コミュニティーの汗かき役 住民委員会の委員
王焱=文・写真
住民委員会は1950年代に誕生した、町内会にも似た制度で、末端の政府機関である街道辦事処などの指導を受け、社区(コミュニティー)住民と政府の橋渡しを担当している。
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取材中、住民が相談に訪れた。ちょうど戸別訪問調査から戻ってきた委員(右)が、 休む間もなく事務所前ですぐに対応 |
国勢調査で手腕を発揮
五路社区は北京市の西部に位置する。その住民委員会事務所は社区内の30平方メートルほどの粗末な平屋にあり、いくつかのデスクが置かれた室内では、3人の委員がうずたかく積まれた報告書類の処理に追われていた。
「国勢調査の戸別訪問調査がいよいよ最終段階で、数字の突き合わせをしているところです。何人かは、今も戸別訪問に出かけています」と、趙建梅主任(50)が説明してくれた。
2010年11月1日、中国では第6回の国勢調査がスタートしたが、都市での戸別訪問調査は各住民委員会が担当している。趙主任によれば、「五路社区には2千もの家庭がありますが、一軒一軒回って調査しています。夜遅くなってようやく帰宅する人も多いので、夜間の訪問もしなければなりません。夜中の1時、2時まで仕事をするのも当たり前です」という。
住民委員会委員の多くはその社区に住んでいる。「住民は、一般的に知らない人が訪ねてくるのを好みません。その点、私たちは同じ社区の隣近所ですし、普段から皆さんのために活動しているので、住民の方々も快くドアを開けて協力してくれるのです」
コミュニティーに尽くす
こうした特殊な時期だけでなく、住民委員会は普段から多くの仕事をこなしている。社区の環境、衛生、教育、治安、スポーツ、社会保障などから住民のもめごと解決に至るまでさまざまなことにかかわる。
「ここには8名の委員がいます。それぞれが複数の担当を持っていますが、何かを実施するときはみんなで一緒に行動します。少し前、私たちは住民が出演する演芸イベントを行いましたが、委員だけでなく、家族まで一緒に来て手伝いました」と趙主任。イベントを行うときは、政府の関係部門に経費を申請できるという。
旧正月や大きな祝日のたびに、住民委員会は生活困窮家庭の慰問も行う。障害者のためには、政府への補助申請を行い、手すりや可動式風呂いすを設置するなど、住環境の改善を行い、生活を支援する。
「社区内には身寄りのないお年寄りも多く住んでいて、世話をしてくれる人がおらず、寂しい思いをしています。私たちは、定期的に彼らを訪問するほか、おしゃべり会を催すなどしています」と話すのは、姜洪生副主任(35)だ。
3年ごとに住民投票
姜副主任は、以前小さな会社に勤めていた。7年前、彼は住民委員会の募集掲示を見て応募、この地を管轄する街道辦事処の試験に合格して採用された。
「住民委員会の仕事は安定しています。家からも近く、医療保険、養老年金、失業保険などの社会保障が整っており、税引き後の月収は2千元近くあります。長く勤めれば昇給もしていきます」
住民委員会の主任、副主任は3年ごとに住民代表投票で選出される。一般の委員も住民投票での信任が必要だ。住民投票で信任が得られなければそのまま失業となる。これは委員会委員にとってプレッシャーだ。
「委員になって3年後、初めての投票のときは、住民の信任がもらえるか少し心配になりました」という姜副主任が経験から導き出した結論はシンプルだ。
「みなさんの支持を得たいなら、普段から住民サービスに努力するしかありません」
この仕事に就いて7年、姜副主任は自分が並外れた忍耐力を身につけたと感じている。「今では、ものごとをきめ細かく周到に検討し、その上で初めて行動するようになりました」
人民中国インターネット版 2011年4月