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重慶市・武隆県 億万年の地質変動に触れる

 

四川盆地の東南部に位置する重慶市武隆県。数億年かけて、炭酸塩岩や砂頁岩などこの地域に分布するさまざまな岩石が形成した地形は、自然の力により「改造」され、多様なカルストの地形奇観を形成している。

武隆県は、夏の猛暑の厳しさから湖北省武漢市と江蘇省南京市とともに「中国の三大かまど」に数えられる重慶市から、わずか200キロの距離にある。烏江のほとりにある同県の人民政府が置かれている町までは重慶市から車で約2時間、この町に隣接する仙女山は夏は避暑地、冬はスキーなどレジャーを楽しめる観光地でもある。

武隆県は深い峡谷地帯にある。中新世以来、長江三峡地域の地殻は大規模に隆起し、鍾乳洞、天生橋(天然の橋のような洞窟)、天坑(水が上から注ぎ込む形で浸食されてできた竪穴)の三種の地形を形成した。地理的特徴の異なるこれらのカルスト地形の代表に、芙蓉洞、天生三礄、後坪天坑群がある。

多彩な地下芸術宮殿 芙蓉洞

芙蓉洞外の芙蓉江の美しさは、古来より「まるで絵のような川」と称えられてきた 芙蓉洞内の珍品「珊瑚瑤池」の中にかすかに見える水中晶花。世界的にもめったに見られない貴重なもの 

芙蓉洞は武隆カルスト洞穴を代表する地形である。第四紀更新世(約120万年前)に誕生し、古生代のカンブリア紀の苦灰岩(白雲岩)の中で育まれていった。全長2500メートル、洞内の天井の高さはほとんどが8~25メートル程度、一番高いところで48.3メートルの鍾乳洞である。鍾乳石の化学成分はおもに炭酸塩岩と硫酸塩岩だが、その種類は石鍾乳や石筍、石柱、石幕、石幔、石滝、石旗、石帯、石盾、石葡萄、珊瑚晶花など70以上にのぼる。形から見ると、針形、髪形、糸形、簪形などがある。

洞内30数カ所のスポットには、世界の稀少な洞穴景観に数えられるのも少なくない。たとえば、幅15.76メートル、高さ21.04メートルの巨大な「石の滝」、面積32平米、水深0.8メートルの現在成長の旺盛期にある「珊瑚瑤池」、同じく成長中の「石花の王」、世界有数の「犬牙晶花石」、鍾乳石の「生命の源」の「五絶」などである。

「芙蓉洞は輝かしい多彩な地下の芸術宮殿である」というのは、中国洞穴研究会会長の朱学穏教授の評価である。また、オーストラリア洞穴協会の専門家は「芙蓉洞の美しい棕櫚形の石筍や赤珊瑚池、石膏花などは、いずれも世界最高級の風物である」と称える。

国内外二十数カ国の科学者が十数年がかりで探険、科学的考察を進めた結果、芙蓉洞は観光や科学的考察においてきわめて高い価値を持つ大型洞穴であるだけではなく、洞を中心とする周辺に大量の立て坑や平坦な洞穴からなる膨大な洞穴群、すなわち芙蓉洞洞穴群が形成されていることが確認された。このため、芙蓉洞は米国の「マンモス洞窟」、フランスの「クラムーズ洞窟」とともに、世界三大洞穴と呼ばれている。

世界最大の天生橋群「天生三礄」

洞内の岩壁の沈積岩の流水侵食によって形成された、芙蓉洞の中の幅15.76メートル、高さ21.04メートルの巨大な石の滝。約16万年かかって形成されたと専門家が認定  「天生三礄」の黒竜橋には、四季を通じて流れている滝が4つある 「天生三礄」の青竜橋 

天生橋のカルスト地形は、まれに見る地質奇観である。天竜橋、青竜橋、黒竜橋という三つの天然石アーチ橋は天竜、神鷹の二つの天坑と密接につながり、世界最大の天生橋群――「天生三礄」となった。

洋水河大峡谷に跨るこの三つの天生橋には、それぞれ特徴がある。

天竜橋は天生一橋とも呼ばれ、高さ200メートル、長さ300メートルの橋の下に二つの空洞のある天然の「ダブルアーチ橋」で、遠くから見ると、竜の両眼のようにも見える。

天竜橋の近くの鍾乳洞から流れ出す猴子坨伏流が、天竜天坑の底部を流れ、天生二橋と呼ばれる青竜橋にまっすぐに向かってゆく。青竜橋は「天生三礄」のうち、垂直の高低差が最大で、高さ350メートル、幅150メートル、長さ400メートルの橋である。近づいて仰ぎ見ると、橋本体がまるで青空にむかって昇る青竜のように見える。

黒竜橋の下の空洞は深く、奥へ進むととても暗い。ここに黒竜が身を隠していると人々が考えたことから、この名がついた。橋の中で「三迭泉」「一線泉」「真珠泉」「霧泉」と名づけられたところでは、岩石の隙間から流れ落ちる水が、雨のように、霧のように、また滝のように、さまざまな流れ方を見せる。

未開発の美しさ原始的な鍾乳洞

天竜橋から見た天竜天坑。世界的に著名な映画監督である張芸謀の『満城尽帯黄金甲(邦題は「王妃の紋章」)』のロケが行われたことも
武隆県城の約108キロ東北の後坪郷の原生林と竹林の中で、五つの天坑からなる総面積15万平米の天坑群が発見された。中国、英国、米国の共同考察チームの専門家の意見は、普通の天坑は地下河の水が長年ぶつかり続けて地面が崩れてできたものだが、この天坑群はすべて地表の三つの渓流による侵食によって形成されたという見方で一致。これは世界で初めて発見された侵食型天坑であり、その科学的研究価値はきわめて高い。

菁口天坑は、後坪天坑群の中でもっとも代表的な侵食型天坑である。形成されたときの水流の運動状態を表現して、もともとは「漩凼」という名で呼ばれていた。天坑の口は長円形で、東西の長さ250メートル、南北の幅220メートル、深さ295.3メートルで、周りはすべて切り立った崖であり、底に通じる道はない。未開発の原始的な状態であるため、天坑に入る際には、現地の状況に詳しい人の案内で、天坑の底部とつながる二王洞という鍾乳洞を通って中に入らなくてはならない。

二王洞はかつて、農民が硝石を製造したり匪賊から身を隠す場所であった。今でも洞口近くには石で築かれた防御塀が残り、中には射撃用の穴もある。洞内のいたるところで、うち捨てられた状態の、かつて硝石を製造していた池が見られる。

原始の状態のままの鍾乳洞の中を歩くのは簡単なことではなく、非常に探険的な要素が強くなる。深さのはかり知れない峡谷がすぐ足下にあったり、岩石の大きな裂け目が頭上に見えたりする。胸を張って歩ける場所もあれば、腹ばいになって進むしかないところもある。いたるところで、用心の上に用心を重ねなくては危険なのである。

主に農業で生計をたてている後坪郷の住民たちは、世界遺産となった天坑が自分たちの生活に変化をもたらしてくれることを期待している

鍾乳洞内の移動は、懐中電灯に頼るしかない。かすかな光を頼りに、美しい柱状の鍾乳や雄大な旗状の鍾乳を目にすることができる。そびえ立つ鍾乳柱群は鍾乳洞の支柱のようであり、地面のたくさんの珊瑚石花状の鍾乳は、揺らめくさざなみのように見える。

二王洞を出て、南側から菁口天坑の底部に入ると、そこはさまざまな植物や苔に覆われている。中央に泉が湧いており、その水が石と石の隙間に流れ込み、消えていく。崖の上からは、一筋の滝がさらさらと流れ落ちている。雨季には、天坑の北西、東、南の3面でそれぞれ滝が勢いよく流れ落ち、坑の底部で大きな音を響かせる。坑底部の北側には伏流の洞穴があり、牛鼻子天坑の地表水は、この鍾乳洞を通じて菁口天坑を流れ、さらに二王洞を流れて外へ出てゆく。

「武隆のカルスト」は世界遺産たる条件、すなわち「最高の自然現象あるいは自然の美と美学的価値を備えた重要性」「地球変遷の歴史、地質及び地形の特徴、変遷過程の反映」という基準を十分に満たしている。2007年、武隆のカルストは「中国南方カルスト」の重要な一部分として、世界自然遺産リストに登録された。(劉世昭=文・写真)

 

人民中国インターネット版 2009年2月23日

 

 

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