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農村で「村官」になる

 

陳娟さん(28歳) 遠くに在りて故郷の役に立つ

 

陳娟さんはインターネットを使って農産物の販売情報を調べ、村人のために販売ルートを開拓した
 安徽省出身の陳娟さんは、2006年に中国農業大学の大学院を修了した。専攻は薬草栽培。はじめは医薬関係の仕事を探そうと思っていた。

 

しかし「大学生村官」のプロジェクトを知り、農村出身の陳さんは考えた。

 

自分はずっと農学が好きで勉強してきた。母校は「農業を学ぶ、農業を愛する、三農(農業、農村、農民)に奉仕する、民生の難題を解決する」という校訓を掲げている。これは自分の子どものころからの夢でもある。それを実現するため、「村官」に応募しよう。

 

陳さんの赴任先は梨羊村に決まった。「村官」は自分の仕事の起点であると考えた陳さんは、村に適した作物を選んで科学的に栽培し、村人たちが豊かになるのを手助けしたいと思った。

 

梨羊村はこれまで、スイカや漢方薬の材料、キノコなどを栽培してきたが、すべて上手くいかなかった。陳さんはその理由を考えた結果、この村には労働力が少なく、文化レベルもあまり高くないので、技術レベルの高い作物の栽培は適さないと判断した。そして、あまり手がかからずとも収益が大きいスイートコーンを栽培することにした。

 

母校の国家トウモロコシ改良センターの教授と協力して、スイートコーンの普及テストと二期作のテストを実施し、成功を収めた。スイートコーンは口当たりがよく、市場価格も高い。かつて栽培したことのあるトウモロコシとはまったく異なり、村人の収入も大幅に増えた。

 

昨年はほかの2人の「村官」といっしょに「新三農特色果物野菜専門合作社(協同組合)」を設立し、村人たちの支持も得た。5万元のスタート資金は、村人たちを含む15人で共同出資した。法人代表は陳さんだ。

 

「合作社は販売を担当します。農民たちへの発注や価格の設定、買い取り販売を行います。今の主な商品はスイートコーンですが、王麗娜さんのいる二条街村のイチゴの販売も手伝うつもりです」

 

自分の将来についても、はっきりと語る。「いまの仕事を続けていきたい。仕事の見通しもたちましたし、ここでの生活にも慣れましたから。ここでいい仕事ができたら、遠くにいながらにして、故郷の役に立てます」

 

陳さんは今年結婚したばかり。大学のクラスメートであった夫は、北京市内の会社で販売の仕事をしている。陳さんたちにはまだ北京市の戸籍がない。でも、陳さんの契約期間が満了すると、取得できるという。

 

魯書成さん(25歳) 明るい未来が見える

 

魯書成の重要な仕事の一つである村内放送。村人たちからとても喜ばれている
 吉林省長春市出身の魯書成さんは、昨年、中国農業大学を卒業し、河奎村の「村官」になった。まだ赴任して数カ月だ。

 

「この村の桃は品質がよく、とても有名です。ほかに、武昌魚や{こくれん}黒鰱の養殖でも知られています。私は大学でマーケティングを専攻したので、その知識を何かの役に立てたいと思っています。今、村の人たちと相談しているところですが、合作社を設立したいと考えています」

 

合作社の設立はまだ計画段階だが、村内放送はすでに魯さんの仕事のひとつになっている。村にはもともと、上級機関から支給された設備はあったが、専門に管理する人はいなかった。たまに村民委員会の主任が「今日は○時に会議!」と叫ぶときに使うくらいだった。

 

魯さんが赴任してからは、毎朝七時に放送するようになった。内容は、オリンピックの関連知識や天気予報、健康知識、桃の栽培技術、有機肥料の使い方などだ。

 

村人たちとの距離を縮めようと、魯さんは平谷の訛りを勉強し、それを使って放送している。また、いまでは村人たちと同じように「放送する」ことを「叫ぶ」と言うようになった。「この前、大根の価格を『叫び』ました。村の人たちからは役に立ったと言われました」

 

河奎村には大根を栽培している農家が少なくないのだが、ほとんどの人は市況をよく知らない。そこで魯さんは毎朝、インターネットで野菜の価格を調べ、村人たちに知らせることにした。

 

いま売るべきか、もうしばらく様子をみるべきか、村人たちは魯さんに相談にくる。魯さんの分析は正確で、村人たちから感謝されている。

 

魯さんは大学3年のとき、ある出版社でアルバイトをしたが、あまり楽しいものではなかったという。今やっている仕事は大きなことではないが、農民の役に立てる有意義な仕事だと考えている。感謝されると達成感もある。

 

「クラスメートはみんな、南方の都市部へ行って就職しました。給料は彼らのほうが高いかもしれませんが、プレッシャーも大きく、未来が見えない。でも私は、比較的安定した明るい未来を見ることができます。契約が満了した三年後、公務員の試験を受けてもいいし、ここに留まってもいい。北京郊外の農村は、私の故郷の農村に比べると生活条件がよくて、発展も速いです。ここに来たばかりのときはまだ土の道だったのに、たった半年でセメント舗装の道路になりました」

 

 「大学生村官」たちは契約期間が満了すると、村から去ってもいいし留まってもいい。いずれにしても、大学卒業者が次々とやって来れば、彼らの知識や情熱、多彩なアイディア、そしてさまざまな実践は、農村に新しい活力や原動力を注ぎ込み、農村の発展を促すことだろう。

 

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