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第十四回 自家製「薬酒」造り

馬島由佳子=文・写真

生薬を白酒(アルコール度数が高い中国の蒸留酒)に漬け込んだガラス瓶をいくつも並べているレストランがあります。このガラス瓶に入ったお酒は「薬酒」です。

レストランで見かけた各種薬酒

日本で自家製の梅酒を造ることが珍しくないように、中国では、体質別・症状別の薬酒を家庭で造ったり、レストランが薬酒をメニューとして提供したりしています。ある中薬(漢方)薬局では、家庭で造れる症状別の薬酒のレシピを掲げています。

薬局に掲げられている薬酒のレシピ

中華中医薬学会によると、「薬酒の健康法とは、中医薬理論と生薬の現代薬理学の知識を結合したもの。生薬と酒を一定の比率で融合・加工し、服用や外用によって、健康を保ち、疾病を予防する、長寿や治療を目的とする一種の健康法」。

生薬を漬け込む日数は7日から10日が一般ですが、硬い鹿の角、貴重な朝鮮人参などは1~2カ月漬けて、じっくりと成分を抽出します。

朝鮮人参と鹿の角

生薬と酒の割合は1対7。酒は白酒以外に黄酒、米酒、ワイン、ビールなども可。ただし、アルコール度数が20度以上あれば、防腐作用が高まり、有効成分を抽出しやすいといわれています。ポイントは、生薬を水で洗わず、漬けるお酒でさっと洗うこと。服用方法は10~30ccを毎日2、3回で、食前1時間以内か食後30分以内、あるいは就寝前。温めて飲んでも構いません。

さて、筆者も自家製薬酒を造ってみました。赤ワインをベースにする薬酒には"温腎壮腰"(腎を温め、腰を強くする)、"舒筋活脈"(筋肉を伸びやかにし、経絡〔体のエネルギーである「気」や「血」の通路のこと〕の流れを活発にする)、"補血"(血を補う)、"鎮静安神"(精神を安定させる)などの効能があり、虚弱体質、疲労気味の方に向いています。また、アンチエイジングなどの美容効果も期待できます。

漬け込んだのは「肝」を守る作用があり、目によいとされる枸杞子(クコの実)、そして滋養、利尿、鎮静作用があるナツメ。どちらも美容作用も備えています。

 寧夏の枸杞子 山西省産のナツメ 

今回は特に良質といわれる寧夏の枸杞子、そしてナツメの産地である山西省産の真っ赤で丸いナツメを使用しました。冷蔵庫で2日漬けたところで待ちきれずに飲み始めてしまいましたが、スペインのお酒「サングリア」の甘さを抜いたような味でおいしくいただけました。薬膳酒というより果実酒のような感じです。氷砂糖を一緒に漬けたり、飲むときにハチミツを加えてもおいしいと思います。少量でも体がポカポカするので、この薬酒は冬の就寝前に飲んで早寝するのがよさそうです。次回は白酒を使い、もっと生薬をそろえて本格的な薬酒造りに挑戦してみようと思います。

赤ワインベースの自家製薬酒

 

馬島由佳子

静岡市出身。

外務省在職中に赴任先の北京で中国医学、特に中薬に魅了され、2001年帰国退職後、財団法人交流協会で働きながら東京・本郷にある北京中医薬大学日本校で学び、2008年に国際中医師の資格を取得した。

現在、『人民中国』インターネット部に勤務。

 

人民中国インターネット版 2012年11月12日

 

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