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四川省汶川県臥龍 雅安市碧峰峡 四川ジャイアントパンダの生息地②

 

劉世昭=文 衡毅=写真

1963年、中国国家林業部(省)と四川省政府の承認を経て、四川省汶川県臥龍鎮の山林にジャイアントパンダの自然保護区が設立された。広さは2万ヘクタール。この時からジャイアントパンダを保護する人々のさまざまな努力が今日までずっと続いている。

臥龍ジャイアントパンダ自然保護区は、四川省の省都・成都市の中心部から西北に134キロほど離れた所にあり、広さは東西52キロ、南北62キロ。四川盆地と青海・チベット高原の間の山岳渓谷地帯に位置する。保護区の地勢は北西から南東に向かって急斜面が続き、もっとも低いところは東部の木江坪で標高1150メートル、西北端にある標高6250メートルの四姑娘山との比高は5000メートルを超える。

臥龍ジャイアントパンダ自然保護区は複雑な自然環境と典型的な高山生態系を有し、豊かな動植物資源に恵まれているため、「パンダのふるさと」と呼ばれているだけでなく、「大自然の遺伝子庫」とも称されている。これまでに採集された植物標本は210科・766属・1985種以上にも上るが、保護区内には少なくとも4000種以上の高等植物が繁茂していると言われる。そのうち、国家重点保護樹木に指定されているのは伯楽樹(Bretschneidara sinensis Hemsi.)、連香樹(カツラ。Cercidiphyllum japonicum Sieb. et Zucc.)、水青樹(スイセイジュ。Tetracentron sinense Oliv.)、香果樹(Emmenopterys henryi Oliv.)、金銭槭(キンセンセキ。Dipteronia sinensis Oliv.)、四川紅杉(Larix mastersiana Rehd. et Wils.)、大葉柳(Salix magnifica Hemsl.)など17種。国家一級保護植物に指定されているハンカチノキは保護区の南部に分布し、その面積は1万ムー(1ムーは6.667アール)を超える。シャクナゲ・ツツジは3新種と2変種を含む50余種が確認されており、薬用植物は71科・860種以上に及ぶ。

多様な植物が生い茂っているため、保護区内には数多くの動物が生息する。採集された標本によると、昆虫は30目・1700種、魚類は6種、両生類は9種、鳥類は296種、哺乳類は97種。わけても鳥類の種類が多く、保護区に生息する鳥類の数は中国全土で確認された鳥類の25%を占める。これらの動物の中には、アカゲザル、ウンピョウ、サンバー、ジャコウネコなど温暖湿潤な気候を好む南方地域の動物と、ターキン、オオヤマネコ、ウマグマ、クチジロジカ、シロミミキジなど寒冷な高原や北方地域に生息する動物がいる。そのうち、国家一級保護動物に指定されているのはイヌワシ、ベニジュケイ、ジャイアントパンダ、キンシコウ、ユキヒョウなど14種、国家2級保護動物に指定されているのはレッサーパンダ、アカゲザルなど43種を数える。計57種は、中国全土の国家保護動物の21.3%を占める。それに加え、「キジの王国」と称される中国には56種のキジが生息しているが、その中の11種が臥龍に生息し、その多くが国家保護鳥類に属するのがこの保護区の特色だ。

2006年、臥龍ジャイアントパンダ自然保護区では18頭のパンダが誕生、飼育員の世話ですくすくと育った

1980年には、臥龍に本部を置く中国パンダ保護研究センターが設立された。世界最大のジャイアントパンダ科学研究・保護機構である同センターは臥龍、都江堰、碧峰峡(雅安市に属す)の三つの基地を設けている。設立以来30年間、主にパンダの繁殖とパンダの生息数の増加に関する応用と基礎の研究を行い、パンダをはじめとする稀少動物の種の繁殖を主な目的とし、各種動物の飼養や繁殖、病気の防止、生育、行動、生態、生理学、生物化学、内分泌、遺伝及び野生化などの分野における総合的研究を進めてきた。

その結果、パンダの人工繁殖・飼育における「交配期の発情難」「交配・妊娠難」「赤ちゃんパンダの成育難」という3大難問を解決し、飼育パンダが群れの中で繁殖し、数を増やし続けることに成功した。またパンダを野生に返すプロジェクトも行うようになった。

2009年までに、同研究センターでは、110胎百62頭の人工繁殖に成功し、145頭が無事成体にまで育った。飼育頭数も1991年の10頭から155頭にまで増えたが、この数は世界で飼育されているパンダの60%を占める。研究センターは年を追って発展し、今ではパンダの科学普及・教育拠点に、また科学研究における海外との交流のプラットホームに、さらには国際協力のシンボルとして海外に送られるパンダの「輸出基地」にまで発展した。

様々な方法で貴重な資源を整理・再編しているほか、研究センターでは国際間の科学研究協力を推し進めており、アメリカのワシントン動物園とサンディエゴ動物園、日本の神戸市立王子動物園、オーストリアのシェーンブルン動物園、タイのチェンマイ動物園、オーストラリアのアデレード動物園など海外の多くのパンダ飼育・研究機構と長期にわたって協力と交流を行ってきた。また、パンダの飼育と繁殖に関する先進的な経験や技術を生かし、専門の人材を育成することによって、提携機構のために多くの科学技術要員を送り出し、パンダの保護事業をより速く発展させることに貢献している。

飼育員の指導でジョギングのトレーニングをする乳離れしたばかりのパンダたち 毎日、パンダには竹のほかに栄養バランスの整った特別食が用意される

2008年5月12日に発生した汶川大地震で、中国パンダ保護研究センター臥龍基地も大きな被害をこうむり、32棟のパンダ飼育舎のうち、14棟が全壊、残りの18棟にもひどい被害があった。また、交通や通信、水道・電気などのインフラが破壊されて使えなくなり、地震に驚いた63頭のパンダのうち、一頭が死亡、一頭が負傷し、一頭が行方不明になってしまった。地震後のパンダの安全を保障するため、2008年5月18日から、残された60頭のパンダを8回に分けて、臥龍から雅安にある碧峰峡基地に移送し、研究や保護の仕事はそこで続けられている。

中国パンダ保護研究センター碧峰峡基地に一歩足を踏み入れると、誰もがまるでパンダの楽園に入ったような気がするに違いない。基地には飼育区、繁殖区、科学研究区、執務区、竹栽培区、生活区の6つのエリアが設けられている。成体と亜成体のパンダがそれぞれ異なる飼育場で育てられているが、最も見学者を引きつけるのは生まれてまだ半年しかたっていない子パンダが飼育されている「パンダ幼稚園」だろう。いたずら盛りの子パンダたちが幼稚園の庭で木に登ったり、地面を転げ回ったりしている姿はほんとうにかわいらしい。ここには、世界中からパンダ愛好者のボランティアがやって来ていて、パンダの保護活動に汗を流している。

パンダを碧峰峡基地に移送してから、研究と保護の仕事もすぐに再開された。2008年には13頭、2009年には16頭のパンダが無事生まれ、現在、碧峰峡基地で飼育されているパンダの数は70頭以上にも上る。

47年間にわたって多くの人々がパンダに愛情の限りを尽くさなかったなら、人類はこのかわいらしい仲間を失ってしまっていたかも知れないのである。

 

人民中国インターネット版 2011年2月10日

 

 

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