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「桂林と賽」といわれるカルスト地形──崀山

劉世昭=文・写真

「崀」という独特な漢字は、『辞海』には「崀、地名、湖南省新寧県境内に在り」と書かれている。昔、舜帝が南巡してこの地を通ったとき、ここの山水のあまりの美しさを見て、「山の良きは、崀山、崀山」としきりに褒めた。これが崀山の名前の由来である。

「八角寨」の「鯨魚閙海」の景観(写真提供・山風景区管理委員会

崀山は湖南省新寧県と広西チワン族自治区桂林市の境界に接する地区の湖南省側に位置している。約4億年前、崀山は果てしなく広がる大海原だった。後の広西造山運動により深海から水面に押し上げられ陸地を形成した。間もなく海水が巻き返し、崀山と桂林、長沙一帯の「湘桂海洋基地」は、再び海底に沈んだ。以降の数十回の地殻変動を経て、崀山は時に消え時に現れて、二億年前の激しい造山運動で崀山は深海から押し上げられ、今の典型的な「丹霞」地形に変わった。

「天一巷」は典型的な「丹霞」溝谷地形。 長年の水による侵食で、2つの切り立った壁と狭くて深い谷ができた

9つの「一線天」が「天一巷」の周辺に集中して、 「一線天」の群落を作っている。 「遇仙巷」はそのうちの1つ。 太平天国の翼王・石達開はここで戦をした時に道に迷ったが、仙人に導かれて山を脱出したことから 「遇仙巷」という名前がついたという

崀山は総合的な「丹霞」地形の代表だ。早期、中期、晩期の「丹霞」地形がここでは見られる。中国の「丹霞」地形の景勝地の中でも、成熟度とレベルが最も高く、最も代表的で最も美しさを備えた地だ。世界遺産委員会は中国「丹霞」地形に関する評価レポートの中で、崀山は「中国丹霞地形の典型的な特徴が最もはっきり現われている」と評価した。

総面積108平方㌔の崀山景勝地は、地質構造が独特で、山、水、林、洞窟などの要素がすべて揃っている。最も有名なのは「崀山六絶」と称される「天一巷」「八角寨」「将軍石」「駱駝峰」「辣椒峰」「天生橋」だ。

「丹霞」峰々の中に象眼した「トウガラシ峰」(写真提供・山風景区管理委員会)

世界の「一線天」(空が一本線に見える)の中でもトップといわれる天一巷は、全長238.8㍍、両側の壁の高さは120~180㍍、両側の間の距離は一番広いところで0.8㍍、一番狭いところはわずか0.33㍍。この狭い溝のような道(巷)を行くと、両側に絶壁が聳え立ち、見上げると青空がただ一本の線にしか見えない。一番狭い所を行くと、体が岩に押しつぶされそうで、呼吸もしづらく感じ、ぞっとするほど奇妙な気持ちにさせられる。天一巷を出ると、旅人はみな思わずほっと胸をなでおろす。天一巷周辺には、大小さまざまな「一線天」が九つある――馬蹄巷、遇仙巷、翠竹巷……など。「巷」が集まった独特な景観を作り、典型的な「丹霞」地形の「一線天」群落だ。

海抜八118㍍の「八角寨」は崀山の最高峰だ。8つの反り返った角があることから名付けられた。1708段の石の階段を登ると、頂上の平台に着く。ここからさまざまな形に造形された「丹霞」峰の群れ、多種多様の巻き貝状の群れを俯瞰でき、長さ10㌔余の峡谷がその間を通り抜ける。

「駱駝峰」を眺める

これは中国東南部の湿潤な地の中期の連峰で、「丹霞」地形の連峰の典型である。雨が上がって空が晴れた時、山間に雲や霧が涌き返り、曲がりうねって起伏に富んだ峰々が雲海の中で時折り見え隠れして、まるで数えきれない鯨が海中で遊びまわっているように見えるため、人々は讃えて「鯨魚閙海(くじらが海で騒ぐ)」という名をつけた。この山峰はまた別名「雲台山」と言う。頂上の最も険しい一角は、約50㍍張り出した絶壁だ。絶壁の先端は天にまっすぐそそり立ち、まるで天空を仰ぎ見る龍の頭のようだ。この険しい絶壁の先端になんと山の神の小さな廟がある。そこに通じる山の尾根の小道は幅がたったの30㌢。こんな険しさにもかかわらず、手足を使いほふく前進して線香をともす敬虔な人がいる。これこそ有名な「龍頭香」だ。

新寧県は長い歴史があり、当地で出土した石器による考証では、4000年以上前にすでに大規模な人類の活動痕跡があるという。前漢元朔5年(紀元前124年)、夫夷侯国が建てられた。したがって、当地の人は県内の長江支流の資江の上流を扶夷江と呼んだ。今の「扶夷」は「夫夷」からきている。扶夷江は崀山地区全体を貫き、いわば崀山の母なる川だ。扶夷江の流れに沿って下って行くと、両岸にさまざまな形の「丹霞」景観が見える。啄木鳥石、軍艦石、将軍石……将軍石は典型的な晩期の「丹霞」石柱で、高さは75㍍、外周は40㍍。「丹霞」地形は晩期に入ると、崩壊し始め、大体上下が同じ太さの石柱が現れた。遠くから見ると、まるで戎衣をはおった、威厳のある将軍が扶夷江のほとりを守っているようだ。

典型的な中期の峰々。峰が林立した「丹霞」地形(写真提供・山風景区管理委員会)

石田村に通じる道に立って見ると、遠くに一つの山が田畑から切り立ち、まるで原野を疾駆する一頭のラクダに見える。これが「駱駝峰」だ。「駱駝峰」は四つの峰の組み合わせででき、ばらばらだが趣がある。形が真に迫っていて、ラクダの頭、体、背骨、尾に見える。「駱駝峰」の傍に「蝋燭峰」があり、赤いロウソクに似た山が空に向ってそそり立っている。てっぺんが尖っていて、体がまるくて四周は険しい、「丹霞」地形でも珍しい独特な景観だ。

切り立った崖の下の長さ百㍍の天然の巨大な割れ目「龍口」に沿って登り、さらに険しい階段を登ると、「駱駝峰」の頂上に着く。頂上に立って遠くを眺めると、周囲の景色がすべて目に入る。古色蒼然とした小さな石田村、錦織のような稲田、千姿万態の丹霞の山々。

「駱駝峰」の「龍口朝陽(龍の口が太陽の方に向く)」は典型的な傾斜状の狭い谷の「丹霞」地形

有名な「辣椒峰」(辣椒はトウガラシ)は「駱駝峰」のすぐ近くにある。高さ180㍍の「辣椒峰」は上が大きく下が小さくて全体が赤色で、無類の大きなトウガラシに酷似する。頂上の周りは約百㍍、峰の下の周りはたったの40㍍余。それで、当地の人々は「仙椒鑽地」(貴いトウガラシが地に穴をあける)とこれを呼ぶ。2002年、フランスの著名な「スパイダーマン」(フリークライマー)の美名を持つアラン・ロベールが素手で平坦な絶壁の「辣椒峰」に登頂して新しい神話を創ったおかげで、一躍その名が世界に知られた。

崀山の「丹霞」地形は極めて優れた普遍的な美観、地球科学、生物や生態学などの研究価値によって世界中の人々を魅了している。したがって、現代の有名な詩人艾青は1930年代に、「桂林山水甲天下,崀山山水賽桂林(桂林の山水は天下一、崀山の山水は桂林とあらそう)」という詩を詠った。彼はこの「賽」とは競争のことだと強調した。

 

人民中国インターネット版 2011年10月

 

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