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天津のシャコはどこへ?

 

シャコと泥人形に再会するのが天津旅行のひそかな目的でした。

島影均 1946年北海道旭川市生まれ。1971年、東京外国語大学卒業後、北海道新聞社に入社。1989年から3年半、北京駐在記者。2010年退社後、『人民中国』の日本人専門家として北京で勤務。

1988年から92年まで、北京で暮らしていた当時、天津は家族や友人たちと海産物の買い出しに行く場所でした。当時、天津駅からタクシーで少し走ったところで、漁民が海産物を売っていました。北京ではなかなか手に入らなかった新鮮な魚介類が目当てでした。

列車の中でトランプで遊んだ記憶がありますから、2時間近くかかったのではないでしょうか。今回は北京南駅から高速鉄道で40分弱。

この旅行は『人民中国』も傘下に入っている外文局の視察旅行でしたから、筆者のような外国人専門家が数10人参加しました。旧租界など視察の合間に、天津の人に、こっそり「どこかでシャコ売ってる?」と聞いてみました。皆さん「えっ、何ですか」と、けげんな顔をします。大きな声で「シアクウ(虾蛄)」と連呼するのも気が引けますから、早々にシャコとのご対面は断念しました。

天津の古文化街にある泥人形専門店(写真・井上俊彦)

泥人形には再会できました。すっかり様変わりした古文化街に専門店が見つかりました。かつて天津で買った泥人形は高さ30㌢ほどの古代美人の立像でした。彼女は筆者に巡り会ったばかりに、数奇な一生を送りました。転勤の道連れで、東京、札幌を経て、2003年にオホーツク海に近い北見に行きました。中国製の飾り棚で変わらない笑みをたたえていました。ところが地震で転落、頭蓋骨骨折で亡くなってしまいました。

古文化街で3軒の専門店を回って、思い出の姿を探してみましたが残念ながら見つかりません。そこで以前の人形より少し小ぶりで双子の姉妹と思われる人形を買いました。前の人形の娘たちと思うことにします。

この姉妹人形に一目惚れしたのですが、近くの陳列棚にほぼ同じ背格好の美人人形があり、値段を聞くと2倍以上。店の人の説明によると、姉妹人形は弟子の作品で、高い方は師匠の作だそうです。一緒に行った中国人女性と顔を見合わせて「弟子の方がいい出来だけどね」。いずこも肩書きがモノを言うのでしょう。

もう1つ懐かしかったのは肉まんの「狗不理包子」でした。「犬も相手にしない」というのが直訳ですが、昔は、これが創業者の幼名で、変な名前だと悪魔も相手にしないという意味だと聞きました。今回は、しょっぱくて猫も食べない塩ジャケのことを「猫またぎ」というのに似ているという別の由来説を聞きました。悪口を逆手に取ったネーミングというわけですね。蒸かしたての包子はさすが本店の味でした。 

さてシャコですが、先日、休暇で行った札幌で甘だれ付きを食べて、天津の恨みを晴らしてきました。(『人民中国』2011年11月号より)(朗読=光部 愛)

 

人民中国インターネット版 2011年12月

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