があるのはまさにこのことである。やがて、銅鼓が権力の象徴となった。「鼓を二三得れば、すなわち王の号を僭称すべし」

古滇国の銅鼓はまた「貯貝器」(貝を貯える器)に移り変わっていった。古代のこの地の人々は貝を貨幣として使用していた。青銅製の「貯貝器」が多ければ多いほど、それ相当の富があったことを意味した。当時、巨大な、あるいは精美で複雑な青銅器を製造できるということは、優れた技術を手に入れたのと同様、国の強大さと財力の豊かさを象徴した。銅鼓や銅製器具、武器の数が、実力や権力を左右した。銅こそが富であった。

古代にせよ現代にせよ、鉱物資源は戦略物資であり、国の財産である。大メコン川流域の人々は、自分たちの生きる大地に埋蔵されている豊富な鉱物宝庫を誇りに思っている。

ベトナム北部の炭層は、長さ150キロメートル、厚さ20~28メートル、埋蔵量が約36億トン、そのうち露天掘りができるのは2億トンである。クワンニン省ハロン市のホンゲイ炭鉱は東南アジア最大規模の炭鉱であり、灰が少なく、高カロリーの無煙炭の産地で世界的に知られ、その無煙炭はベトナムの著名な輸出品となっている。ハロン湾のすぐ近くにあるため、この上質な石炭は採掘後直接貨物船に積み込まれ、世界各地に運ばれていく。

中国雲南省の個旧は、錫の産地として知られている。錫は銅と同様、人類がもっとも早い時期に発見し、使用してきた金属である。個旧における錫鉱の採掘史は、紀元前25年までさかのぼることができる。現在、個旧の錫産量は全世界の22%を占め、世界最大級の錫生産地となっている。

実は、大メコン川流域のほとんどの国では、地質調査と鉱産物の開発があまり進んでおらず、鉱業探査も生産もエネルギーの貯蔵量に比して遅れている。

現在、流域の国々はそれぞれ国外から資金を集め、技術を導入することに力を注いでいる。

 

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