都市環境色彩デザイナー
今日、中国では、これまでにないスピードと勢いで都市化が進んでいる。高層ビルが次々と立ち並び始めると同時に、都市の彩りを決める、そんな職種の人たちが現れている。
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北京市周辺で色彩調査を行う李彦廷さん(写真提供・李彦廷) |
「都市の彩りはその都市の第一印象です」。西蔓都市色彩設計センターチーフデザイナーの李彦廷さん(27歳)は、「都市の彩りを通じて、人は数秒の間にその都市が美しいかどうかを認識します。もし、色彩の使い方を間違えたりすると、都市自身の美しさが、いとも簡単に、雑多な色合いの中に埋もれてしまうのです」と話す。 李さんが紹介してくれた都市の色彩計画には、建築物の色合い、公共施設の色合い、看板の色合いなども含まれており、デザイナーは、「推薦色カラーチャート」(最適な色彩範囲)、「補助色カラーチャート」(適量使用可能な色彩範囲)、「禁止色カラーチャート」を決め、都市管理を任された者はそれを参考として、「判を押したような単一的な都市」が犯している誤りを反面教師にして、都市独自の名刺を作りだす。
李彦廷さんが所属する会社は、例えば中規模のプロジェクトの依頼を受けた場合、通常半年から一年の間で完成させる。都市デザイナーチームは、事前に実地調査を行い、現地の土壌や自然の景観、歴史的遺産、現存している建築物の色彩データなどを採取し、またそれと同時に、現地の人たちが好む色合いも調査する。
「一つの地区の色彩データを徹底的に収集して、その中の共通点を見つけ出し、それを分析していきます。その時にデザイナーが持っている、色彩に関する知識、経験、人間的感性が試されるのです。都市デザイナーに必要なのは、その都市から、どんな色彩が合うのか、またこれからどういう彩りで飾るのかという方向性と、将来的に出現する都市景観へのマクロ的な完成予想図を見つけ出すことですね」と李さんは話す。
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現場から採取したレンガの色彩分析を行う李彦廷さん |
北京大学を卒業した李彦廷さんは、入社当時、会社のPRやマーケティングの仕事をするスタッフの一人に過ぎなかったそうだ。しかし、ブランドイメージの確立とそのパブリシティ効果を向上させるためには、専門的な知識が必要だと痛切に感じたという。そこで、仕事の合間を見つけて、独学で環境色彩デザインや都市色彩計画という分野の専門知識を修め、過去のプロジェクトを参照しながら知識を吸収し、たびたびデザイナーたちと共に夜通し仕事をしたのだと話してくれた。
「街をぶらぶらしている時に、何か建物が目に入ると、私は頭の中ですぐに、その建物のベースカラー、アソートカラー、そしてアクセントカラーのバランスは適切か否か、ということを考えてしまいます。服を買う時だって、使われている色合いについて、科学的論理と分析を加えてしまうようになりました」と話す李さん。
李彦廷さんは、この一年間という短期間に、長沙市、無錫市、徐州市、張家口市張北県、北京市経済技術開発区、遼寧省営口市経済開発区など数多くの地域の都市色彩計画プロジェクトに参加した。李さんは、最近は都市化改造計画のブームはますます盛んで、都市環境色彩デザイナーという職種の未来は大変明るいとの楽観的な考えを持っていると話してくれた。目下、平均的な都市デザイナーの年収は十万元を超えるという。
ただ、李彦廷さんは、都市の色合いとは、孤立しているものでも、静止しているものでもないと考えているそうだ。デザイナーは、単に景観の色彩だけを見て計画を立てるだけではいけないという。
また李さんは、「都市にしても、どこかのコミュニティーにしても同じことなのですが、広い意味で考えると、行き来する車や街頭の広告、更には道行く人たちの服装などすべてのものが都市の彩りを構成する要素なのです。したがって、一つの都市の品格を創り出そうとする時には、そこに住む人たち自身の教養を向上させること。これをおざなりにはできないとも思っています」とも話してくれた。
人民中国インターネット版 2010年12月