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帰ってきた人気ドラマ『将愛情進行到底』

 

文・写真=井上俊彦

「今、中国映画が絶好調です。2008年には43億人民元だった年間興行収入は、10年には101億と急上昇、公開本数も増え内容も多彩になっています。そんな中国映画の最新作を実際に映画館に行って鑑賞し、作品だけでなく周辺事情なども含めてご紹介します」

雪の日にカップルに囲まれて見る「情人節」映画

故宮をはさんで東の王府井が外国人や国内の観光客に人気の商業エリアだとすれば、西単は地元っ子でにぎわう繁華街。デパートや大型書店、ファッションを扱うショップなどが並びます。2月13日(日)は中国で「西洋情人節」(「情人」は恋人の意味です、念のため)とも呼ばれるバレンタインデーの前日ということで、折からの雪にもかかわらず街には多くのカップルが繰り出していました。

北京を代表する映画館・首都電影院もこの街の大型商業ビル内にあります。ここは13のホールを持つ巨大シネコンで、設備も整っており、大作のプレミアショーなどもよく開かれる格式ある映画館です。それだけに、雪でも午前中からカップルや家族連れが押し寄せ、チケット売り場には長蛇の列。私も20分並びようやくチケットを手にすることができました。

さて、この日のお目当ては前日が初日の『将愛情進行到底』。窓口で「次の回だともう端か最前列しかないですよ」と言われたことからも、たいへんヒットしていることが分かります。1998年にオンエアされ人気だった同名の青春ドラマを、後日談という形で映画化したもので、主演もドラマと同じくシュー・ジンレイ(徐静蕾)とリー・ヤーポン(李亜鵬)です。

作品では卒業後10数年を経た2人の間に起こる物語が描かれます。おもしろいのは、監督が観客に3つの「現在」を提示していることです。まず、2人は実はその後結婚していて、夫の楊崢はある日妻の文慧のことが分からなくなり家出するというストーリー。次に、クラス会で卒業以来初めて再会した2人は仕事も家庭もうまくいっていなかったというケース。そして10数年ぶりに彼女が突然外国から電話をかけてくるところから始まる物語の3つです。

シュー・ジンレイの魅力満載

監督の張一白は、本木雅弘とヴィッキー・チャオ(趙薇)が共演した『夜の上海』(2007年)の監督としてご存知の方も多いでしょう。彼はテレビドラマ版『将愛情進行到底』の監督であり、映画初監督作『恋する地下鉄』(2002年)でもシュー・ジンレイを主人公に起用しました。さらに、昨年シュー・ジンレイが監督した『杜拉拉昇職記』(日本上映時タイトルは「上司に恋する女」)でスーパーバイザーを務めるなど、彼女を最も理解している監督と言えるでしょう。このためか、作品の随所に彼女の美しさ、魅力があふれています。3つの異なった現在を演じるため、さまざまな表情やファッションを見せてくれますし、ドラマのシーンも回想としてインサートされますので、清純な少女から成熟した女性への変化を感じることができます。

相手役のリー・ヤーポンは、日本では出演作の公開が多くないのでご存知ない方もおられるかと思いますが、武侠ドラマ『射雕英雄伝』でヒーローの郭靖を演じるなどテレビや映画で活躍する人気俳優で、歌手フェイ・ウォン(王菲)と結婚していることでも知られます。この作品では、抑制のきいた演技で彼女を引き立て、失われた時間について観客に考えさせています。

それにしても、インサートされたドラマシーンを見ると、中国社会のこの10数年での大きな変化を感じないわけにはいきません。さらに、おじさんくさい感想ですみませんが、となりのカップルのいちゃいちゃぶりからも、若者が大きく変わったことを見せつけられました(苦笑)。監督は、急激に発展する現在の中国では、人が変わる可能性の幅も広いのだということを、3つのストーリーという形で見せたかったのではないでしょうか。そして、変わらないものもあるということを…。

なお、この時期にはほかにも『我知女人心』(アンディ・ラウ、コン・リー主演)、『我们约会吧』(アニー・ウー、デニス・オ主演)などの恋愛ものが公開されていましたが、『将愛』が圧倒的な人気だったようです。

西単の街角には、バラの花を売る人たちもいて、バレンタインデーらしい雰囲気を感じさせてくれた 北京でも新しい映画館はみなシネコンになっており、首都電影院もショッピングセンターに併設されている
データ
将愛情進行到底
監督:張一白
出演:リー・ヤーポン(李亜鵬)、シュー・ジンレイ(徐静蕾)、ワン・シュエビン(王学兵)
時間・ジャンル:105分、愛情
上映日:2011年2月12日
首都電影院
所在地:北京市西城区西単北大街大悦ショッピングセンター10階
電話:010-66086662
アクセス:地下鉄1号線西単駅から徒歩3分

 

プロフィール

1956年生まれ。法政大学社会学部卒業。テレビ情報誌勤務を経てフリーライターに。1990年代前半から中国語圏の映画やサブカルチャーへの関心を強め、2009年より中国在住。現在は人民中国雑誌社の日本人専門家。

 

人民中国インターネット版 2011年2月16日

 

 

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