武式太極拳の「起承開合」
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武式太極拳を披露する胡鳳鳴さん |
胡鳳鳴さんによると、武式太極拳は武禹襄が創立して以来、百年以上を経て、すでに完全なものになっている。現在、基本的な動作は四十種類余りに及ぶ。
武禹襄は裕福な家庭に生まれ育ったため、拳法を教えることで生計を立てる必要はなかった。そのため、弟子は少ない。しかし儒家文化については造詣が深く、太極拳理論の研究をとりわけ重視した。家族のような濃い師弟関係を良しとせず、実践と理論の同時発展を主張した。武式太極拳の継承者には、李亦畲、郝為真、郝月如など、文武両道、芸と理の両方に秀でた人物が多い。
「起承開合」を強調
陳式太極拳の動きは勇猛であり、楊式は伸びやかで美しい。それらに比べると、武式は精巧緻密であり、すきなく構成されていて含蓄が深いという。
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武禹襄の像 |
武式太極拳は「開合太極拳」とも呼ばれる。武禹襄の創り出した「起承開合」の太極拳理念は、古代の文人が詩歌や文章をつくる際の思考パターン「起承転合」(起承転結)がもとになっている。
武式太極拳は清代初期の王宗岳による『太極拳論』を尊崇する。それによると、陰陽の道とは「動はすなわち分であり、静はすなわち合である」。「動」とは開、つまり変化であり、力の動きである。「静」とは帰納、つまり力の凝縮である。
武禹襄は拳の動きを「静は山のごとく、動は川のごとく」と形容している。抽象的な陰陽開合を具現化し、一定の規則に従って練習を行えるようにした。著書『十三勢説略』の中では、「すべての動きはまず手だけに力が現れ、すぐに力が放たれる。起、承、開、合の範囲を出ず、始めは意が動く」と述べている。各動作は「起、承、開、合」の四つの節と順序を備えなければならないと強調した。
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広府古城のやぐらの上で 武式「太極扇」を練習する人たち |
すべての動作の「起承開合」は、その移り変わりをはっきりさせるとともに、自然に続き、断続してはならない。
学習者の五つの心得
胡さんは、理論と実践は相互に深まるものだと諭す。太極拳の学習者は次のような五つの心得をしっかりと覚えておくべきである。
一、心を静め、体を楽にする
胡鳳鳴さんは自宅で「太極扇」を教えている
心を静めることができてこそ体をリラックスさせることができる。肘、肩、股、足、膝の各部をすべて緩め、全身をリラックスさせると、気と血が流れ、動きが柔軟になる。
二、まずは伸ばし、あとで整える
まずは全身をゆったりと伸ばし、低い構えになって、腰を緩め、股を沈めて練習する。こうすると腰と足の訓練がしっかりとでき、下半身が安定する。ある程度の基礎ができてから、動作をきちんと整え、より正確にする。
三、体を正し、力をみなぎらせる
必ず体を正し、どこか一方に偏らないようにして、「上下相対」「前後相合」を心がける。「上下相対」とは頭頂部の「百会」と股部の「会陰」が上下一直線になり、相呼応すること。「前後相合」とは脊椎と顔の中心を正確に合わせること。
四、腰を軸に、四肢を動かす
武式の『拳論』は、「腰を車軸とし、気を車輪とする」「腰が支配する」と強調している。
五、虚実を分け、「起承開合」
重心や下半身の安定のため、歩法の虚実をはっきり分けなければならない。そのとき、「虚とはまったくの無力というわけではなく、次に動くための勢いを備えている。実とは足をすっかり地面にくっつけるというわけではなく、足は上がる意を備えている」ことに注意する。
太極拳の習得には長いプロセスが必要だ。まずは外形からとりかかり、しだいに内形の練習に進み、意、気、拳架の「三者合一」の境地に入っていく。粗から精に到ることで、拳法の頂に登ることができるのだ。(0812)
人民中国インターネット版 2009年1月14日