希望を育む豊饒の大地
天と地に永遠を祈る
ベトナムのティンザン省には5万5000ヘクタールの農園があり、ベトナムの果物総生産の60%を占める年間250万トンの生産量を誇っている。ティンザン省にあるさまざまな水上市場には、ある古くからの伝統が守られている。舟に竹ざおを挿し、そこにその日売っている果物をぶら下げるという伝統である。こうすることで、どの舟が何を売っているかが、遠くからでも一目瞭然になる。
その日、ダン・バン・ドンさんが舟にぶら下げたのはスイカである。最近は、主にスイカを売っているという。
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カンボジアの道路沿いで暮らす家族 | 川で洗濯をするミャンマーの女性 |
ダンさんは果物の卸売り業者であり、利益率は高いとはいえないが、食うには困らない。これが大メコン川流域各国の人々に共通の生活状況である。彼らは金持ちではないが、豊かな土地で暮らしている。マンゴーやパパイヤを売るベトナム商人は、毎晩売れ残った果物を持ち帰ることなく、そのままゴミとして捨ててしまう。果物があまりにも安いため、人件費や運賃の方が高くなってしまうからである。
大メコン川流域の多くの農民は、野菜畑を持たない。食事の前に、主婦たちは家の近くの緑や黄色や赤い葉を摘み、それを料理する。家の前にパパイヤの木を植えれば、一年中果物にも野菜にも困ることはない。また、マンゴーやヤシの木も植えれば、わざわざ買わなくても済む。米は家の前の小さな田んぼで育む水稲で家族の食事には十分であり、家の裏にある川で魚を捕まえれば、さらに食卓が豊かになり、栄養も足りる。
豊饒の天国
ここには、のんびりとした暮らしがある。この地の人々は、中国の農民のように体中が痛くなるほど夜遅くまで働かなくてもいい。熱い日差しの下でたっぷりと汗を流したら、ゆったりと日陰に身を寄せ、神から賜ったものを楽しめばいい。神様、この豊饒の大地をお守りください。永遠に酸性雨など降りませんように。永遠に川がきれいなままでありますように。永遠に砂漠化するようなことがありませんように。
ここははるか昔からずっと、豊饒の美しい大地である。
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ベトナム名物の春巻 |
ホーチミン市の市場で、パラミツの皮をむいている果物売り |
五つの舟を持つダンさん一家も、これまでどおり、これからもずっとメコン川で暮らしてゆく。舟は果物を売る店舗であり、倉庫であり、またキッチン、ベッドルーム、リビングルーム、トイレでもある。船の上で暮らす彼らは、陸上での生活を望んでいる。水上生活は最後に落ち着くところではない。
ダンさんと妻は、陸上に自分の土地を持ち、一戸建てで老後の生活を送りたいと考えている。しかしその夢を叶えるためには、多くのお金が必要である。ここの果物は安くてよく売れるが、陸上から水上へ売り、さらに水上から陸上へ売ったりすれば、儲けはない。
瀾滄江―メコン川の両岸には、極めて豊かな果物や農産物資源に恵まれている。しかし、今までどおり地元の消費だけをあてにしていたら、なかなか夫婦の願いはかなわないだろう。経済のグローバル化や社会の発展に伴い、この地の人々も熱帯の果物の栽培、加工、輸出の産業化を図りつつある。近い将来、ダンさんも外国のバイヤーと取引ができるようになるかもしれない。そしていつか、念願のメコン川河畔の一戸建てという夢も叶うことだろう。
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