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キノコがもたらす循環型ライフ

 

廃棄物を再利用

 

 「『野菜1ムーの栽培は、穀物10ムーに勝る』とよく言われますが、キノコ栽培を通してそれを実感しました。一つのビニールハウスから得られる収入は、3.5ムーの畑よりずっと多いんですよ! キノコは宝の山ですね」と丁さんは笑う。

 

 「宝の山」という表現は、キノコそのものだけを指しているのではない。キノコ栽培により生み出されるものも指しているのだ。

 

南河村にあるガス生産所。農業廃棄物でガスを生成する

 キノコは菌床で栽培される。菌床は、木屑や綿の種の殻、トウモロコシの芯などを混ぜ、それをビニールの袋に詰めて作ったもので、菌を植えつけてから半年余りの間に6回も収穫できる。使い終わった菌床もさまざまな用途がある。発酵させて肥料にしてもいいし、一定量の土を混ぜれば柔らかく通気性のよい用土になる。この用土は野菜栽培に最適だ。さらにかまどの燃料としても利用できる。

 

 最初のころ、村人たちは使い終わった菌床を家の周辺や道端に置き、かまどや暖を取るのに使っていた。「燃えることは燃えるのですが、煙や灰で部屋や台所が汚れました」と丁さんは言う。

 

 続けて、「今は農業廃棄物によって生成したメタンガスを利用しているので、清潔です」と話す。丁さんの自宅の台所には都市で使われているのと同じようなガスコンロがあり、スイッチをひねればすぐに火がつく。

 

 南河村は2003年に政府の支援を受け、農業廃棄物によるメタンガス生産所を建設した。ここでは、使い終わった菌床だけでなく、トウモロコシの茎や芯、果樹の枝、ピーナツの殻などを粉砕したあと、燃料として利用できる。発生したメタンガスは貯蔵タンクに保存され、パイプを通して各家庭に配られる。村人たちは、スイッチをひねればすぐに清潔なメタンガスを利用できる。

 

キノコ生産企業により、周辺の村の農民たちは就職の機会を得た。キノコ生産企業は、農民たちのキノコ栽培も奨励している。

 ガスコンロはコストが低く、廃棄物の再利用が可能なうえ、廃棄物が山のように積み重なって火災が発生するのを防ぐこともできる。使い終わった菌床や穀物の茎をメタンガス生産所に持って行けば、メタンガスと取り替えられるのだ。

 

 このように「ゴミが宝になる」ことで、農民たちはコストをかけずに実益を得られるようになった。丁さんの自宅は、明るくて塵ひとつない。昔の農家のイメージとはまったく違う。

 

 村の様相も変わった。道端に積み重ねられていた廃棄物がなくなり、空き地は運動や憩いの場になった。大半の道路はアスファルト舗装されている。かつてのような「晴れた日は土埃まみれ、雨の日は泥まみれ」といった状況は改善された。また、自宅のトイレを水洗式に改造することを奨励し、改造した農家には太陽エネルギーの湯沸かし器をプレゼントしている。

 

自宅の台所で、「村にガス生産所ができてから、各家庭は新しいエネルギーを利用するようになりました。便利だし清潔です」と説明する丁興財さんの妻の耿紅英さん

 村民委員会の王万忠主任によると、キノコや野菜の栽培が導入されてから、村には暇な人が少なくなった。以前は、冬の農閑期になると、村人たちは家で暇を持て余すしかなかった。あるいは何人かで集まって、村の中をぶらついたり、トランプやマージャンをしたり、タバコを吸いながらおしゃべりしたりするしかなかった。そこで、小さなことから揉め事が発生することもあったという。

 

 しかし今は、ビニールハウスの仕事だけでも忙しい。菌床作り、水まき、風通しなど、すべて人手や時間がかかる。それに何回も収穫できるため、手が回らないときは人を雇わなければならないほどだ。

 

 午後になると、キノコの仕入れ業者が村にやってきて、ビニールハウスを回る。村人たちは翌朝の朝市で新鮮なキノコを出すために、夜まで忙しく働く。

 

 外地の臨時労働者を雇うことが増えたことにより、村には新しい商売が起こった。食堂だ。

 

 これまで村には食堂がなく、必要もなかった。しかし今では78戸の農家が食堂を開き、商売はみな上手くいっている。臨時労働者のためであるだけでなく、自分たちの利益にもつながっているのだ。

 

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