ある統計によると、マイカーやタクシーなど一般の自動車の道路占用率は68.9%、路線バスはわずか10.2%だという。しかし北京ではマイカーブームの到来とともにバス離れがはじまり、近年の路線バスの利用率は26.5%と、80年代の35%から大きく低下している。路線バスの発展は、北京にとって必然の選択だ。
運賃が6割引に
「北京の大きさはバス代を見ればわかる」と言われる。確かに、北京の通勤族にとって、毎月の交通費は馬鹿にならない出費だ。
就職して1年あまりの王博家さんは、北京市北部の天通苑に住んでいる。勤め先は市の南西部にある。王さんは「職場から一番遠くに住み、出勤が一番早い人」なのだという。
最初は、エアコン付きのバスに乗って通っていた。乗り換えもなく、30以上のバス停を通り過ぎる間、ぐっすりと眠ることができた。
けれども数日後、毎日12元もかかるバス代に閉口。ひと月のバス代が300元近くにもなってしまうというのに、月給はわずか千元あまりだからだ。そこで、別のバスルートを開拓し始めた。しかし、かかるお金は少なくはなったものの、何度も乗り換えなくてはならなくなった。
毎朝、5時50分に起きなければ、9時の出勤時間には間に合わない。午後4時半に仕事を終えると、たとえ渋滞に巻き込まれなくても家に着くのは7時半。家に着いたらもう9時で、両親が用意しておいてくれた夕食がすっかり冷めてしまっていたこともある。出費を減らすために、朝急いで出勤するときには地下鉄も利用し、夜はバスだけで帰宅することにした。それでも、毎月の通勤費は100元以上かかった。
しかし、通勤費を節約するためにあれこれ苦心する必要はもうなくなった。2007年1月1日から、北京市内の大部分のバス(郊外路線を除く)は初乗り運賃が1元となり、しかもプリペイド式の交通ICカード「市政交通一卡通」を利用すると6割引、学生は8割引になったからだ。この値下げプロジェクトのために、政府は毎年34億元の補助金を支給するという。
王さんは以前のようにエアコン付きのバスで通勤するようになった。一日のバス代はわずか2.4元だ。前は12元もかかっていたのに。
バス代が6割引となったため、バスを利用する市民がしだいに増えている。2007年6月、北京の路線バス利用者数は一日あたり1148万人に達し、2006年末に比べて200万人以上の増加となった。市街区の各路線バスの平均乗車率は約70%。交通ICカードの発行数は1500万枚を突破し、一日あたりの使用回数は最多で1300万回を記録した。
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