貴州省黔東南ミャオ族トン族自治州 蘆笙の音色は母のささやき
変化に富んだ吹奏と踊り方
蘆笙の吹奏と舞踊は目的によって、「娯楽」「競技」「祭祀」の三種類に分けられる。その中で最も普及しているのが娯楽としての吹奏と踊りだ。その次は競技で、メロディーの豊かさを競い、難度の高い技法に挑戦する。踊りも連続回転、しゃがみ歩き、逆立ち、横転など複雑な動作を取り入れている。祭祀は主に先祖の霊を祀るのが目的で、例えば鼓蔵節で行われる厳かで神秘的な木鼓の儀式で演じられる舞踊もその一種で、穏やかでゆったりしている。
吹奏と舞踊の組み合わせには「吹笙伴舞」「吹笙領舞」「吹笙自舞」の三種類ある。吹笙伴舞は多くの人が一つの輪になって、吹奏者を取り囲んで踊る。吹笙領舞は吹奏者が奏でながら先頭で踊り、多くの人たちが後について輪を作りながら踊る。吹笙自舞は数人、二人、時には一人の吹奏者が小型の笙を奏でながら、音楽に合わせて難しい舞踊を披露する。チームの呼吸がぴったり合っていなければならない。蘆笙踊りの技法には歩く、移る、またぐ、回る、立つ、蹴る、足を払う、寝返りを打つなどの動作が織り込まれている。演じられるTPOや会場の雰囲気によって、厳かにも、激烈にも、軽快にも演奏される。
曲の種類は多岐にわたり、式典曲、叙事曲、行進曲、歌曲、舞曲などがあり、民間歌謡から題材を取っているものが多い。中には、「諾徳仲之歌」「大悲調」「和調」「賽調」などの名曲もある。
蘆笙を吹奏する場合、笙を縦に持ち、両手で下部を支え、両手の親指、人差し指、中指で二列に並んでいる指孔を押さえ、マウスピースを唇でくわえる。息を吸っても吐いても音を出せ、また、立っても、座っても、歩きながらでも、また跳びはねながらでも吹くことができる。管体の上部にある指孔の位置には、大きめの竹管、筍の皮、銅筒あるいは竹の皮を細く裂いて作った三角形の小さいラッパが付けてある。共鳴筒といい、音を大きく、明瞭にする装置だ。
また、演奏される地域やミャオ族の系統の違いによって、六管六音、六管七音(リードが二枚)、八管八音、六管五音などに分類され、いずれも高音、中音、低音の三種類ある。
一家あげて製作、役割も分担
雷山県から十数キロ離れたところに、蘆笙の製作で名を知られている「排卡寨」という村がある。八十戸余の中で、蘆笙製造を生業にしているのは十二戸。代々、技術を受け継いできた村民の中で、腕前が一番良いとされているのは五代目の一人・莫厭学さんだ。六十歳近い莫さんはこの仕事に従事して既に四十年になる。
笙斗作りに集中する莫厭学さんの妻 | 笙斗の加工 |
莫さんが実物の蘆笙を示しながら構造を説明してくれた。ミャオ族の蘆笙は笙斗、管体、リード、共鳴管という四つの部分で構成されている。
製造に使われるふいご、ハンマー、斧、のみ、のこぎりなどの道具類とスギ、マツ、銅材などの材料 |
笙斗に少し斜めに挿してある二列の竹管が管体で、六本、四本あるいは八本からなっている。竹管と笙斗をつなぐ部分に、長方形、台形、菱形あるいは三角形にした銅製のリードが付けてある。また、その近くに円形の指孔が開けてある。管体は白竹で作られたものが多い。直径が一・二㌢程度で細く、節の長さは四十~五十㌢、太さが均等で、皮が薄くて、管体の良材とされている。中でも、三年以上のもので、冬至から立春の間に伐採されたものが、強靭で表面に光沢があり、虫食いが少ないため、最高だそうだ。同じ六管構造でも、音程によって竹管の長さが違う。
リードは長さ二・五~四㌢、幅〇・二五~〇・一五㌢で、精錬した銅で作られたものが多い。材料を吟味した後、表面に輪郭を描き、それをのみで彫り、炉に入れて加熱した後、水に漬け、焼入れし、形を作る。
管体の良材とされている白竹 | 伝統的な手法で銅材からリードを製造 | 難しいリードの製造に取り組む莫厭学さん | 完成品のチューニングをする莫厭学さん |
共鳴管は管体の上部に付けられた短い竹管で、音量を大きくする機能をもち、モウソウチクで製造されたものが多い。長さは音程によって違い、十五~六十㌢に及ぶ。
莫さんは先代から製造方法を継承しただけでは満足せず、音域を拡大するために何度もテストを繰り返した。改良された蘆笙は二十音階を超え、民族音楽学家から好評を得ている。また、彼の製造した楽器は規格が整い、仕上がりが精緻で美しくて、ピカピカとした光沢があり、質素だが気品があり、音質が滑らかなため、国内外の顧客から好まれている。蘆笙を買うために、遠路はるばるやって来る人も多いそうだ。
人民中国インターネット版 2011年5月