1969年10月、北京に中国初の地下鉄が開通した。しかしその後の32年間、延長されたのはわずか42キロ。そのため、2007年10月の5号線の開通には、多くの市民が喜びの声をあげた。地下鉄の建設はこれからますます加速し、近い将来、19本の軌道交通が市内を縦横に走る見込みだ。
庶民の「足」に
朝7時20分、地下鉄5号線の宋家荘駅に急ぐ李さん。その脇を路線バスが通り過ぎていった。バスの車内は空席がちらほらと目立つ。数カ月前には考えられなかったことだ。
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路線拡大により地下鉄の利用者が増え、路線バスの負荷減が期待される |
5号線が開通する前、李さんはバスで通勤していたため、毎朝6時に起きなければならなかった。始発のバス停まで行っても、1台目では座ることができない。2台目を待って座席を確保し、またひと眠りする。地方から北京に出稼ぎに来ている李さんは、経済的にあまり余裕がない。「5号線が開通し、運賃も一律2元(約30円)になった。バスと変わりません。地下鉄なら渋滞することもない。でも、もし値下げされなければ、地下鉄には乗らなかったと思います」と興奮気味に話す。
5号線は北京の南北を貫く大動脈だ。これまで北京の軌道交通は、東西を結ぶ線と環状線、そして郊外を走る線しかなく、市の南北を結ぶ線はこれが初めて。総距離27.6キロ、平均時速36キロ、全線の所要時間は49分。南は豊台区の宋家荘から北は昌平区の天通苑まで運行しており、東単、亜運村などの繁華街や方荘、天通苑などの大型住宅地を経由する。
市民たちは5号線の開通によって渋滞の苦しみから解放された。そしてさらに喜ばしいのは、5号線の開通と同時に北京の地下鉄運賃が一律2元になったことだ。
開通早々、多くの市民が5号線を利用した。乗客数は一日あたり最多で486000人に達した。またこれにともない、既存の1号線、2号線、13号線、八通線の乗客数も34.7%増加。軌道交通全体の乗客数は一日あたり平均170万人から270万人に増え、もっとも多いときは291万人に達した。
今回の値下げにより、北京の地下鉄運賃は全国でもっとも安くなった。これまで3~5元だったのが、すべての線で一律2元になったのだ。別の線に乗り換えても追加料金をとられることはない。
市政府はこのために毎年10億3000万元の補助金を支給しなければならないが、これにより得られる社会的効果は、金銭で計ることはできない。深刻な渋滞に悩まされていた天通苑付近は渋滞率が大幅に下がり、78%減となった。また、外出する際に公共交通機関を利用する割合は2007年10月、34.5%に上昇し、ここ数年で初めて、マイカーやタクシーなど公共交通機関以外の自動車の利用率を上回った。
しだいに増える利用者に対応するため、列車の運行間隔はより短縮された。1号線の最短運行間隔は2分30秒に短縮され、輸送能力は11%高まった。5号線の運行間隔も当初の4分から3分に短縮された。これと同時に、車両やホーム、線路の改修も順調に進んでいる。オリンピックまでには、新型車両が200両あまり投入される予定だ。
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