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リウ・イーフェイの青春版『倩女幽魂』

 

文・写真=井上俊彦

「今、中国映画が絶好調です。2008年には43億人民元だった年間興行収入は、10年には101億と急上昇、公開本数も増え内容も多彩になっています。そんな中国映画の最新作を実際に映画館に行って鑑賞し、作品だけでなく周辺事情なども含めてご紹介します」

 

続々登場する中国新世代女優

中国の映画・テレビ界では、かつて梅蘭芳ら京劇の有名女形を指して言われた「四大花旦」にちなみ、注目の若手女優を4人挙げ「四小花旦」として論じることがあります。2000年前後に、チャン・ツィイー(章子怡)、ヴィッキー・チャオ(趙薇)、ジョウ・シュン(周迅)、シュー・ジンレイ(徐静蕾)の4人を指してさかんに使われました。

そして現在、新世代の「四小花旦」とされるのが、ドラマ『奮闘』『杜拉拉昇職記』のワン・ルオダン(王珞丹)、映画『カンフーハッスル』のホアン・シェンイー(黄聖依)、タイムスリップ・ドラマ『宮』のヤン・ミー(楊冪)、そして今回ご紹介するリウ・イーフェイ(劉亦菲)です(1人から数人が入れ替わる他の説もあります)。前回紹介したジン・ティエン(景甜)もそうですが、映画界全体に勢いがある時期というのはこういうものなのでしょうか、中国では有望な新人女優が次々に登場している印象です。

さて、そのリウ・イーフェイは、早くから中国を代表する美少女とされてきました。日本でも映画『五月の恋』(2004)が公開され、その後『ドラゴン・キングダム』(2008)でハリウッド・デビューも果たしています。彼女の特別なところは、「古装」で美しさがいっそう際立つことでしょう。その「鳳眼」と呼ばれる、上方に流れるような目じりは特別な印象を与えます。昨年はワン・リーホン(王力宏)初監督作品『恋愛通告』でもヒロインを演じましたが、ここでも中国伝統楽器を演奏するなど、やはり古典的美女を演じています。

その彼女が、欧米風でも日韓風でもない、中国ならではの美女ぶりをいかんなく発揮しているのが、新作の『倩女幽魂』です。公開から少し時間がたちましたが、メーデーの5月1日に見に行きました。

レスリー版とは違った魅力の作品

原作は中国の古典怪奇小説集『聊齋志異』の中の物語で、1960年代からたびたび映画、ドラマ化されてきました。特に、87年にレスリー・チャン(張国栄)主演で大ヒット(日本公開タイトルは『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』)しました。今回はそのリメークですが、さすが『イップ・マン』をヒットさせるなど好調のウィルソン・イップ(葉偉信)監督、期待通りに手に汗握るアクションと悲恋物語をうまくミックスして見ごたえのある作品に仕上げています。前作のプロットを借りながら、まったく違うストーリーになっており、リウ・イーフェイは、妖しい「もののけ」でありながら愛に身を捧げる悲しい女性を熱演しています。特殊メークを使い、これまで見せたことのない表情を披露するなど、彼女にとって新しいキャリアを開いたといえるのではないでしょうか。続けて、ダニエル・リー(李仁港)監督の『鴻門宴』で虞姫を演じることになっており、こちらも楽しみです。

さて、いち早く香港で公開されヒットしたこの作品、早く見たくてわざわざ香港まで行く中国大陸部のファンが出現したほど前評判がよく、3日前倒しで上映が開始され、すぐに1億元を突破したそうですが、それも納得できます。

実はこの作品のヒットで、前作にも注目が集まり、いくつかの映画館では87年版が上映され、こちらも注目を集めています。実は、この日は続けて上映された87年版も見たのですが、比較すると、現在の作品はCGなど技術の発達もあり、画面の迫力、スピード感などが巣晴らしい印象でした。一方、87年版はやはり圧倒的な存在感を持つレスリーの魅力と、ジョイ・ウォン(王祖賢)の妖艶さが相まって、大人の物語というイメージが残りました。今回の作品は、リウ・イーフェイとユー・シャオチュン(余少群)の清潔感ある若さが生きる「青春版」というところでしょうか。

北京を代表する繁華街にありながら、火、水曜日が半額デーなど、ファン・サービスも充実の百老匯新東安影城 百老滙新東安影城は、王府井のランドマーク的建物の新東安市場の6階に位置する立地条件のよさ この日は、レスリー・チャン主演の『倩女幽魂87版』を続けて上映。チケットをよく見ていただくと、同じ席で続けて見たことが分かるはず……

 

データ
倩女幽魂
監督:葉偉信
出演:リウ・イーフェイ(劉亦菲)、ユー・シャオチュン(余少群)、ルイス・クー(古天楽)
時間・ジャンル:98分、ファンタジー・古装・愛情
上映日:2011年4月19日
百老匯新東安影城
所在地:北京市東城区王府井大街138号新東安市場6階
電話:010-65281898
アクセス:地下鉄1号線王府井駅から徒歩3分

 

プロフィール

1956年生まれ。法政大学社会学部卒業。テレビ情報誌勤務を経てフリーライターに。1990年代前半から中国語圏の映画やサブカルチャーへの関心を強め、2009年より中国在住。現在は人民中国雑誌社の日本人専門家。

 

人民中国インターネット版 2011年5月4日

 

 

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