「棄車族」が登場
5号線が開通した翌日、天通苑に住む楊さんは車の運転をやめた「棄車族」になった。
楊さんは市中心部にある貿易会社に勤めており、これまではマイカーで通勤していた。朝のラッシュを避けるため、毎日6時に家を出発。一時間半かけてようやく職場に到着。他の人より2時間も早く出勤していた。
しかし今は、地下鉄を利用して通勤時間は40分たらず。最寄りの天通苑北駅まではマイカーを運転して行き、駅の駐車場に停めて、地下鉄に乗り換える。そのため、正確には「棄車族」ではなく「半棄車族」だ。
駐車料金は1日わずか2元。「地下鉄の運賃は往復で4元、それに駐車料金をプラスして、一日たったの6元。地下鉄を利用することで時間もお金も節約できちゃう。ガソリン代や駐車料金を合わせても、一カ月で6、700元の節約よ」と話す。
楊さんのような「半棄車族」は多い。朝の8時過ぎ、天通苑北駅の駐車場にはすでに「満車」の表示が出ていた。管理人の話によると、車が多すぎて、272台の駐車スペースではとっくに収容しきれなくなっているのだそうだ。そのため、近くに百台収容できる新しい駐車場を建設しているという。駅まで車でやって来て地下鉄に乗り換える人たちのために、北京市は地下鉄沿線に26の駐車場を建設することを計画している。
広告会社に勤める李青海さんは徹底した「棄車族」だ。自宅も勤務先も地下鉄の駅から500メートルほどしか離れていないが、これまでずっとマイカーで通勤してきた。地下鉄に乗ることなど考えもしなかったという。
しかし昨年9月、車が故障し、修理に出した。そこでやむを得ず、同僚といっしょに地下鉄で通うようになった。ところが思わぬことに、このやむを得ない選択はさまざまなメリットをもたらしてくれた。
まず、通勤時間が一時間半から30分に短縮された。地下鉄のなかでは音楽を聴くこともでき、車を運転していたときのように緊張することがなくなった。それだけではない。常時運転していたために悩まされていた腰痛と頸椎病も良くなった。「これはまさに一挙両得ならず『一挙多得』ですね。運転をしなければ、省エネにもなるし環境にもやさしい。毎日体を動かすのでダイエットにもなります」と笑う。
今では毎日地下鉄で通勤するようになった李さん。特別なことがない限り、平日はほとんど運転しない。車を使うのは週末遊びに行くときだけだ。
5号線が開通すると、李さんはわざわざ遠回りをして体験しに行った。「利用者のことがよく考えられています。地下鉄内のディスプレイには詳しい乗り換え情報が映し出されるし、インフォメーションシステムを使ってバスの路線と周辺の情報を調べることもできる。車内で携帯を使うこともできるし、ほんとうに便利です」と5号線を絶賛する。彼は地下鉄の「愛用者」になりそうだ。
李さんのように、自宅も勤務先も地下鉄の駅まで徒歩圏内にあるというのはとても恵まれていて、ほとんどの場合はかなり距離がある。そこで、レンタサイクルという新しいサービスも登場した。
2007年9月末、地下鉄沿線にレンタサイクルポイントが20カ所設けられた。利用料金は、一時間5元、一日20元、年間100元の3パターンに分かれる。しかも、レンタサイクルポイントには銀行の専用端末が設置されているので、銀行カードでデポジットと料金を支払った利用者は、自転車を借りた場所ではないところで返すことも可能だ。オリンピックまでにはこのようなレンタサイクルポイントが200カ所に増え、50000台の自転車が貸し出されるという。
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