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新疆ウイグル自治区 ウイグル族の木卡姆芸術

 

16世紀、偉大なウイグル族女性アマンニサ・ハン(1533~1567年)はこのウイグル古典音楽を頂点へと導いた。1547年、音楽と詩歌をこよなく愛するアマンニサは新疆のヤルカンド(現在の新疆ウイグル自治区カシュガル地区の莎車県辺り)を国都とするヤルカンド・ハン国(1514~1680年)の王妃になった。彼女は多くの楽師やマカーム音楽家を集め、マカームに関する大規模な整理作業を行い、その系統化や規範化を実現し、旧来のマカームの歌詞の中にあった難解な外来語や古ウイグル語の単語、さらには古い宮廷詩的修辞などを取り去った。こうして、完全且つ厳密な構造体系を持ち、口語的で、分かりやすく、全く新しいマカームが誕生した。19世紀、これらのマカームはしだいに12曲の組曲に洗練され、一曲ごとの組曲の演奏には約2時間を要した。この洗練されたマカームは『十二マカーム』とも呼ばれるようになった。

『十二マカーム』には特殊な文化的含意と演奏技術があり、その特殊性のため、『十二マカーム』は民間には広く伝わらず、当時のハン国も民間への流布を禁ずる措置を取ったが、その後、ハン国の崩壊によって、楽士たちが民間に流出し、『十二マカーム』はようやく民間に伝わった。

長期にわたって、『十二マカーム』は、師から弟子への口頭伝承が行われていたが、こうした伝承方法では、歳月の流れとともに途絶えてしまう恐れがある上に、『十二マカーム』の音楽体系は膨大で、歌詞の意味は深奥で、曲調も長すぎるため、完全な習得は非常に困難だった。そこで、この失伝の危機に瀕していた音楽的財産を救うため、1950年に中国政府は文化部から音楽家たちを派遣し、「十二マカーム整理工作組」を組織し、困難に満ちた採集・整理作業を開始した。音楽家たちは、『十二マカーム』を完璧に歌える唯一の人物、ウイグル族のトゥアルディアホン(吐爾迪阿洪)氏を探し出し、旧式のワイヤーレコーダーで、彼が歌う『十二マカーム』の全内容を録音した。その後、6年間の年月を費やして、その曲譜と歌詞の整理作業を完了させ、さらに整理編集作業を経て、1960年、『十二マカーム』が正式に出版された。その中には、古典叙述歌曲、民間叙事組歌、舞曲、即興楽曲など340以上の曲が収録された。

スナイ(蘇乃依)を演奏する楽士

ラワープ(熱瓦甫)を弾く楽士

『十二マカーム』は新疆ウイグルマカーム芸術の粋だ。現在、主に新疆南部のカシュガル(喀什)、和田、アクス(阿克蘇)地区と北部のイリ(伊犁)地区に伝わっていて、12のマカームで構成される。マカームごとにチョン・ナグマ部(大曲で、節回しに変化がある一連の叙述・詠嘆歌曲、歌舞曲)、ダスタン部(一連の叙事歌曲、器楽曲)、マシュラッブ部(一連の歌舞曲)の3つのパートを含んでいて、それらは20から30曲の楽曲を含み、12のマカームを合わせると、300曲余りになり、全てを歌い終わるには20時間以上が必要となる。

その他にも、トルファン(吐魯番)市、ピチャン(鄯善)県、トクスン(托克遜)県にはトルファンマカームが、ハミ(哈密)市、アラトゥルク(伊吾)県にはハミマカームがそれぞれ伝わっている。また、カシュガル地区のヤルカンド県、マルキト(麦蓋提)県、マラルベシ(巴楚)県とアクス地区のアーバード(阿瓦提)県に伝わるダオラン(刀郎)マカームは、タリム(塔里木)盆地西北のヤルカンド(葉爾羌)河両岸のオアシス文化に起源を持ち、砂漠北部の狩猟文化的要素も混じっている。

ゲジェク(艾捷克)はマカームの伴奏に使われる特殊な楽器 サパーイ(薩帕依)はマカームの特有の打楽器の1つだ ダップ(達普)を叩きしながら歌う楽士

ウイグル族のマカームには数多くの音律と調式があり、中立音、不確定音、多種調式の主音、同じ主音で異なる音列、同旋律の移位などがたくさん存在し、マカームの調子を多彩で変化に富ませている。それぞれのマカームにはさまざまな名称のリズムの組合せがあり、リズムや拍子の単一的で整ったパターンを壊し、即興的で変化に富み、激情と内在的緊張感に溢れるリズムを創り出す。

マカームの伴奏楽器といえば、吹管楽器のバリマン(巴拉曼)、スナイ(蘇乃依)、弓弦楽器のサタール(薩它爾)、ゲジェク(艾捷克)、撥弦楽器のタンブール(弾布爾)、ラワープ(熱瓦甫)、打楽器のダップ(達普)、ナグラ(納格拉)など十種類もある。これらの楽器の独特な音色はマカーム特有の音楽スタイルを構成するのになくてはならない要素だ。

マカームは合唱、斉唱、独唱、舞踏によって演じられる。歌詞の音数律と押韻の方法も多種多様で、内容も哲人の箴言、文人の詩作、先人の訓戒、民話などさまざまで、ウイグル族の人々の生活と社会の様相を反映する百科事典と言える。

 

人民中国インターネット版 2010年8月6日

 

 

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