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河北省・武安市 農村の鬼払い祭り――「打黄鬼」

 

鬼を追い払い、太平を楽しむカーニバル

 

旧暦正月16日の午前、銅鑼太鼓隊、掌竹、社首などが村の南北で虫ナン王と氷雨竜王を祀る。いずれも虫を追い払い神と雨をつかさどる神で、現地の農業と密接な関係をもつ
 旧暦正月15日の早朝一時、騒々しい足音が村に響きわたる。恐ろしい面構えの隈取りをほどこした「大鬼」「二鬼」「跳び鬼」は、柳の棒を手にした大勢の「更夫(夜警)」に取り囲まれ、村中を練り歩きながら護送される。彼らは走りながら叫び声をあげ、まことしやかに鬼払いを演じる。早朝7時、黄鬼はついに裁判にかけられる。髪、手足、体中を黄色に塗られ、薄い袖なしシャツと半ズボンだけを身につけた黄鬼役の者は、恐ろしくてたまらないという顔つきをしてみせる。

 

 朝8時ごろから街中がにぎやかになり、道の両側や家々の屋上に鈴なりになって眺める人でごったがえす。甲冑に身を固めた「探馬(見回り役)」が、馬に乗って街中を監視してまわる。武術、高足踊り、花車、ナワ旱船、竹で作った馬に乗るなどを含むさまざまな民間の花会は、村の東側に集まっている。天地を揺るがすほどの爆竹の大音響が響き、祭りのパレードが始まる。隊列の先頭は役所の「小使」が銅鑼を鳴らしながら先導し、旗や牌などを手にした儀仗隊がその後に続く。その後は、さまざまな仮面や隈取りで彩る神と鬼の世界となり、さらに色とりどりの衣装を身に着けた各種の花会のチームと続く。歩きながら演じるその姿は、非常ににぎやかである。隊列の中には、元気いっぱいの大鬼と二鬼がしょんぼりとした黄鬼を護送している姿が見える。多くの若者が、柳の枝を振りながら大声で叫び声をあげてそれに加勢する。

 

黄鬼は大鬼と二鬼に護送される(後ろにいるのが黄鬼)
 パレードの隊列は西側の閣楼を通り過ぎ、村の西側の南 河の河原までやってくると、3つの上演場所を囲み、賽戯の公演を始める。3つの村からの芝居班が、各自得意な演目を披露して観衆を奪い合う。

 

 昼近くなると、隊列は最後の場所へと移動する。そこでは、正義の代表である閻魔王、判官が河原で組み立てた審判席に座り、黄鬼に死刑を言い渡す。黄鬼が斬鬼台につれて来られると、人々は奮い立ち、人間が邪悪を打ち負かすことを象徴する、天地を揺るがすような礼砲が鳴り響く。

 

生きた化石「隊戯」と「掌竹」

 

掌竹

 村の舞台では、旧暦正月14日から16日までずっと儺の公演が続く。このような小さな村に、隊戯や顔戯、賽戯など思いもよらぬさまざまな民間芸能が残され、しかも伝統的な演目が受け継がれてきたということは非常に珍しい。打黄鬼は「隊戯」の中の無言劇である。隊戯にはほかに、「吟詠劇」「韻白劇」「平調劇」などさまざまな種類がある。顔戯とは仮面戯のことで、賽戯は神霊を祀るための専門劇である。これらの区別やそれぞれの特色については、現在も専門家による研究が進められている。憂うべくは、年寄りがひとりまたひとりと亡くなっていくにつれ、これらの演劇の伝承が危機に瀕しているということである。

 

賽戯の公演の場面

 固義村の祭りと儺戯において、「掌竹」という特殊な役がある。その役の人は、赤い長衣をまとい、一メートル足らずの竹竿を握っている。公演では舞台の前方に立ち、歌詞を吟じながら、劇の筋を説明する。祭祀では、掌竹役の人は祭祀の詞を吟詠しながら儀式の司会をして祈祷師のような役をつとめる。専門家によると、掌竹は宋・元代の雑劇に記載された劇の引導者や前口上、演目の文句の吟詠者に似ているという。吟じながら歌われるそれは、古風で素朴な節回しであり、ほとんどが七字の文句で語呂を合わせて韻を踏むという特徴がある。掌竹は、伝統劇が吟詠から節回しへと移行する段階の生きた化石として、戯曲史の研究に生きた物証を提供している。

 

 打黄鬼から儺戯までのイベント全体において、クライマックスは一度ならず何度かある。この原始的、かつ古風で素朴な場面を目の当たりにして、専門家や学者たちもしきりに感激する。「数十年来、全国各地で多くの儺芸、儺技、儺戯の公演を見てきましたが、今回の公演こそもっとも多彩で感動的なものでした。チベット、呉越、西南(雲南・貴州)、巴蜀などの儺文化圏と比べても、類を見ない素晴らしさがあります」。中国儺戯研究の専門家であり、著名な演劇理論家である曲六乙さんは、興奮を抑えきれぬ様子でそう語った。

 

人民中国インターネット版

 

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