立冬小雪 迫る冬の足音
立冬
プロフィール
黒龍江中医薬大学、漢方薬薬理教育研究室副主任、医学博士。漢方の食事療法、養生の研究に従事、黒龍江漢方医薬科学技術進歩一等賞を受賞。
今年は、11月7日が立冬である。中国の民間ではこの日を冬の始まりとする。「立は、始まりなり、冬は終わりなり、万物の収蔵なり」。すなわち、一年の耕作が終わり、作物を刈り取った後、倉庫に収めるという意味である。
●立冬の節気と民俗
立冬と立春、立夏、立秋をまとめて「四立」と呼び、古代、中国では立冬が非常に大切な節気であった。この日になると、皇帝は自ら文武百官を率いて都の北郊に祭壇を設けて祭祀を行った。その厳粛で壮大なさまは、格別なものであった。最近、みんなも伝統的な節気をますます重んじるようになってきた。立冬には、どの家も習わしどおりにそれを祝う。中国の南方では、立冬に鶏肉やアヒルや魚を食べる。北方、特に北京や天津あたりの人のおすすめは餃子だ。
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立冬の日に餃子を食べるのは伝統的な習俗である。子どもたちに餃子の包み方を教えている老人(新華社) |
餃子といえば、中国の「医聖」と称えられる張仲景氏の「祛寒嬌耳湯(耳の凍傷を防ぐ効果のあるスープ)」を紹介しなければならない。伝説によれば、後漢の末、張仲景は長沙の太守(県知事のような官職)を退官して帰省した。ちょうど冬至のこの日熱病が流行っているのに出くわした。飢えと寒さのため、両方の耳が凍傷になった多くの民衆を見た。そこで、診療用の小屋掛けをつくり、大鍋を用意し、羊肉と唐辛子と寒さを除き体が暖まる薬剤を入れて煮込み、それを餡にして小麦粉で耳の形に包んでよく煮込んだ後、スープを加えて貧しい人々に配った。冬至から大晦日まで人々はこのスープを飲んで熱病を抑え、耳の凍傷も治ったという。この後、後世の人々は作り方をまね、これを「餃耳」あるいは「餃子」と呼んだ。地方によっては、「扁食」または「烫面餃」ともいわれる。
冬の到来を意味する立冬になると、露わになっている耳は凍傷になりやすい。耳を養うために、耳の形に似ている餃子を食べて、耳を守るというのが家族へのもっとも暖かい心配りではないだろうか。
●立冬の養生
立冬に入ると、中国の北方のほとんどの地域は暖房が入る。長い冬、気候はもとより十分乾燥しているのに暖房で一層乾燥する。人はよくのぼせたり、呼吸系の病を患ったり、皮膚がざらざらしてしわになったり、ひどい時は赤切れする。科学的な研究によれば、人間の生活にとって最適な湿度は40~60%だという。したがって、冬は例えば、室内にスイセンなどの草花を置いたりして湿度の調整に気を配る。
他にも、夜寝る前にぬるま湯に足を浸してから、足底の中心を強く揉めば、足の汚れを除き、寒さを押さえ暖まるだけではなく、腎臓を補い体質を強め、疲労を取り除き、睡眠を促進し、延命し、または、風邪の予防や冠状動脈性心臓病、高血圧などの症状に効果がある。もしカンゾウとエンゴサクを煎じた汁を洗足の湯に加えれば、霜焼けを防ぐこともできる。