一、 固定期限のない労働契約の成立は、雇用メカニズムを硬直化させる。
二、 企業の人件コストが大幅に増え、正常な経営の維持に支障がある。
三、 投資環境や就業に影響を及ぼす。
以上の認識は、『労働契約法』を全面的に理解できなかったか、あるいは誤解したものだと考えている。
固定期限のない労働契約は、多くの国では労働契約の主な形式である。そして『労働契約法』では、いくつかの条件を設定して契約解除を認めており、『労働法』で定められていた契約解除の制限よりも緩和されている。
そのため固定期限のない労働契約は、「鉄お碗(終身雇用)」ではなく、雇用メカニズムが硬直化する可能性も少ない。『労働契約法』をきちんと実施すれば、企業の求心力も大きくなり、言い換えれば、大量の労働者が不安定であれば、企業の発展と革新にとってもマイナスになる。
人件コスト高騰の問題について『労働契約法』では、これについての2つの規定がある。一つは、労働契約解除の際に企業が賠償金を出さなければならない点で、もう一つは、テスト雇用期間中に、正式雇用時の給料の80%を支払わなければならない点だ。
この2つの規定により、人件コストが高騰すると考える企業は、かつて労働者の社会保険費を納めなかった企業である。『労働契約法』では、社会保険費用の納付を明確にしており、一部の企業にとっては大きなプレッシャーになっているが、この法定の義務を履行ぜず、労働者の合法的な権益を損なうことで高い利益を追求することは違法であり、法律を順守する企業にとっても不公平である。
雇用と投資環境への影響については、『労働契約法』を徹底的に実施することで、雇用の拡大や投資環境改善にプラスになり、完備された法律制度と調和のとれた労使関係は、投資環境の改善や雇用拡大につながると考えられている。
だが『労働契約法』の実施は、政府の職能転換や、企業や労働者の観念、慣行、利益構成の調整にかかわるため、今は確かに困難に直面している。これを遂行するために、1)労働者や企業がこの法律を全面的に正確に理解し、きちんと実施できるよう宣伝作業に力を入れる、2)関連の法規の制定を急ぎ、企業に対する指導を強化する、3)監督や労働争議の調停に力をいれ、労働者の合法的な権益を適切に保護する、という3つの措置を実施していかなければならない。